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スピード感を阻むコーチング

書籍『ヒューマノクラシー』の章立てに沿って、官僚主義的なエピソードや、本の記載内容の背景などを紹介しています。

第3章 官僚主義のコストを計算する 官僚主義体格指数(BMI)
摩擦……スピーディーな意思決定を阻む官僚的ハードル

一般社員は係長にお伺いを立て、係長は課長にお伺いを立て、課長は部長にお伺いを立て、そして、部長は課長に指示を出し、課長は係長に指示を出し、ようやく、一般社員のところまで戻ってくるには何日もかかるというのが、官僚主義的組織における意思決定の典型です。目くら判を押すだけが仕事の部長とか、正直、いまもこんな組織はあるのでしょうか?
 
最近は、1on1ミーティングなどで、上司が部下をコーチングすることが一般化してきました。上司も研修などによって、コーチングテクニックの取得に努めています。熱心な人は自らコーチングスクールに行くなどして、コーチ資格を取る場合もあるようです。
 
先日、ある企業の方と会話していました。なんでも、サーベイの結果、業務のスピード感という項目の点数が目立って低いチームがあったそうです。業務の流れを見るとそこで滞留が起こっているようには見えず、何人かにヒアリングして見たそうです。そこで出てきたのが、「コーチング好きな上司に困っている」「上司が仕事のスピードを削いでいる」というものでした。つまり、こういうことです。部下は、決めて欲しくって上司に相談に行きました。しかし、上司は、コーチングのテクニックを使って、「それで、あなたはどうしたいの?」「いや、それはそうではないんじゃない?」「それで、どうするの?」などと質問攻めにしました。部下にしてみれば、「あんたが決裁権持ってんでしょ。なんでもいいから決めてくれよ」となったわけです。実際、こういうやり取りが、複数のところで起こっていたようです。部下の成長を促すのは上司の大事な役目ですが、上記のようなやりとりに時間がかかり、チームはスピード感を失っていました。
 
これを『ヒューマノクラシー』の観点でいうと、上司に責任を問うことはできません。上司だけが意思決定権を持つ組織構造に問題があるのです。「摩擦……スピーディーな意思決定を阻む官僚的ハードル」にぴったりではありませんか?もちろん、上司がハードルとなっていたのです。

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。