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意のままに言葉にすることの難しさ、成し遂げたいと努力する美しさ


一個人が発信者となり表現の世界に足を踏み入れた葛藤の記録



私は空想に思いをはせることが好きだ。
生理現象と同等レベルに、日常に溶け込んで

空想は私にとっての当たり前だった。

皆が同じように空想に励んでいるのかと思いきや、それは違うと気づかされたのは大人になってつい最近のことである。


自分の頭の世界をまず認識して
形として捉えて
言葉で具現化して
それを外界に公開することを許す。

私は文章でそれを表現することにした。

ネットの海に無造作に投げこんで
自分以外の他者に初めて存在を知られたような気がした。

どことない羞恥心と共に誰かの視界に侵入できたかもしれない高揚感に襲われる。

頭を駆け巡っては消えていくだけだった無数の空想たちに私は初めて価値を見出した
数秒先に忘れ去られて行くはずだった数々が文字となって痕跡になっていく現象を目の当たりにした。

痕跡を作ったのは自分のはずなのに、後から読み返してみるとまるで別人のようだ。
あくの強さは紛れもない私のものでしかないが…

次々と生まれる発想は瞬く間に手から零れ落ちる。

書いたとて忘れてしまう事は避けられないのだと悟った。
だから猶更文字にして残しておかなくてはならないと強く決意した。



空想に思いをはせる。

日常の些細を考察する、仮説を立てて誰かの感情に入り込む。
五感から過去に鑑賞してみる。

リアルと思考のはざまを表現する。


最初はたったそれだけで楽しかった。

頭の中の世界に語り掛けて
いつの間にか涙を流して、
没頭する時間に無限の可能性を感じられたから…。



楽しかった。
楽しかったはずなのに。





いつしか私は。見られることを意識するようになった。


文字が投げ込まれた先でぶつかって、私の表現とは違う「誰かの感情」を含んでこちら側に返ってくるのではないか、
返ってきたものがマイナスのものであったらどうしよう。


途端に怖くなった。

私の文字が誰かとつながる可能性を秘めたものへと変化を遂げた。


得体のしれない恐怖は、脳からの直接の表現と否定し始めた。

これでは相手には届かない、
きっと理解されないだろう、
何を言いたいのか伝わらないのでは意味がない。


拒絶と引き換えに私が求めたのは誰かの興味に縋りつくような、手の内を噛み砕いて説明するだけの退屈な文字の羅列。


書いては消しての繰り返しに時間と体力を無題に消耗していくだけだった。

当然以前のような達成感は皆無で
やりがいのなさに気が狂いそうになった。


文字が呼吸をやめていく。
読み返して手を入れていくごとに枯れていく。


がむしゃらにおびえ切って、砂漠になった頭から私は抜け出せなくなった。





私が表現するものは何も生み出さない。


そう絶望していていたはずなのに。
もうやめようか、何度も思ったのに。


文字に表現を絶やさなかったのはどうしてだろうか?

不毛な土地に種を撒き続けること、無意味なようで無意味じゃない…
そんな気がしたからとしか言いようがなかった。


痕跡を残し続けろ。

脳の直接のエネルギーが誓わせていたように思う。
きっと今が踏ん張りどころなのだろう。


結局枯れたように見えていた文字たちは
ただ深くに潜って息を止めていただけに過ぎなかった。
私がさまよっていたのは砂漠の大地というよりは深海だったのだ。

水圧で長いこと頭蓋から出てこれず閉じ込められていた言葉たちは
水面に浮上するや否や一気に放出された。


ありのままを表現してみることを許し始めた。
してもいいように感じられたから。

たった数か月の”スランプ”に過ぎなかったのに表現の自由さにどこか懐かしさすら覚えた。


文字が息をしている!おかえりなさい!




思いついたままにただ発想を文字にすればいい、そして文字として息吹く様を見届ければいいのだ。

まるで脳からせかされているようだった。言葉が頭の外から飛び出したがっている!
初々しさの衣を再びまとって、待ちきれんばかりに私に呼び掛けている。



私の言葉が認められなかろうが理解されなかろうがそんなことを考えるのは二の次で(上級者だから成しえる技なのだから)

ただ思考の波を駆け巡って、それに酔いしれて
その作業が尊い結晶となって

文字になる。


意のままに言葉にできて
初めて人の心の届くのだ。

届いた先、反響を呼んで導きをもたらせるかは私の心の折れなさにかかっている。


表現で魅せる手腕が試されている…向こう側に待つ誰かに。
今はそんなうれしい予感さえしている。


成し遂げようとする努力はきっとこれからも私を支え励ましてくれる。

忘れ去られることのない軌跡、未来への礎。至高の思考。


私にとって人生を構成する一つの幸せになっていく。


黙っていても時間は過ぎる、なら猶更黙っちゃいられない!



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