旭川大高-大阪桐蔭 2022年夏の甲子園1回戦
旭川大高は2018年の夏の甲子園に出場し、甲子園史上初のタイブレークの激闘の末佐久長聖に4-5で敗れました。この試合の模様は、以下の記事をご覧ください。
さらに力をつけて翌年夏も甲子園に出場しますが、初戦で星稜(石川)と対戦して0-1で惜敗しました。
この年の星稜には好投手の奥川恭伸(のちにヤクルト)、山瀬慎之助(のちに巨人)のバッテリー、1学年下に内山壮真(のちにヤクルト)もいる優勝候補筆頭のチームでした。実際に準優勝しています。
前述の記事でも書いたので今回は詳しく書きませんが、端場雅治監督就任後、2009年の甲子園出場までは力のないチームでした。
しかし2018、19、そして今回の22は非常に力のあるチームです。
ところが、2021年秋は旭川支部予選準決勝で、旭川実に4-7で敗れて全道大会に進めませんでした。
翌2022年春は旭川支部予選準決勝で旭川実に6-4で勝ってリベンジしますが、決勝で旭川明成に6-8で敗れてやはり全道大会に進めませんでした。
旭川支部予選は高校数のわりに有力校が多く、激戦支部です。有力校が支部予選で姿を消すのは、まったく珍しいことではありません。
北海道の高校野球の取材をちゃんとやってない雑誌は、秋春とも支部予選で敗退した高校をノーマークにしがちです。
しかし北海道の高校野球ファンから見れば、2022年夏の北北海道大会の旭川大高はかなりの有力校でした。
私はセンバツ出場校のクラーク記念国際に次ぐ2番手評価でしたが、1番手に旭川大高を挙げる方もいました。
夏の北北海道大会では準決勝でそのクラークを破りましたが、番狂わせでもなんでもありません。
コロナ禍も乗り越え、3年ぶりに甲子園の切符をつかみ取りました。
前回は優勝候補筆頭の星稜を引いたばかりに初戦敗退となってしまいましたが、今回は平均レベルのくじ運であれば初戦突破がかなり期待できるチームです。ベスト8以上だって十分狙えるでしょう。
さあ・・・と思って組み合わせ抽選のネット速報を見たら、まさかの大阪桐蔭! 言うまでもない高校野球界の横綱、そしてこの年のセンバツ優勝校です。
「大阪桐蔭以外であれば」と話していた端場監督がガックリうなだれる姿をとらえた画像が、SNS上に出回ってしまいました。
大阪桐蔭はこの年もプロ注目選手がズラリ。
秋には捕手の松尾汐恩がドラフト1位でDeNAで指名されています。
翌年には前田悠伍がソフトバンクから1位指名されています。
さらに背番号1の川原嗣貴は最速148キロ、別所孝亮も最速150キロでいずれも本格派右腕。
松尾とともに主軸を務める海老根優大は走攻守揃った外野手(大阪桐蔭では主にセンター)。
ほかにもプロ注目選手がズラリと並びます。
ただしこの年のドラフトでは大卒組も含め、大阪桐蔭出身選手の指名漏れが相次ぎますが、それはまた別の話。
実力的には2年生左腕の前田が投手陣でNo.1だと思いますが、西谷浩一監督は3年生を重視する監督として有名で、背番号1は3年生に渡すことが多いです。
2011年に藤浪晋太郎(のちに阪神など)が2年生エースとなったのは、数少ない例外と言えるのではないでしょうか。
大阪大会決勝の履正社戦では前田が先発して8回を7安打無失点ですが、点差が開いた9回にはエースの川原にゲームを締めさせています。1回を投げて1安打を打たれますが無失点で、7-0で勝って甲子園の切符を物にしました。
そして甲子園では、背番号1の川原が先発マウンドに上がりました。
私は前田が先発なら勝算が薄いと見ていましたが、川原なら十分に打てると予想していましたので、先発メンバーが発表されたときは大喜びしたものです。
何か前田にアクシデントがあったのかどうかは不明ですが、西谷監督が最後の夏に3年生に花を持たせようと考えていたとしても不思議はありません。
対する旭川大高は、私が自信を持って送り出す(?)チーム。
182cmの背番号1・池田翔哉と、184cmの背番号7・山保亮太の本格派右腕2枚が軸。池田は最速144キロ、山保は同143キロの速球を持ちます。
北北海道大会で32イニングを投げた山保のほうが実質的なエースでしょう。春季大会では山保が背番号1を背負っていました。
打線は2018・19の世代よりもさらに破壊力が上との評判で、下級生時からのレギュラー・藤田大輝は左の巧打者。
投手も務める山保や主将の廣川稜太はホームランも打てる強打者で、下位打線も力があります。
先ほども書いた通り、前田が相手だと厳しいと見ていましたが、川原や別所なら打てると予想していました。
2023年4月に旭川大学が公立化(市立)されることを受け、旭川大高は校名が変更されることが決まっていました(その後新校名が「旭川志峯」に正式決定)。
したがって「旭川大高」、略して「旭大高(きょくだいこう)」として戦うことのできる最後の夏。
世間が何と言おうと、本気で王者を倒すための試合は火ぶたが切って落とされました。
1回表の旭川大高、先頭の1番近藤伶音がいきなり3塁側への絶妙なセーフティバントで出塁。
繰り返しますが、旭川大高は本気で大阪桐蔭を倒しに行っています。巨大なビルを崩すには、まずは足元からです。
2番キャプテン廣川稜太がバントで送り、3番藤田大輝はカウント0-2と追い込まれた後に外角変化球をすくい上げてレフト前へ。
1死1、3塁となって打席には4番鶴羽礼を迎えます。
ここでけん制球で1塁ランナーの藤田が誘い出されますが、ファーストがサードへ送球してこれがセーフ、この間に藤田が2塁を陥れます(記録は盗塁)。
そして鶴羽が四球を選んで1死満塁のチャンスを作ります。
5番の山保亮太はカウント0-2と追い込まれた後に146キロの外角直球をセンターに運び、犠牲フライとなって旭川大高が1点を先制!
6番ピッチャー池田翔哉も144キロの直球をセンターに運びますが、守備位置が良くセンターフライに倒れました。
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