グラゼニから学ぶ「開き直り」のすすめ
「開き直る」という言葉は一般的には悪い意味で使われる方が多いだろう。
「あいつ何開き直ってんの?」と言われてしまうように、今までの自分の言動や行動を棚に上げて感情的になり、周りに当たり散らすようなイメージが定着しているように感じる。
しかし、「開き直り=逆切れ」は成立しない。
開き直るという言葉には、全てを受け入れてふてぶてしい態度をとるという意味も含まれている。
私の好きな野球漫画『グラゼニ』の登場キャラで開き直り投法を武器に活躍する選手がいるため、今回はその選手を取り上げて記事を書いていく。
取り上げるのは、瀬戸内番長こと原田裕美。
この画像を見てわかるように、番長というのはあだ名で本人の性格は超繊細だ。プロ入りしてからは中継ぎ一筋というのもあって、これも番長という言葉のイメージとは程遠い。
原田は高校時代には先発投手として活躍していたものの、プロになってからは周りとの力の差に圧倒され、自分の生き残る道を模索していく事になる。
その結果辿り着いたのが中継ぎという道。
同期入団は全て辞めてしまっており、結果的に原田はプロ野球選手で言うと成功した部類と言えるだろう。
投球スタイルは上でも書いたように技巧派で、ストレートの球速もそこまで速くなく、抜群にキレが良い変化球を持っているわけでもない。
そのため、牽制をすることで相手のリズムを崩したり、長い間合いをとって審判から注意されるギリギリのところで投げたりと、バッターからしてみればとてもイライラしてしまう投手だ。
それでも、この戦法が通用しないバッターもいる。
その時こそ瀬戸内番長の真骨頂。「開き直り投法」だ。
牽制や長い間合い、変化球や直球をもってしても通用しない場合、突然ド真ん中にストレートを投げる。
バッターは今までの遅いリズムに慣れていたため、急に投げられると咄嗟に反応が出来ず、ド真ん中の直球なのに打ち損じてしまう。
一見セコい投球術のように思われるかもしれないが、これが現時点で原田裕美の出せるベストの投球スタイルだ。野球のルールに則った上で自分のプレースタイルを確立しているため、何もセコくはない。
漫画ではあるものの、日常生活でも「開き直り」をすることによって自己防衛をする事が可能だ。
生きているとどんなに考えてもわからない事がたくさんある。
その時に、その出来事を永遠に考え続けるのはきつい事だと思う。
そういう場合にこそ、「開き直り」はうまく作用する。
「開き直り」は考えを諦める行為ではない。現状の自分を全て受け入れて、今自分が持っている物で戦うという事でもある。
現状の自分であるため、これから先過ごしていく中で考え方が変わってくることもあって、それが良い方向に進むこともあれば悪い方向に進むこともある。
とりあえず、今自分の所有している手札で戦うだけで、考えるのをやめる限り同じ状況が続くわけではない。
常に気を張りっぱなしで過ごすのは体にもよくないし、なにより疲れる。
省エネで生きていこうというわけではないが、力を抜けるところでは極限まで抜いておかなければ、本当に大事な時に万全な状態で臨めなくなる。
「開き直り」をすることで、今の自分を一度認め、そこから新たな自分を創り上げていけばいいじゃないか。
『グラゼニ』では主役を張れる器ではないが、人間的に一番リアルに描かれている瀬戸内番長が大好きだ。