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拡大するキャビア市場に我が国が躍り出る日

中国でキャビアの生産量シェアが急増している旨報道されている。
中国では2003年ごろからチョウザメの養殖が開始され、現在では世界のチョウザメ養殖場の半分以上、キャビア生産量の30パーセント以上を同国が占めている(参考)。

(図表:キャビア)

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(出典:Wikipedia)

キャビアはカスピ海に面したロシアが主な産地として知られ、フォアグラ、トリュフとともに世界三大珍味に数えられてきた。
しかしソ連崩壊後のロシアではキャビアの親であるチョウザメの管理体制が崩壊して闇市場での流通が激増したことにより絶滅の危機に瀕したため去る2006年にワシントン条約によりカスピ海産キャビアの国際取引が当面禁止されることとなった。これによりキャビアの値段は高騰し、養殖キャビアの生産も世界各地で行われることとなった。

(図表:カルーガ(チョウザメの一種))

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(出典:Wikipedia)

こうした中キャビア市場で躍進しているのが中国産キャビアなのであるが、実は日本でもチョウザメの養殖及びキャビアの生産は行われている。


国内におけるキャビア生産の動きとしては北海道美深町(美深キャビア)、茨城県つくば市(下町キャビア)、岐阜県高山市(奥飛騨キャビア)、和歌山県新宮市(近代キャビア)、香川県東かがわ市(生キャビア)、高知県高知市(よさこいキャビア)、岡山県新見市(新見産フレッシュキャビア)、島根県邑南町(ベステルキャビア、アムールキャビア)、広島県広島市(生キャビア)、宮崎県(宮崎キャビア1983)などがある(参考)。

養殖技術の進歩も目覚ましい。例えば「美深キャビア」(北海道美深町)は、同町が1983年からチョウザメの養殖に取り組み1993年に初めて採卵に成功したものの産量が少なく、今年(2021年)1月22日に初めて商品化された(参考)。
一方宮崎県では北海道美深町と同じ1983年にチョウザメ養殖を始め、2004年に国内初の完全養殖に成功した後、去る2013年には「宮崎キャビア1983」として販売を始めた。既に海外への輸出も始まっている。「日本産キャビア」は養殖キャビアシェアで世界一を占める中国勢にも輸出されその品質が評価されており、同県では輸出に向け品質の良い「日本産キャビア」として国内の他の産地との連携の動きも進められている(参考)。

アメリカではキャビアの消費が増加しており、去る2019年11月までの1年間でキャビアの輸入額も16億9000万米ドルと前年に比べ3.5パーセント以上増加している。
「日本産キャビア」は拡大するキャビア市場に進出していくこととなるのか、引き続き注視していきたい。

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)
元キャリア外交官である原田武夫が2007年に設立登記(本社:東京・丸の内)。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)と地政学リスクの分析をベースとした予測分析シナリオを定量分析と定性分析による独自の手法で作成・公表している。それに基づく調査分析レポートはトムソン・ロイターで配信され、国内外の有力機関投資家等から定評を得ている。「パックス・ジャポニカ」の実現を掲げた独立系シンクタンクとしての活動の他、国内外有力企業に対する経営コンサルティングや社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。

グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー
佐藤 奈桜 記す