【無料回】ファストフード業界まとめコロナ禍での変化とは(マック・KFC・松屋・ココイチ・スシロー・サイゼ)
「夏はクーラーが無いと耐えられないけど冬は厚着すればいいから無くても耐えられる」と謎の自慢をしている人をたまに見かけますが普通に嘘だと思っています。
私は10月末の時点で既に暖房が無いと耐えられません!!
さて、コロナの感染拡大から1年半が過ぎファストフード業界の今が気になるという事でファストフード業界を取り上げてきました。
取り上げた企業は、マクドナルド、ケンタッキー、松屋、ココイチ、スシロー、サイゼリヤです。
元々テイクアウトが強かったところ、1人での食事が多いところ、家族での食事が多いところといった感じで見てきています。
そして今回はそのまとめという事で、このコロナ禍でファストフード業界全体としてどの辺が強いのか、どこはダメージが大きいのかなどを比較してみていこうと思います。
なので今回は各社の具体的な決算に触れていく事はしないので、もっと詳しく知りたいという方は個別の回を見てみてください。
業績の違いを見る前に、まずは各社の店舗展開の違いについて見ていきましょう。
店舗数だと明らかに多いのはマクドナルドの2928店舗で、サイゼとココイチはその半分程度の1500店舗前後、そしてKFC(ケンタッキー)と松屋は1100店舗超、そこから少し離れてスシローが971店舗となっています。
店舗当たりの売上高を見てみると
スシロー:2.4億円
マクドナルド:2.1億円
KFC:1.2億円
松屋:9400万円
サイゼ:8100万円
ココイチ:5800万円
となっていて、スシロー、サイゼ、ココイチなんかは店舗のサイズとある程度比例している感じがしますが、マクドナルドやKFCは小規模な店舗も多いですから店舗のサイズ以上に売上規模が大きい印象を受けます。
この2社は、やはりテイクアウトが多いのでそれによって売上規模が店舗のサイズより大きくなるわけですね。
マクドナルドなんかは駅周辺の好立地に多数の店舗がありますが、それは好立地であればあるほど、テイクアウトによって店舗のサイズ以上の売上が期待できるので、それによって高額の賃料もペイ出来るという事です。
郊外で大型店による店内飲食中心のスシローと、駅周辺など好立地で小規模店舗が多いもののテイクアウトが多いマクドナルドで売上規模が近い水準になるというのは面白いですね。
また、FC(フランチャイズ)比率を見てみると
ココイチ:77.3%
KFC:73.5%
マクドナルド:70.5%
とこの3社はFC中心の展開となっています。
一方で
スシロー:1.4%
松屋:0.4%
サイゼ:0%
とこの3社は直営中心の展開で、企業の方針によってくっきりと分かれています。
2020.4~2021.3月期の売上高を見てみると
マクドナルド(FC):2919億円
スシロー:2158億円
サイゼリヤ:1127億円
松屋:944億円
KFC(FC):896億円
ココイチ(FC):442億円
となっていて、店舗数も多く店舗当たりの売上規模も大きいマクドナルドが売上でも最大となっているものの、直営の多いスシローやサイゼリヤ、松屋の売上がそれに続いて、そこからFC中心のKFCと続いて、店舗当たりの売上規模も小さなココイチの売上は小さくなっています。
FCの場合は、FC店売上の何%のような形でロイヤリティー収入が中心となりますので売上規模で見ると小さくなりやすいわけです。
そしてその違いは利益率にも表れていて、ロイヤリティー収入は基本的に利益率が高いですから、FCメインで展開するマクドナルドやココイチはコロナ前の営業利益率は10%超と高水準になっています。
もちろんFC中心の場合売上は小さくなりますので、率で見ると高かったとしても利益の額が大きくなるという事ではありません。
むしろ店舗の利益をFC加盟店側と分け合う事になるので、単純な額でいうと店舗数に対しては小さくなります。
とはいえ、手元資金なくFCオーナーさん資金での店舗の拡大をできるので店舗数は増やしやすいです。
なので数を増やして額も増やしていくというのが成長に繋がるわけですね。
また、FC、直営に関わらず店舗のそもそもの人気が一番重要ですから、KFCは2.8%と同じFC展開中心の中でも低い水準になっていて、スシローやサイゼリヤが7.5%ほどあるのと比べると低い水準です。
当たり前ですが、FCであれば必ず利益率が高くなるというわけではないですよね。
ここで、2021年10月時点の時価総額を見てみましょう。
売上規模が大きく利益率も高めのマクドナルドとスシローが高い水準で、そこから売上規模は大きくないものの利益率の高いサイゼ、ココイチと続き、そこから離れて松屋、KFCという利益率が低めだった2社が続いています。
PSRという時価総額を売上高で割った、売上規模に対してどのくらいの評価を受けているのかという指標を見てみると、ココイチが3.3倍とトップの水準になっています。
売上規模は小さいですが利益率も高かったですし高い評価を受けている事が分かりますね。
という事で、ある程度店舗展開の違いについては分かったところで各社の状況について比較してみていきましょう。
まずは2020年4月~2021年3月までの1年間の業績を、その1年前の業績と比較してみていきます。
ちなみに各社とも決算期が違うので調整しています。
まず売上高では、前期比で最も伸びていたのがKFCの112%でその他に前年を上回ったのがマクドナルドとスシローの102.4%となっています。
マクドナルドやKFCなどテイクアウト中心の所は巣ごもり需要を受けて好調になっていて、スシローもコロナ禍で比較的堅調だった郊外店が多いという事や個別の回で取り上げましたが積極出店を進めているという事もあり伸びています。
一方で松屋は88%、ココイチは86%と都心部の店舗も多い中で売上減少となっています。
そして、特に業績の悪化が大きかったのはサイゼリヤで前期比71.4%となっています。
もちろん店舗閉鎖の期間が長かったりという事もありますが、サイゼリヤは食事中心の松屋やココイチに比べて、お酒を飲んだり、カフェ替わりで会話を楽しんだりといった需要があったわけですがそれがなくなった影響が大きいと考えられます。
基本的には人が集まる場としての機能があったところの方が業績悪化しているんですね。
続いて営業利益を見てみると、売上が増加したマクドナルド、KFC、スシローはそれに伴って営業利益も増加しています。
そしてココイチは前期比49.2%、松屋とサイゼリヤは赤字転落となっています。
売上では前期比で85%超で似た水準にいた松屋とココイチですが、松屋は赤字、ココイチは減益ながらも黒字を維持と差がついていますね。
もともとの利益率に大きな差がついていたという事も大きな要因ですが、ココイチはFC中心ですから店舗の業績悪化のリスクはFCオーナーさん側と分け合う形になります。
なので直営中心の松屋より業績悪化は小さかったわけです、コロナのようなリスクに対してはFC展開の方が利益水準を保ちやすいのでしょう。
※スシローはIFRS(採用している会計基準)なので経常利益はありません。
一方で経常利益を見てみると、売上増加の2社は好調で特にKFCは好調です。
サイゼリヤだけは赤字と苦しいですが、同じく営業赤字だった松屋も黒字化していて各社とも、営業利益よりも経常利益の水準が良化しています。
これはもちろん、コロナの補助金の影響で、補助金も含めると売上が最も悪化したサイゼリヤ以外は何とか黒字を保てていたようです。
とはいえ松屋は前期比で99.4%減、ココイチは42.8%減と苦しいです。
そして純利益を見てみるとマクドナルドとKFCの好調は変わりませんが、スシローは減益で松屋は赤字転落となっています。
というのも、スシローや松屋サイゼなどは直営店が多く、コロナで大きなダメージを受けた店舗もありますから、そういった店舗の減損があった事が要因です。
直営中心の所は、最終的には減損によって悪影響を受けやすかったんですね。
続いて今年に入ってからの(2021年1月~6月)の業績をコロナ前の水準と比べてみていこうと思います。
まず、売上高を見ていくとマクドナルド、KFC、スシローはコロナ前比でもプラスで好調が継続しています。
そしてそこから、松屋、ココイチ、サイゼリヤという順で続いて2020.4~2021.3と同様の状況となっています。
今年に入ってからも飲食業界では、売上面での大きな変化は起きていなかったんですね。
そして営業利益を見てみると、KFCは非常に好調で、そこからスシロー、マクドナルドと続いていて、FC中心のココイチが減益ながらも黒字、松屋とサイゼは赤字とこれもまた2020.4~2021.3とほぼ同様の状況です。
ですが経常利益の水準を見てみると違っていて、マクドナルドとKFCの好調は変わりませんが、松屋もコロナ前比で119.5%と増加に転じ、サイゼリヤも減少しながらも前期比65.2%とココイチの61.2%を上回る水準になっています。
2021年に入ってからは、まん防や緊急事態宣言など時短要請がされている期間が長かったですから補助金が多額になっています。
なので、直営中心の松屋やサイゼイリヤは補助金の影響が非常に大きく、FC中心のココイチを上回るような回復を見せていたという事ですね。
昨年はFCの方が、コロナの悪影響のリスクを低減できていましたが、2021年に入ってからは補助金によって直営の方が好調となっていたのは面白いですね。
という事でコロナ禍では、テイクアウト中心のところは好調で、そこから郊外中心、飲食がメインのところと続いて、人が集まる場としても機能していた業態は業績の悪化が大きかくなっていました。
また、FCメインのところの方が直営中心のところよりもコロナの影響としては小さくなっていて、その状況は2021年に入ってからも継続しています。
ですが、2021年に入ってからは時短要請が続く中で補助金の額が多額となっていてFC中心のところよりも直営中心のところの方が利益面では好調となっています。
という事で、今回はこんな違いがあったよという事でそんな話でした。