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味の薄いカップ焼きそば
あれは小学4年の夏、先輩と家の近くの海に行った時だった。
泳ぎ疲れてお昼を食べることになり、海近くの商店に立ち寄った。
パンやインスタントラーメン、お菓子などを置いている商店でみんな各々お昼を選ぶ中、僕は買うものを決めていたのですぐにレジに向かう。
「ペヤングソース焼きそば」である。
レジで会計を済まし店をあとにする。
心躍りながら会計待ちをしている先輩を待つ。
心躍る理由は至ってシンプル、
「ペヤングソース焼きそば」を食べたことがなかったからだ。
TVでCMが流れていたが、家でカップ焼きそばを食べることはなかった。
焼きそばが食べたいというと母親が袋麺の焼きそばをちゃちゃっと作ってくれる。
その焼きそばも好きだったが、僕はなぜかカップ焼きそばが魅力的に見えて仕方がなかった。
待っていると先輩が会計を終え、店から出てきてご飯を食べる場所まで少し移動する。
海の見える堤防に座って僕はひたすら湯切りのタイミングを待つ。
その待ち時間はこれまでの時間の経過とは比べものにならないくらい長く、心がソワソワした。
時間になり、湯を切り、食べる準備はOK。
待ちに待ったペヤングソース焼きそばを口に運んだ。
「味が薄い……」
味が薄く、ソースの味がほとんどしなかった。
僕があれほど渇望していたものはこんな味だったのかと小さな絶望を覚えた。
隣でカップラーメンを食べていた先輩に質問した。
「これって思ってたより、美味しくないですね。」
先輩は少し驚いてた。
その反応を見て、自分の舌が周りと違うのか?
とさえ思って、そこでも小さく絶望してしまった。
そんな小さな絶望を感じた直後に先輩がこう続けた。
「ちゃんと書いてある通りに作ったのか?」
バカにするな、小学4年生だぞ。
ひらがなはもちろん、漢字も読める!
と言いたかったが、グッと堪えて調理方法を思い出した。
そこから答えに辿り着くまでは一瞬だった。
ソースを入れるタイミングが間違っていたのだ。
カップラーメンの感覚ですべてのかやくと調味料を容器に入れ、お湯を入れてしまっていた。
湯を捨てるときに美味しいはずだったソース味も一緒に捨てていた。
そして残った、ほのかに香るソースの匂いのついた麺を食べていたのである。
あのとても美味しいとは言えない味の薄いペヤングソース焼きそばを食べてから15年。
未だにペヤングソース焼きそばを食べるときには懐かしさと恥ずかしさを感じる。
書いていたらお腹が空いてきた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
また、読んでくれたら嬉しいです。