ジャパンディスプレイの決算から考える大赤字だけれども倒産してしまうのか

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのは株式会社ジャパンディスプレイです。

ジャパンディスプレイに関しては以前にいくつか記事を書いていますのでよろしければそちらもどうぞ。

さて、こんなニュースがありました。

JDI、最終赤字362億円 4-9月期 有機ELシフト響く
2020/11/13 22:00
ジャパンディスプレイ(JDI)が13日発表した2020年4~9月期の連結決算は、最終損益が362億円の赤字(前年同期は1041億円の赤字)だった。顧客で有機ELの採用が拡大し、主力のスマートフォン向けの液晶パネルの需要が減少した。新型コロナウイルスの影響で稼働が遅れた工場の設備評価を見直し、減損損失を計上したのも響いた。
人員削減や工場の減損など事業構造改革費用を計上した前年同期から赤字幅は縮小したが、厳しい状況が続いている。


どうやらJDIは前期が1041億円の赤字、さらに今期は362億円の赤字と非常に厳しい状況にいるようです。
もともと債務超過に陥ったり不正会計があったりと問題も重なっている企業ですが、そんな中でこれだけの赤字となり今後がどうなるのか、倒産の可能性はあるのか、について考えていきましょう。

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売上高は16.0%減の1998.0億円、営業利益は351.7億円の赤字→98.8億円の赤字、純利益は1041.6億円の赤字→362.9億円の赤字となっており、赤字幅は縮小していますが、前期の赤字が巨額だっただけでまだまだ厳しい状況が続いています。

それではもう少し詳しく内訳を見ていきましょう。

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JDIは売上を①モバイル分野②車載分野③ノンモバイル分野と3つに分けており、それぞれの分野の売上の推移は
①モバイル分野:売上1339.6億円(16.5%減)
②車載分野:売上388.1億円(25.9%減)
③ノンモバイル分野:売上270.1億円(8.8%増)
となっておりモバイルや車載分野で大幅に売上が減少、一方でノンモバイル分野では売上が伸びている事が分かります。

続いては各分野の売上がこのように推移してしまったのか見ていきましょう。

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まずモバイル分野では顧客のOLEDの採用拡大によって需要が減少し、業績は軟調になったとしています。
下期に関してはパネル販売は増加するものの、単価の高いモジュール販売の減少によって上期比でも悪化する見通しのようで、単価の下落も起きているようです。

ちなみに顧客のOLED採用拡大とは、アップルがiPhoneに有機ELディスプレイを採用した事です、JDIはモバイル向けには液晶ディスプレイを作っているので液晶ディスプレイの需要が減少しているという事ですね。

JDIはサムスンなどが得意とするモバイル向けの有機ELディスプレイでは大幅に遅れを取っています。
有機ELディスプレイの方が高画質だったり、薄く作れたり省電力だったり、反応速度が速いなどメリットが多く、問題点といえばコストだったのですが、最近はコストの低下が進んでいる事によって液晶ディスプレイは優位性を失いつつあります。

となると今後を考えてみてもJDIのモバイル事業は、液晶ディスプレイの市場縮小と、モジュール販売の減少による単価の下落という2重の問題を抱えており非常に厳しい状況にいますね。

JDIは長期的な不振によって投資体力を失っており、モバイルで有機ELを量産したいものの1社では投資できないとして協業先を探しているような状況ですので、後れを取った状況は続きまだまだ業績の悪化が続きそうです。

ちなみになぜ有機ELの方が省電力化出来たり、薄くできたりするのというと、OLEDという名前からも分かる通りでLED、つまり発光ダイオードなんですね。

なのでOLEDは自分で発光することが出来ます、しかし液晶ディスプレイは発光しないためにあくまでフィルターにライトを当てる形になります。
なのでライトの分だけ薄くできますし、全体を光らせてフィルターをかけているので黒色を出す際にも、光を当ててフィルターで黒にする液晶ディスプレイに対して、黒の部分を発光しないことで表現する有機ELの方が省電力となります。
さらに有機ELの方は光を発しない純粋な黒ですのでより綺麗な黒色を出すことも出来ます。

続いて車載分野に関しては、自動車生産の大幅な調整に伴い1Q は売上が急減したようですが、2Qには急回復があったようです。
自動車業界では各社で売上の回復が見られ、上方修正となった企業が多いですから車載事業の業績は回復していきそうです。

続いてノンモバイル分野ですがこちらはデジタルカメラ向けの減少を、VRやノートPCの需要増加で補い売上は増加したようです。
このノンモバイルに関しては、モバイルとは違いOLED(有機EL)の販売も行っておりそちらも好調だったようです。

しかしトータルでは売上は16%減少し、営業利益では351億円もの赤字となるなど厳しい状況が続いています。

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その対応としてJDIは大幅なコストカットを進めており、2023年3月期には2019年3月期比で固定費は280億円、変動費でも100億円もの経費削減に向けて動いているようです。

売上の減少、規模の縮小というのは受け入れてそれでもコストカットで利益を出せる体制を作るという事ですね。

ではその取り組みは上手くいくのでしょうか?

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直近の2020年7月~9月の3ヶ月だけの業績を見てみると、モバイルでは通期の16.5%減に対して32.4%減となっており悪化は加速しているものの、車載では通期が25.9%減で10.6%減ですので下落幅が減少しており、ノンモバイルは相変わらず好調を維持しています。

その結果直近の3ヶ月では営業利益は前年同期の80億円の赤字→28.7億円の赤字へ赤字幅は縮小し、さらにEBITDAが10億円のプラスとなっている事が分かります。
ちなみにEBITDAとは営業利益に減価償却費やのれんの償却額といった資金の流出を伴わない費用を足したもので、単純に言うとお金を稼ぐ力がどのくらいあるのかを表す指標です。

つまり直近の3ヶ月では大幅なコストカットを通じてお金を稼ぐ力はプラスに転じたという事で、構造改革は進んでいると考えられます。

とはいえまだまだ直近の3ヶ月では28.7億円もの営業赤字で厳しい状況が続いている事は間違いありませんね。

さて、赤字が続いていますがで財務状況は大丈夫なのでしょうか?

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まず現預金、売掛金未収入金といった手元資金は1188億円ほどあり、流動資産では1721億円ほどある事が分かります。

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一方で短期的に支払いが必要な流動負債は1962億円となっており資金繰りとしては楽な状況ではないことが分かります。

そしてその流動負債の中で大きな負担となっているのが前受金の815億円です。
これは白山工場建設の際にアップルから受け取ったもので返済義務のあるものなのです。
ちなみにこの白山工場というのはJDIが、特にアップル向けに液晶ディスプレイの生産のために大規模投資をした工場で、この投資の失敗というのがJDIの業績が大幅に悪化した要因の1つでもあります。

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そしてこの決算のあとの10月2日に7億ドルの前受金を弁済完了したとしています。

という事はこの7億ドルの支払いでさらに資金繰りが厳しくなっていそうですね

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ですが実はそうではありません。
今後も有機ELへの移行が進むため売上の改善は見込めないとしており、費用削減のためにも前期から生産活動を停止していた、液晶ディスプレイを生産する白山工場を売却したとしていますね。

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そしてその対価として、714億円ほどを得ている事が分かります。
実は先ほどの7億ドルの支払いというののの大半はここから行われていますので、生産停止で完全に余剰資産となっていた白山工場の売却で前受金の負担が無くなったという事でむしろJDIの資金繰りはだいぶ楽になった事が分かります。

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またこの売却によって213億円ほどの売却益を計上するようですので今後の業績はその分回復が見込まれますね。
もちろんこの売却以前にはこの白山工場から、2019年3月期に747億円、2019年6月期には514億円の減損、今回の2020年9月期に関しても譲渡に伴う損失として131億円と合計1392億円の損失を出していますので、トータルでは大損となっていますよ。

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さらに、先ほどの資料を改めてみてみると今後はいちごトラストに対する新株予約権を通じて最大554億円の調達が出来るとしています。

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ここから得られてた株式は1年後に24円でJDIの普通株式と転換が可能となりますので、株価的に余裕があれば行使され資金的には相当余力を持った状態になりそうです。

現在の株価が51円で、EBITDAも黒字化できていますからとなると行使される可能性が高そうですので財務的には余裕がありそうですね。

となるとコストカットも進んでおり今回の2Qのみの決算ではEBITDAが黒字化していますので倒産のような事は起きそうにないですね。

という事で最後に、全体の業績を振り返るとモバイル向けは有機ELへの移行が進み不調が続きそう、車載向けのディスプレイは自動車販売が回復しているので回復が進みそう、ノンモバイルは堅調を維持しておりそれが続きそうという事で、本業ではモバイルの悪化で売上の回復は難しそうですが、コストカットが進んでいきますし、白山工場の売却益213億円も加わりますので利益面での回復は進むと予測します!!

ただし黒字化というのはまだ遠そうではありますね

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