蛇の目ミシン工業の決算から考える、ミシンはエンターテイメントとなって趣味市場が拡大した話

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのは蛇の目ミシン工業株式会社です。
その社名の通りミシンの製造販売をしている企業です、過去には総会屋によって大きな経済事件となった光進事件などで社会問題となった企業ですね、日本の企業ガバナンスの歴史についても学べますので、知らない方で興味のある方は是非調べてみてください。

さて、今回蛇の目ミシンを取り上げる事にしたのは実はミシンというのが新型コロナによって追い風となった業界の1つだからです。

マスク不足になった時期には手作りのマスクを着けている方が多かったですよね、そんな時にミシンが売れていたという訳です。

今回は、そんな特需がありながらも今はマスク不足は解消されていますし、現状がどうなっているのか今後がどうなっていくのかについて考えていきましょう。

それでは早速こちらの資料をご覧ください。

売上高は22.8%増の212.4億円、営業利益は646%増の23.6億円、純利益は33.5倍となる20.1億円と大幅な増収増益となっている事が分かります。

続いてもう少し詳しく内訳を見ていきましょう。

蛇の目ミシンの事業セグメントは①家庭用機器事業②産業機器③IT関連と3つある事が分かります。

それぞれの事業の業績の推移は
①家庭用機器:売上176億円(35.4%増) 利益25億円(494%増)
②産業機器:売上22.3億円(23.8%減) 利益2億900万円の赤字→2.13億円の赤字
③IT関連:売上10.5億円(5.0%増) 利益7700万円(26.7%減)
となっており好業績を支えていたのは家庭用機器で、それ以外の事業では業績が悪化してしまっている事が分かります。

確かにアパレル業界などは不振となっていますので、その洋服を製造するための産業用ミシンなどは不振となっている訳ですね。

また、ミシンの地域別の売上を見てみると、多くの地域で販売台数が増加する中で中東やアジア、ロシアは減少してしまっている事が分かります。

中東やアジア、ロシアでは工場などが多く産業用の需要が大きかったのかもしれませんね。

続いて各事業がどうしてこのように推移したのかについて見ていきましょう。

まず家庭用ミシンに関しては、新型コロナの影響があり自粛規制や自粛要請が続き日常の生活様式が変わる中でミシンの需要が増加したとしています。

産業用機器事業に関しては、国内外で設備投資を抑制する動きとなり大幅な減収となったようです。
しかし中国では回復傾向がみられるという事でやはり中国経済の回復の早さが分かりますね。

ファイザー社のワクチンがかなり効いたとの報道がありましたが、実際に多くの方にワクチンが届くのはまだまだ先になる中で、欧州やアメリカなどは冬の訪れと共に新型コロナの影響が強くなっていますから今後はさらに中国という国の強さが目立ちそうですね。

また、大幅な増益となっていたわけですがその要因として売上げの増加の他にも売上総利益率が40.2%→43.1%へと利益率が増加した事が分かります。

これに対して蛇の目ミシンは、ミシンの販売台数の大幅増による製造コスト低減が起こり利益率の改善によって6.8億円ほど利益が押し上げられたとしています。

安いアパレルも増えましたし、世界中が経済的に豊かになっていく中で洋服を直して着るといった需要が減る中で、長期的にはミシンの市場が縮小が続いていたわけです。

そんな中で、生産設備が過剰となって稼働率が下がったり、仕入れといった面でもボリュームが少なくコストが割高になるなど最適化が出来ていなかったと考えられますね。
なので販売数が増加すると、生産設備の稼働率が上がり仕入値も下げられて利益率が高まったのではないでしょうか。

という事は今後も売上の好調が続けば利益率の高まり好業績が期待できるという事です。
しかし新型コロナによる自粛も落ち着き、マスクの供給なども余裕が出ている状況で今後は売上の好調が期待できるのでしょうか?

これに対して蛇の目ミシンは業績の上方修正を発表しています。
売上は前回の見通しから10億円ほどプラスで400億円、営業利益は93%も見通しが良化して38億円、純利益でも116.7%も見通しが良化し26億円という見通しを立てています。

そしてこの上方修正の要因としては、従来は手作りマスクや巣籠りのを契機としたミシンの需要増加が、マスクの流通などのともに徐々に落ち着いていくと予測していたようですが、コロナによるライフスタイルの変化が潜在需要の掘り起こしに繋がり、ミシンの需要を想定以上の水準を維持しているとしています。

これに関しては手作りマスクなどを作る中で、ミシンによるモノづくりがエンターテイメントとして機能し、趣味としてのミシン需要が増加していたのではないかと考えています。

コロナ禍でのエンターテイメントといえばやはり受動的なものが多かったはずで、それこそ最も需要が増えて動画配信などはかなり受動的ですよね。
大半の方が受動的なエンターテイメントを享受する時間が増えていたのではないでしょうか。

そんな中でミシンで何かものを作るというのは、能動的な行為ですし、例えば家族のマスクなどを手作りすれば反応も返ってきますよね。

なので受動的なエンタメばかりになる中で、こういった能動的な行為に触れる機会が減りミシンでのモノづくりというのがエンターテイメント化していたと考えています。

なのでエンターテイメントとして受け入れてもらえた事で、趣味としてのミシンという市場が大きくなったと考えられますので、今後に関しても好影響が続きそうです。

という事で売上の増加がある程度続くと考え、利益率の高まりによる好調が続くことを予測します。
ただし長期的に見ればやはり縮小市場なので、楽ではなさそうです。

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