『ざっくり理解する中国経済』 中国は社会主義の国ではなかったのか?…新大国の《経済体制》と《有力企業》を探る
井川夕慈のKindle電子書籍『ざっくり理解する中国経済 その1 《経済体制》を理解する』より一部を抜粋して公開します。
はじめに
筆者の記憶が確かならば、中国はかつて「眠れる獅子」と呼ばれていた。
「潜在的には大きな力を持ちながら、まだそれを発揮できないでいる」の意。
調べ直してみると、これは<日清戦争に敗れるまでの清朝>に限定した例えだったらしい。
しかし筆者が若者だった頃、中国はリアルタイムで「眠れる獅子」と呼ばれていたと記憶する。(ちなみに筆者の生まれは1980年である。)
あれから3、40年が経ち――。
いつしか誰も中国のことを「眠れる獅子」とは呼ばなくなっている。
GDP(国内総生産)で中国が日本を追い抜いたのは2010年のことである。
眠っていた猛獣はすでに目覚めた、というのが現在の世界の共通認識なのだろう。
(中略)
中国経済はいったいどういうことになっているのか?
「眠れる獅子」と呼ばれていた3、40年前の時代から、「どうやら中国は本当に凄いらしい」と評判が立つようになった現在に至るまでの空白を埋めたい。ただし、これまでの同国の発展の歴史に深入りすることはせず、ひとまずは現状を理解することに注力したい。
つまり、中国経済を理解するという課題をこれまでサボりにサボってきたところ、ここで一気にアップデートを図ってしまおうというわけである。
本書の構成をお伝えしておく。
内容は大きく二つに分かれる。
その1 経済体制を理解する
その2 有力企業を理解する
第1章から第3章までがその1にあたる。
第1章では経済に焦点を絞る前に、中国という国の仕組みを理解する。そのために、領土や人口や統治機構を瞥見する。
第2章では中国経済の全体像を把握する。国民経済計算やそれにまつわるマクロな数値を見る。
第3章では中国経済の<建てつけ>を理解する。中国は社会主義の国である。それなのに株式会社があったり証券取引所があったり大富豪が出現したりしているのはなぜなのか? これを理解する。
続く第4章から第6章までがその2にあたる。
第4章では中国の個別企業の調べ方について述べる。中国では大企業といえども十分な情報開示がなされているとは限らない。そこで、ある中国企業について調べようとしたときに、どのような手立てがあるのかについて記す。
第5章と第6章では、現在の中国の有力企業の名称を頭の中に流し込む。具体的には売上高で上位100社を取り上げ、業種別に整理することにより、現代中国の大まかな産業地図を獲得する。
うち第5章では主に第1次産業と第2次産業を、第6章では第3次産業の企業を扱う。
それでは中国経済についてのアップデートを始めよう。
(続きはKindleでお楽しみください。)
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ドラマ『駆け抜けろ1996』(2018年)。
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