ゼロからProduct Design〜人生初めてのプロダクトデザイン授業〜
こんにちは、こんばんは!Eddieです。
同級生のShinと現在、米国のシカゴにあるイリノイ工科大デザイン修士学科 / Illinois Institute of Technology Institute of Design (IIT ID)に留学中です。
両者共にFoundation+Master of Design(Foundation+MDes)プログラムに在籍しております。また、私EddieはMBAとのDual Degreeプログラムなので実質Foundation+MDes+MBAというプログラムになります。
Foundationとは
自己紹介記事にも書きましたが、「純ドメ / 総合大学卒業 / 仕事でのデザイン経験なし」の我々は最初にFoundationというデザインの基礎を学ぶコースに入ります。全部で5つのデザイン授業を取った中で、第1回としてPhotographyの授業、第2回としてVisual Communicationの授業についての記事を先日投稿致しました。
今回は金曜日の9:00 - 17:00に受けていたProduct Designの授業についてお話しします。
Product Designの授業とは
Product Designの授業の目的は一言で言うと
"今ここにない3DのSolutionを提案し、相手からbuy-in(納得感のある同意)をとることができるような基礎的なスキルと知識を獲得する事"になるかと思います。
2D, 3D, 4D(digital)関係なく、デザイナーはDouble Diamondのようなデザインプロセスを経てSolution提案をしていきますが、IIT ID FoundationのProduct Designクラスでは特に3Dデザインに関する下図の"Develop Test"と"Deliver Listenに"あたる後半部分=Design Things Rightを最大化するスキルと知識獲得を目指していきます。
教授はIDEO出身のMartin Thaler教授。人柄もよく、人徳もあり、趣味のアコーディオンを授業中に披露してくれるお茶目な面も持ち合わせたIIT IDの名物教授で、Martyと呼ばれています。
授業の構成
大体3-4週間周期で大きなtopicが設定されており、それに沿って毎週進捗確認のような課題を提出→全員でcritiqueという流れになっています。
IT IDは1学期14週間なので大きく4つのトピックがありました。
① 自分のアイデアを他者に伝える下準備
-Sketch & Foam Core & 3D Modeling Boot Camp-
② 自分のアイデアを形に -自分用のFile Folder作成-
③ 360度から物をみる視点を養う-Line Plane Volume-
④ Problem Solving提案 -Office Furniture作成-
それぞれ説明していきたと思います。
① 自分のアイデアを他者に伝える下準備
-Sketch & Foam Core & 3D Modeling Boot Camp-
Double Diamondの"Develop Test"の段階でPotential Solutions(様々な解決アイデア)を考えていくにあたり、"いかにクイックに自分の案の簡易プロトタイプを作って、feedbackをもらって、改善案をまたすぐ簡易プロトタイプにしていくか"がすごく大切になってきます。
いきなり最終形に近いプロトタイプとか作り始めちゃうとすごく時間もコストもかかりますし、改善点が見つかったとしてもすぐに修正できないですよね。
しかし、頭の中で考えているだけではそのアイデアに対してfeedbackをしてくれる人もいなければ、buy-inしてくれる人もいないです。
そこで、自分で描いたSketchやFoam Core、3D Modelingができるソフトウェアを使った簡易プロトタイプを使って自分の考えたアイデアを低コストで短時間で共有してfeedbackをもらって、それをまた改善してクイックにprototypeを作って、、、、と言うサイクルができるようになるための基礎を学ぶ必要があります。
Sketch
UX/UIデザインに詳しい方は違うSketchを思い浮かべてしまうかもしれませんが下絵、素描の意味のSketchです。
Rapid Vizという教科書を使って課題をこなしていきます。最初のうちは「なるべく真っ直ぐに直線を引く練習」とかですが、そのうち「2 Point Perspective Boxesを書いて、屋根をつけて、家を書きなさい」のような複雑な課題になっていきます。全て手書きなので結構しんどかったです、、、笑
Foam Core
Foam Coreはよく写真の展示のキャプション部分とかに使われている素材で、スポンジがツルツルの紙で両面を挟まれている物です。
こちらの記事がわかりやすいですが、Foam Coreは軽くて強度も高く、カッター、鉛筆、定規といった簡単なツールがあれば、切ったり折ったり組み立てたりが比較的容易にできます。
「Cut 4 strips of foam core that are 3” x 15” make clean cuts with perpendicular edges」(切断面が垂直な3inch×15inchのフォームコアを4つ作りなさい)
「Make a cube that is 3” x 3” x 3” with no visible foam core edges」(フォームコアの断面が見えない一辺が3inchの立方体を作りなさい)
みたいな課題がでます。
簡単そうに見えますが、真っ直ぐ切ったり円形に切ったりするのには結構コツが入り、よく夜中まで学校に籠もってクラスメイトと練習したりしていました。
3D Modeling
3D modelを作成する3次元CADソフトウェアはRhinoやTinkerCADなど様々ありますが、私たちはFusion 360というソフトの使い方を学びました。
Fuson 360は正直少ししか学んでいないのでこの授業だけで3D Modelingをマスターできるかといえばそうではないですが、どのようなことができるのかなど授業を通して学ぶ事ができます。
自分が思い描いた物を3Dにできるのはすごく楽しいですし、renderingをきちんとすると相当しっかりとしたvisualを作ることができるので、まだこの世にはない自分の考えた商品のKey Visual作成をする事もできます。
例えば、下図はFoundationのProduct Designの授業ではありませんが、私がFusion 360を使用して作成した夜にも使えるピクニックボックスの案です。グラスに反射するライトなど全てレンダリングで勝手にやってくれるのですが、結構リアリティがありますよね。
② 自分のアイデアを形に -自分用のFile Folder作成-
①と並行して実際にProduct Designも行っていきます。
与えられた課題は「自分が使いたいと思うようなFile Folderを作りなさい」というもの。
大まかな流れは
-Double Diamondに沿って"Discover(問題点の洗い出し)"と"Problem Defining(問題の選択と集中)"を行う
-Sketchで案を5つくらい考え、クラスのFeedbackを元に決定。
-Foam CoreでPrototypeを作成
-クラスのFeedbackを元にreviseし、再度Prototypeを作成
-クラスで最終作品のpitch
でした。
実際にPitchをして、Advisorの現役デザインコンサルタントにFeedbackをもらっているシーン↓
③ 360度から物をみる視点を養う
-Line Plane Volume(LPV)-
続いては少しDesignというよりArtに近い話になりますが、Aesthetics(美)について学びました。機能性も大事ですが、商品を買う時にやっぱり見た目も大事ですよね。
LVPという課題では
Line: 18inch - 24 inchの長さで太さが0.5inch以下の棒
Plane: 100平方inch以下の面積の平面(板=Foam core)
Volume: 125立方inch以下の立体(Foam core)
のみを使用し、360度の視点でcomposition(構図), scale(規模感), proportion(比率)を考えて作品を作りなさい
というものが出されました。Golden Ratio(黄金比= 1 : 1.618…)なども含まれます。
LPV作品発表会の様子。みんな正装をしてOscar像(勿論ニセモノ)も用意して少しお祭りっぽくなっています↓
④ Problem Solving提案 -Office Furniture作成-
"Design an office furniture product that fits the needs of work styles in the office today. (今日におけるオフィスワークスタイルのニーズを満たすオフィス家具をデザインしなさい)"
最終課題はオフィス用家具です。
あくまでコンセプト作成とコンセプトを表現するプロトタイプの作成までになりますが、これまで学んできた事の集大成として
- Double Diamondに沿ってProbelm Definingの作成
- SketchやFoam coreを使ったプロトタイプによるアイデアシェア
- 360度の美しさにも気を使ったプロダクトの作成
- Storytellingなプレゼン資料の作成
- 最終Design Pitch
を行っていきます。
最初のステップとして、クラス全員でOffice Furnitureの老舗であるSteelcaseのshowroomを訪れ、社員さんに現在のオフィス環境に対するニーズやワークスタイルのトレンドについて話を伺い、様々なソリューションを体験してきました。
そして、あとはDouble Diamondのプロセスに沿ってProblem Definingをしたあと、ひたすらSketchやプロトタイプ作成を行い、feedbackをもらい、Solutionを考えていきます。
最終的には以下のようなプレゼン資料が出来上がりました。
最後に
"Don't try to make or invent something new. The important thing is whether the product is solving the users' problem or not. (新しいものを作ろうとしないで。大切な事はそのプロダクトがユーザーの問題を解決しているかどうかだから)"
ちょっと一言一句あっているか定かではないのですが、IDEOで働いていた経験のあるMartyに"常にクライアントからCreativeである事やInnovativeである事を期待されるのは辛くないのか?"と質問した時の返答の一部として言われた印象に残っている言葉です。
問題解決をしようとした上で、結果として新しいものができるのであって「これと同じような事他でやっているよなぁ、、、」「大体自分が思いつく事は世界で誰かがやっているんだよなぁ、、、」と落ち込むのではなく、既にあるアイデアをどのように改善したらよりターゲットユーザーの抱える問題を解決し、魅力的なものになるのかを考える事が大切だというメッセージでした。
私はデザインのバックグラウンドもなく、絵もうまくはなく、”クリエイティブな人間か”と聞かれたら”はい”と答えられる自信はいまだにありません。しかし、たった一学期ではありますが、自分なりにProblem Definingをして、アイデアを他者と共有して具体的なfeedbackをもらい、改善を重ね、よりユーザーに魅力的だと感じてもらえるようなプロダクトを考える力は身についたのかなと思います。
ご意見ご質問等ございましたら、「クリエイターへのお問い合わせ」で気軽にお問い合わせください。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?