農業総合研究所の決算から考えるリアルな販売網を抑える強さと今後の業績
どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。
今回見ていくのは株式会社農業総合研究所です。
この会社の決算読んで欲しいという要望を大募集します!!にてご要望いただいた会社です。
ご存じない方も多いかもしれませんのでまずはこの会社のビジネスモデルから紹介していきましょう。
まず農業総合研究所は農家の直売所というプラットフォームを主力としています。
そしてこれは市場流通と直売の中間として位置付けている事が分かりますね、生産者の手取り額も市場での販売額ともに中間の位置づけとなっています。
既存流通の問題点としては、生産者は非常に楽に商品を卸せるものの中間業者が多く価格の決定権も無いために手取り額が小さく、販売価格も高くなってしまう事があります。
直売の流通としては中間業者はいないので手取り額は多くなるものの、販売の手間がかかる事と売り場の確保が必要だという課題を抱えています。
例えば道の駅ではそんなに多くの売り場を確保できないのは想像できると思います。
そこでそういった問題を解決するためになるべく中間業者を挟まず間に入るのを自社(農業総合研究所)のみにして生産者の手取りを増やしつつ販売価格を下げられるという中間のモデルだという事です。
例えば有名どころだと、オイシックスなども同じような価値を提供していますね。
そして、この農業総合研究所がオイシックスなどの多くの競合サービスと違う点はオフライン(スーパー)で農家の直売所という売り場を設けて販売が行われている点です。
オイシックスなどの競合は、オンラインで生産者と顧客とをつなげるサービスですが、農業総合研究所は生産者とスーパーを繋げるというより既存の流通事業に近い形になっています。
多くの人にとって青果はリアル店舗で買うという行動様式はしばらく変わらなそうですし、リアルへの進出は流通網の整備やスーパーなどとの交渉など、オンラインに比べて参入障壁が高いですからその点は農業総合研究所の強みですね。
それでは業績を見ていきましょう。
売上高は24.6億円、営業利益は1000万円、純利益は900万円となっており多少ながらも黒字化を達成している事が分かります。
しかし2020年8月期までの見通しでは営業利益で4000万円ほど、純利益で2700万円ほどの赤字となる見通しのようです。
農業総合研究所はまだまだ投資段階の企業ですから、一時的には黒字化したものの投資の継続によって赤字転落するものだと考えられます。
続いてこちらの資料をご覧ください。
新型コロナによって外食が減り、スーパーが活況となりましたから、スーパーマーケットの青果の流通額自体がかなり伸びて前期比で110数%ほどとなっている事が分かります。
その市場の伸びの後押しもあり流通総額は大きく増加し、5月では前期比で137.5%とかなり増加しているようで単月では初の10億円を達成したようですから、新型コロナが特需となり黒字化を達成できたようです。
また、青果市場の伸び以上に流通総額が伸びていますから好調ですね。
これに関しては農家の直売所というネーミングで売り場を設けて売っているというのも効いていそうです。
何となく体によさそうな気がする名前ですし、農家から直送だと言われると、新型コロナで健康志向が高まる中でより売れていそうです。
こん回の特需である程度認知が高まったでしょうから今後も好影響が続きそうです。
流通総額、登録生産者数、店舗数と右肩上がりで増加しており、そこまで急拡大とは言えないものの成長が持続しているようです。
販売がリアルな店舗で行われていますので、なかなか業績の急拡大は難しいのでしょうが参入障壁が高い分安定して成長していけると考えられます。
また、スーパーなどでよく買い物をされる方は分かると思いますが、野菜は天候などによって収穫量が大きく左右されるため意外と値動きが激しいです。
なので相場変動によって農業総合研究所自体の業績も左右されるため、相場変動に関わらず利益水準を保てるような仕組みの構築を進めていたわけですが、そちらは新型コロナへの対応でいったんストップしてしまい進捗がなかったようです。
続いてこちらの資料をご覧ください。
前期と比べ業績は向上する一方で売上総利益率が20.7%→19.8%へと下落している事が分かります。
そしてその要因として買取委託費の増加が影響しているようです。
実は農業総合研究所は取引先の休業などの影響を受けた生産者から農産物を買い取る支援をしていたようですので、それで買取委託費が増加したのだと考えられます。
登録生産者以外からの買取も進めたようなので、生産者の増加につながっていそうですし、既存の登録生産者の方もここで恩義を感じれば長期的な付き合いとなっていく可能性がありますので利益率の低下には問題がなさそうです。
また加工センターを移転しこれまでの2倍の加工が可能になったようで、移転に伴い物流コストの削減も進むようですから生産者数の増加にも対応できる仕組みを構築していっているようです。
続いてこちらの資料をご覧ください。
レシピ動画サービスを提供するdelyと提携して、野菜におすすめレシピのQRコードを付けるようです。
そしてレシピを付けると販売率が上がる傾向を確認できたようです。
確かにこれは需要がある気がしています、レシピサービスも色々あり、料理をする上では非常に便利なのですが、普段から料理する主婦層の一番の悩みは選ぶのがめんどくさいという事でしょう。
オンライン上でたくさんのレシピから選ぶのは意外と疲れますよね。
となると、スーパー内で数少ないレシピが目に入るというのは、考える手間や選ぶ手間を省けるので需要はあるのではないでしょうか。
という事で投資期であるので、まだ赤字は続きそうですが着実に業績を伸ばしていますし、新型コロナが追い風となり業績は伸びていますしそれに伴い認知も高まっているはずです。
新型コロナによって影響が出た生産者への買取支援や、加工設備への投資なども進んでいるようですし、事業としてもリアルで販売という参入障壁の高さから考えて今後も安定して業績を伸ばしていくと予測します!!