【LVMH・ケリング】ハイブランドが日本市場でだけ異常に売れている理由
さて、今回はハイブランドの状況と、円安が続く日本市場の状況が面白いと思いましたので、それについて書いていこうと思います。
今回見ていくのは、グッチやサンローラン、ボッテガヴェネタなどを展開している「ケリング」と、ルイ・ヴィトンやディオール、ティファニーやフェンディー、ジバンシーなどを展開している「LVMH」です。
業績を見る前にまず、ケリングとLVMHの市場別の売上構成を見ていきます。
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LVMH売上構成を見てみると以下の通りです。
①欧州(フランス除く):16%
②フランス:8%
③アジア(日本除く):30%
④日本:9%
⑤アメリカ:25%
⑥その他:12%
先進国を中心にグローバルで分散した構成となっていますが、日本も9%を占めるような大きな市場です。
そして、最大の市場は中国を中心とするアジアとなっています。
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続いてケリングの地域別の売上構成を見ていくと以下の通りです。
①西欧:28%
②北米:23%
③日本:8%
④アジア太平洋:32%
⑤その他:9%
こちらも先進国の多い地域を中心に分散した構成ですが、日本も8%を占める大きな規模を持つ市場です。
そしてLVMH同様に最大の市場はアジアとなっています。
両企業とも、日本は比較的大きな市場で、そしてアジアが最大の市場となっています。
近年は中国の経済成長が進み、消費にも積極的だという事がありアジア市場が大きく成長してきました。
なので現在のハイブランドの企業にとって中国市場の状況が重要だという事ですね。
それでは続いて、直近の2024年12月期の2Q(2024年1~6月)までの業績を見ていきましょう。
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まず、LVMH業績は以下の通りです。
売上高:417億ユーロ(▲1%)
営業利益:106億ユーロ(▲8%)
純利益:73億ユーロ(▲14%)
減収減益と苦戦している事が分かります。
コロナ禍の2020年12月期では一時的な停滞はありましたが、2023年12月期は過去最高の売上を更新するなど、金融緩和や新興国の経済成長の中で大きな成長を見せていたLVMHですが、直近では停滞傾向となった事が分かります。
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続いてケリングの業績は以下の通りです。
売上高:90.2億ユーロ(▲11%)
営業利益:15.7億ユーロ(▲43%)
純利益:8.8億ユーロ(▲51%)
ケリングも減収減益、利益面は半減と非常に苦戦した状況となっている事が分かります。
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ちなみにケリングに関しては2023年12月期時点で、減収減益となっており前期からすでに停滞が始まっていました。
近年のハイブランドは苦戦傾向にある事が分かります。
ではどうして苦戦傾向にあるのかというと、大きな要因に中国経済の停滞とインフレによる中間層の消費減退の影響があります。
先ほど見たように現在のハイブランドの主力市場は中国を中心とするアジア市場となっています。
その中国市場では、前期から不動産不況となり景気も低迷しています、そういった中で幅広い層でハイブランドの消費停滞に繋がっています。
さらに、欧州市場でもインフレが進み景気も減速傾向となり中間層の消費が落ち込んだ事で苦戦に繋がっています。
中国景気の低迷やインフレの中で市況が低迷しており、苦戦傾向となっているという事ですね。
このように近年は苦戦するハイブランドの企業ですが、唯一大きな成長を見せている市場があります。
実はそれが日本市場です。
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2024年12月期の2Q(2024年1~6月)のLVMHの市場別売上の前期比は以下の通りです
①アメリカ:+2%
②日本:+44%
③アジア(日本除く):▲10%
④欧州:+3%
アメリカとヨーロッパが微増で、アジアが減少と停滞していますが、その一方で日本は+44%と非常に大きな伸びを見せている事が分かります。
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続いてケリングの2024年12月期の2Q(2024年1~6月)の小売りの売上の前期比を見てみると以下の通りです。
①西欧:▲8%
②北米:▲11%
③日本:+22%
④アジア太平洋:▲22%
⑤その他:+2%
ケリングではLVMH同様にアジアが大幅減収となっており、さらにLVMHは微増だった西欧や北米に関しても減収と苦戦しています。ですが日本に関しては+22%と非常に大きな伸びを見せています。
日本市場だけが明らかに異常な動きを見せている事が分かります。
日本でもインフレが進んでおり、消費にも一定の影響が見られる状況ですが、なぜか世界中で日本だけハイブランドが売れている状況なんですね。
ではそれはどうしてなのでしょうか?
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LVMHのプレスリリースによると、日本市場では中国人旅行者の購入によって大きな成長を見せているとしています。
日本市場の大きな成長を支えているのは国内消費ではなく、中国からのインバウンドだという事です。
もう少し詳しく日本の状況を知るために、ハイブランド含め高額商品も取り扱う百貨店の高島屋の状況を見てみましょう。
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直近の2025年2月期の1Q(2024年3~6月)の、高島屋の国内百貨店事業のみの業績を見ていくと、17.3%の増収となり利益面も倍以上への増益と非常に好調です。
そしてその要因には、想定を大きく超過するインバウンドによる影響があるとしています。
実際に、高額商品なども取り扱う国内百貨店はインバウンドの影響があり好調となっているんですね。
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国内百貨店事業の売上をもう少し詳しく見てみると、総売上高は前期比+19.3%に対し、国内顧客は前期比+6.6%となっています。
国内顧客も堅調ですが、インバウンドによる押し上げ効果がより大きい事が分かります。
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また、商材別の売上では高額品が+15.6%となっており特に高額品が伸びています。
インバウンドへの高額品の販売が好調で、業績が伸びているという事ですね。
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そしてインバウンド売上高をもう少し詳しく見てみると、今期に明らかに伸びたのが中国からの売上です。
前期比でインバウンド全体の売上は+220億円となりましたが、その内中国が+165億円となっており、インバウンド売上に占める中国の比率も31%→60%まで拡大しています。
中国以外も伸びていますが、明らかに中国が大きく伸びた事が分かります。
また、月別の中国からの売上は以下の通りです。
3月:47億円
4月:69億円
5月:83億円
その他の国は以下の通りです。
3月:40億円
4月:46億円
5月:44億円
中国以外は横ばいですが、中国の売上が月を追うごとに非常に大きく伸びている事が分かります。
高島屋の状況を見ても、高額商品の購入を目的とした中国からのインバウンドが増えている事が分かります。
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ちなみに、日本のインバウンドは2024年6月では訪日外客数はコロナ以前と比べると+8.9%と好調ですが、中国に関しては落ち込んだ状況が続き、コロナ前比で▲25.0%となっています。
コロナ以後の中国のインバウンドは、数としては停滞していますが、その目的や層が以前とは変わっている事が考えられます。
以前は、薬局や家電量販店での爆買いが話題となったように、もう少し中間層よりの方が多かったものの、現在は大きな円安が続く中で、ある程度所得の高い層が高額商品を購入する目的での訪日が増えている事が考えられます。
目立たない分話題とはなりにくいですが、高額商品の爆買いが始まっていたんですね。
さらに、LVMHやケリングの地域別の売上の推移を見た通りで、中国を中心とするアジア市場は最も大幅減収となっており苦戦していたわけです。
なので中国国内の消費は低迷傾向が続いていると考えられます。
つまり円安が進む中で、中国のこういったハイブランドの消費が日本市場に流れ、日本市場だけが好調になっているという事です。
円安の中で日本が非常に特殊な市場になった事が分かります。
とはいえ直近では日本でも利上げがあり、為替も円高方向に動いています。
そういった中で、今後日本市場がどのような動きを見せていくかは面白いと思いますので注目です。