コンサルタントは変革を推進する個人の味方ではない
書籍『ヒューマノクラシー』の章立てに沿って、官僚主義的なエピソードや、本の記載内容の背景などを紹介しています。
変革はトップからでないと始められないという人と、変革は一人からでも始められるという二通りの人がいます。後者は成功例を探してきて、それを手本に仲間を探そうとし、前者は、一人で始めた瞬間に上につぶされると言います。個人的な見解でいうと、組織か個人かという二項対立で議論しているうちは何も起こらないと思っています。起こせる人はトップであっても、なくても、自ずと起こしているはずだからです。
それはさておき、上の文では、コンサルタントは「変革はトップから始まるという官僚主義的な前提を強化している」人間だと定義しています。コンサルタントは体制を支持する側である以上、組織をよくするために変革を起こした個人の味方になってくれるわけではありません。むしろ、経営方針に反するという烙印を押された場合、敵対することになります。
リーダーシップ研修を受けたことのある人は、以下の動画を見せられませんでしょうか?
<デレク・シヴァーズ 「社会運動はどうやって起こすか」>
一人が始めた行動が周りに伝わり、周りを巻き込んで広まっていく様を示した有名な動画です。変革は一人のリーダーシップから始められることを強調するために、コンサルタントは研修の参加者にこのような教材を提供します。
だとしたら、変革のリーダーシップを推奨するコンサルタントが敵に回るというのはおかしいではないかと思われるかもしれません。
しかし、コンサルタントは常にクライアント、つまりお金を払ってくれる人の味方です。経営や人事といったお客様を無視して、現在の組織のあり方を内部から変えていこうとする運動に与することはありません。もちろん、経営層が旗を振る変革プロジェクトなどには、コンサルタントは喜んで変革チームのサポートをします。その、経営側とコンサルタントとの官僚主義のタッグのことを、上の文では、「世界的な同盟」と呼んでいます。
友人の武井浩三さんの最初の著書は『社長も投票で決める会社をやってみた。』というタイトルでした。
これがどんな会社であっても、この本のタイトルのように、社長を投票で選ぶような仕組み、つまり、経営がここまでオープンになっていると、社員は自律せざるを得ない状況になっているはずです。となると、コンサルタントが入る隙間はないはずなのです。
優秀なコンサルタントを雇うには高額な報酬が必要なことは、皆が知っていることです。コンサルタントは、基本的に、一銭の得にもならないことには首は突っ込まないものです。