『ラグビーリーグの謎をとく』 13人制とは、いったい何なのか?
井川夕慈のKindle電子書籍『ラグビーリーグの謎をとく 13人制 似て非なるその世界』より「はじめに」の一部を抜粋して公開します。
まえがき
ラグビーについてある程度詳しくなると、そのうち必然的に出会う言葉がある。
それが「13人制ラグビー」だ。
またの名を「ラグビーリーグ」と言う。
日本のラグビー好きは、このスポーツの名をいずれどこかで目にしたり耳にしたりする羽目になる。
「あの有名な海外の選手は13人制ラグビーの出身だ」とか、「来シーズンは13人制ラグビーへの移籍が囁かれている」とか。
筆者の場合もそうだった。
「13人制ラグビー」と聞いて、当初はプレーヤーが2名少ないだけのことだろうと安易に解釈していた。
端的に言えば、聞き流していた。
本書を読んでいただければわかるが、これは大いに誤った認識である。
「13人制ラグビー」なる言葉に初めて出会ったのがいつだったかは思い出せない。
しかし、その最高峰の大会とも言える「ステート・オブ・オリジン」なる名称に初めて接したときのことは覚えている。
まだ15人制の観戦歴も浅く、自分のラグビー・リテラシーも高くなかった頃のことだ。
オーストラリアを旅していた。
空港からホテルへの送迎の車中、ハンドルを握る日本人ガイドと雑談していた。
その中で、今回の旅の主目的ではないけれど、途中でブリスベンに立ち寄って、ラグビーの試合を観戦する予定があるのだ、という話をした。
運転手がすかさず訊ねる。
「ステート・オブ・オリジンですか?」
「……? いえ、スーパーラグビーです」
「そうですか。いやぁ、昨日はステート・オブ・オリジンの試合があって、この辺もお祭り騒ぎでしたよ」
ステート・オブ・オリジン?
そのときは、はて、ステート・オブ・オリジンとは妙なネーミングだな、と思った。
昼食をとるためレストランに入る。
オーストラリアに来たのだから、とステーキを注文する。
先に運ばれて来たビールのジョッキを持ち上げながら、店内に設置されているテレビを見上げる。
ラグビーの試合をやっている。
どこのチームだろうか?
知らないチームだなあと思いながら見ていると、どうも様子がおかしい。
タックルされたプレーヤーが地上で手足をバタつかせるような奇妙な動きを見せる。
かと思うとスクっと立ち上がって、目の前に置いたボールを足裏を使って後方へ転がす。
スクラムの形状も変だ。
やる気があるのだろうか?
しばらく見ているうちに悟る。
どうやらルールが異なるらしい。
ホテルにチェックインする。
部屋に入って、テレビをつける。
またラグビーをやっている。
ただしここでも、放映されていたのは〝いつものラグビー〟ではなく、レストランで見た〝ちょっと変なラグビー〟だったのである。
次の予定まで時間がある。
気になったのでスマートフォンで簡単に調べてみた。
すると、どうやらこのスポーツは「13人制ラグビー」と呼ばれるタイプのラグビーであり、タックル回数に制限があるようだ。
テレビ画面に向き直る。
すると確かに、タックルの回数をカウントしているような数字が画面の隅に表示されている。
しばらくぼんやりと眺めた後で心に浮かんできたのは次の感想である。
これ、面白いか?
(続きはKindleでお楽しみください。)
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