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殿下と行くヨーロッパ185日の旅 20歳の昭和天皇は異国の地で何を見たか?

井川夕慈のKindle電子書籍『殿下と行くヨーロッパ185日の旅』より一部を抜粋して公開します。


昭和天皇は戦前に一度だけ海外を経験している。

 1921年(大正10)、昭和天皇がまだ皇太子だった頃だ。
 昭和天皇は1901年(明治34)生まれだから、ちょうど20歳の頃である(出発時は19歳)。

 外遊の目的は2つあったようだ。

  1. 各国の元首・国民と我が皇室・国民との相互の親誼(しんぎ)の増進

  2. 皇太子の人格の修養

 なお当時のヨーロッパは、戦争の終結からまだ数年しか経っておらず、復興の途上にあった。
 現在なら「第1次世界大戦」と称するところだが、当時はまさか「第2次」があるとは思わないから、たんに「世界大戦」と呼んだ。

 世界大戦を経て、アジアで唯一大国の仲間入りを果たした「日出ずる国」の将来の元首は、そのとき高輪の東宮御学問所で帝王教育を受けていた(語学はフランス語を教わっていた。英語ではなかった)。
 年齢からすると、現代の大学生が初めて海外旅行にいくようなものだ。(もっとも800名超の供奉ぐぶ員を引き連れての大旅行になるわけであるが。)
 本書は、その若き昭和天皇が体験した初めての〝海外旅行〟を、民間の旅行会社がつくる〝旅程(アイテナリー)〟風に再構成したものである。

 当時の大日本帝国において、病気がちな今上天皇との比較で〝希望の光〟であったプリンスの外遊は、臣民を熱狂させる一大イベントであったようで(しかもアジアから遠く離れたヨーロッパへ!)、これに関する印刷物は盛んに出回っていたようだ。
 だから、今から100年ほど前のその出来事について今さら何かを書くのは、屋上屋を架すようなものかもと思われた。

 しかしながら、当時の出版物に残されている訪問地や人物の名称は、日本語による表記がまちまちで、現在に生きる我々がインターネットやグーグルマップを使って検索するには思いのほか難儀する。
(例えば、ある書には「ウインゾル宮殿に向はせられる」などと出て来るが、現在なら「ウィンザー城」と表記するところだろう。)

 そこで日程に添えて、当時の昭和天皇が(現在で言うところの)どこを訪れ、何を見たかを容易に特定できるよう、インターネットでの検索に適した語を【見どころ】や【キーワード】として抽出しておいた。

 世界規模の感染症流行のため気安く海外に行くことのできない現在、グーグルマップ等でバーチャルな旅行を愉しむのも一興であろう。本書がその際の一助となれば幸いである。

 旅はひな祭りの日に始まる。
 それでは出発しよう。


(続きはKindleでお楽しみください。)

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井川夕慈
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