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10円レコードと非力アンプなのですが⁈
以前にも書いたが、車で小一時間ほど走ったところにある、若者が好むジャンル(ジジイにはそのジャンルがわからない)のレコードを売る店に、その店にはそぐわない格好の白髪ジジイは、勇気を出して入店し、お店のターゲットから外れたクラシックなどの売れないレコードを10円で買い集めてきた。
作成途中の60年代風ステレオセットに、その買ってきた10円レコードを載せて聴いてみる。
このステレオセットのスピーカーユニットは、Q0が1以上もありバスレフや、密閉でも設計が難しそうで、ましてやバックロードなんて論外のフルレンジなので、平面バッフル型というのだろうか?箱の後ろをほぼ開放にしたボックスとしている。アンプの非力を補うべく、92dBで安価という事で選んだスピーカーユニットである。
部屋は8畳ほどのロフトで、非力アンプのボリュームもMAXで、1.5m先の私の耳元には丁度良いほどの音量である。爆音で聴くなんてことは思いも及ばないシステムである。
そんな状況で、170円の投資で16枚(10円の袋代)購入したレコードの中からおもむろに一枚をかけ始めた。
すると、これが意外に心地よいのである。全く期待していなかったのだが、意外や意外で、結構スッキリとした音で、ラロとサン・サーンスの曲で、グリュミオーのバイオリンの音色が丁度良い音量で耳元に届く。そして、オーケストラのバックが程よく部屋の背後に広がってくれる。決してパワーがある音では無いのだが、とてもクリアでそれぞれの音もハッキリ聴こえて、これは有りだなぁなんて思いながら聴いている。
10人集めてレコード演奏会を開くわけでも無いので、8畳ロフトで一人このステレオセットの前で聴くには、十分であることがわかった。
この非力なステレオセットでは、昔のフォークソングやイージーリスニングを気軽に聴くのに丁度いい具合程度に思っていたのだが、クラシックのレコードでも十分に堪能することができる。
いや、かえってこの音量、パワーだから交響曲でも聞き疲れることもなく、ずっとかけていても心地が良い。今までの音楽の聴き方を根本的に覆し、肩肘張らずに自然な感覚で音を鳴らすことができる良いシステムに意外な成果を感じている。
オーディオの世界では、コンサートホールのS席など一番良い席で聴いている状況を再現することを目指すべきなのかもしれないが、このステレオセットでは、劇場の最安値の席である、天井桟敷に陣取り、少し遠めに舞台を望み、気軽に好きなだけ聴くことができるようなそんな気分にさせてくれるようである。