文字の羅列 解釈の重なり

日々検索するごとに、新しい作品が投稿されている。
意味ありげなタイトルに、数文字~百文字程度の文やセリフだけ。それが自分の二次創作小説と同じ行いだとはなかなか思えなくて、不思議な人も居るなぁ……と眺めていたのをよく覚えている。



熱心に追っていたアニメがあり、いくつか二次創作小説も投稿していた。二次が盛んな作品だったかといえばそうでもなく、投稿されてくる小説もチェックしようと思えば総ざらいできる規模感だったと思う。

そんな最中、それは投稿され始めた。
そのアニメのタイトルがタグ付けされた二次創作小説なのだけど、文字数は極端に少なくお話の体を取っているとも言い難い。では詩歌のたぐいかと言われればそれも首をかしげてしまう。劇中のキャラによるセリフが一言きり、みたいなものも散見されていて、それらをどう読み、どう感じればいいのか判然としないまま「すごいことが起きているぞ」と日々観測していた。この作品を中心とする界隈? のようなものに属したりはしていなかったので、ほとんど自分ひとりでの観測活動だった。

「それら」とか「散見」みたいな言葉を使ったけれど、そんな言葉を当てはめられるぐらいにはたくさんの作品がそのユーザーによって投稿されていた。これぐらい書いたらどの作品か特定できちゃう可能性もあるのか? わたしが投稿した二次創作小説は今もしっかり残っているので、そこから辿って根気よく探せば出てくるのかもしれない。そして「それら」の作品群は今現在──2023年6月1日現在、とりあえずpixivに残っている。

はっきり言って謎だったし、だからこそ好奇心をくすぐられた。この人が投稿しているこれらはなんなのか? これは本当にあの作品の二次創作なのか? ハイペース投稿かつ手軽に読めるものだったのもあり、一定の時期まではすべての投稿作品をチェックしていた。さすがに作品とのつながりが弱まり始めるとまめなチェックもしなくなるのだけど、思い出して見に行ったらまだ投稿が続けられていたこともあった。もうアニメの放送から年単位の時間が過ぎているというのに。そこに愛があるんかどうかはわたしにはわからないが、それだけ続くという事実には、愛ぐらいの裏打ちが必要なんじゃないかと思ってみたりする。

ではこの記憶がなぜ語れるほど克明に刻まれているかといえば、好奇心を満たす謎が氷解したとか作者とお話が出来たとかでもなく、わたしが勝手に彼の人と繋がった──重なったからだ。俗に言う、解釈一致である。

そのアニメに関して、プロットを練っていたものの結局書き切らなかった小説がある。それはアニメ本編に感じたある種の心残りをどうにか続きのIFという形で昇華できないか、という試みのお話だった。断念したのがなぜだったかといえば、その昇華に至るだけのシーンを構築するアイデアが出なかったからだ。たぶんそんな感じだと記憶している。

その断念とどちらが先かは覚えていないのだけど、彼の人が作品を投稿した。そこには、私が思う本編に対する心残りを、同じく心残りとして想い、憂うキャラクターのセリフがたったひとこと綴られていた。口調で発話しているキャラはすぐにわかったし、わたしだって小説にしたらこのセリフをこの子が言ってくれるに違いない、とすら想うほどの鋭いひとことだった。

ああ、ここに同じことを考えている人が居た──しかも、ずっと自分が謎に感じ続けていた存在なのだ。すさまじい衝撃に打ちのめされ、気がついたらいいねを押していた。この人も自分と同じであのアニメをちゃんと観て、そこに消化不良を覚えて文字を打ち込んだのだ。ただただ純粋に、嬉しかった。

彼の人の作品投稿は既に止まっている。さっき検索してきたので、新たな更新がないことも確認済みだ。それはここで話題にしているアニメの二次創作にとどまらず、pixivの作品投稿すべてに音沙汰がない。


なぜこのような話をつらつら書き始めたかといえば、昨今のAI騒動で改訂されたpixivの規約を読んだからだ。そこには、機械的なテキストの羅列やいかにも文章表現でない作品、第三者には十分に内容が理解できないものは削除するかもしれませんという旨が追加事項として記されていた。

彼の人が作品投稿を始めたとき、その内容と量からしてこれは荒らしなのでは!? と最初は思ったものだ。流石にpixivの規約に抵触するようなものではないが、「第三者には十分に内容が理解できない」という点ではある意味重なってしまうところがある。二次創作を書く程度にはしっかりアニメを観ていたわたしにだってわからなかったのだから。
でも時にわかってしまう、繋がってしまうこともあるんだよなぁ、、、というのをふと思い出したので、書いておこうと思った。それだけ。


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