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やだー男子きもーい。 映画「スイス・アーミー・マン」(感想)

 何にせよポスターにインパクトがありすぎる。真っ青な顔したダニエル・ラドクリフに乗って雄たけびを上げながら航海する髭の男。レンタルが開始されてから1ヶ月、やっと借りられたぞ!

死体で遊んではいけません

 って小学校で習わなかった? 無人島に漂着したハンクは自殺しようか悩んでいる最中、波打ち際で死体を見つける。腐敗ガスがお尻の穴から漏れに漏れ、あわや海面をすべり出そうとしている?! 慌てて首つり用のロープを死体に括りつけ、そのおならの噴射で海を渡る。

 美しい大海原に、美しい音楽。驀進する死体。タイトル「Swiss Army Man」が浮かび上がり、その意味を理解する。アーミーナイフにときめく気持ちは分かるけど、実際使いもしないのに日常的に持ってる(ことを周囲に気づかせたがる)やつキモいんだよなあ。 対してアーミーマンは積極的に使っていくから全っ然OK。

 でもね、死体と対面してぶん殴ったり罵ったりするのは酷いと思うんです。私たちは文化的で、死者を弔うことができるし死を悼む気持ちだって持った生き物だ。それなのにハンク、あなたちょっと人間性どうかしてるんじゃないですか?! 死体が喋るよりも、死を意識しない人間のほうがよっぽどホラー!! もしかしたらすっごく子どもなのかも知れないけれど、髭を蓄えた2歳児が死体とフランクに仲良くなっていく様もやっぱりホラー!!!!

 この「死体」、確かに顔色は悪いし、体も当人の思うように支配できない。でも、死んでるからってそれ人間じゃできないよ、っていうことが簡単にできるし、喋るし、感情があるし、腐敗もしない。死体のアイデンティティって何だっけ? そもそもこれ、死体って呼んでいいのかしらん。

汚い。(ドン引き)

 私、これでも28歳で、堅実な大人なの。もうおならとかゲロとかうんことかで喜ぶお年頃じゃないの。率直にね、「きったねぇ・・」って口に出たわ。この3種の神器フル活用してらっしゃるけど、そのたびに表情がなくなっていくのが分かる。映画音楽の力ってすごいなって、雰囲気のある画に美しい音楽が流れてたらなんだかいい映画の気がして‥くるかァ!!!!

 家であたりめにからしマヨネーズつけながら見てたからいいけど、もし映画館で友達と一緒にポップコーンとコーラとか買ってみてたらもう、お腹の張りとか気になっちゃうから! 映画のお供にはよく気を付けて。私って自覚していたよりも繊細だったのかもって逆にちょっと安心した。

気持ちが悪い。(ドン引き)

 男二人(うち一名死亡)が、写真の女の子がえらい綺麗だっておちんを立ててさ、こんな風にして出会って、何て話しかけて‥っておままごとしてるの見るのまじで辛い。サイゼリヤで腐女子の妄想話が近くの席から聞こえてくるのと等しく辛い。妄想は自分の内側に留めるか、一方的にひけらかすかしてくれ。存在しない喜びを分かち合って共有し合えると思っているところがまさに気持ち悪いんだ。男って集まるとこういう話ばっかしてんの?

 不衛生そうな死体と生体がいちゃいちゃしながら友情を育んでいく様を見ながら、内心「ああ、リプリーが見たいなあ‥」って思ってた。正直に言う、めちゃくちゃエッチなマットデイモンを思い出しながら、口から色んな物が飛び出すダニエルラドクリフの死体を見てた。私の目はとっくに死んでる。もう画面の中も外も大惨事だ。

まとめ

 ダニエルラドクリフの怪演、見事。でも死体である必要あった? Tedでもベイマックスでも、なんならロボコップでも物語は成立したんじゃないか。彼岸の向こう側の存在だという前提をすっぽり忘れて死体遊びするくらいなら、同じ毛深いにしてもダニエルラドクリフのお尻よりくまのぬいぐるみの方が良い。

 3種の神器【下品】が物語の推進力になって、下品だけでは済まさせない演出と音楽の力は圧倒的だし、そのバランスをかなり細かいところで見極めようとしていたことは察する。でもやっぱり、汚いんだよなあ。幼いころの「男子ってまだああいうことして楽しいんだー子どもだよねー」という思考が蘇ってこっちまでつらくなる。あ、もしかしてそういう映画か。

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