正月寄席 in 末廣亭
もう3月も終わりか・・・ということはこれを見に行ったのはもう2か月以上も前! 末廣亭(すえひろてい)の正月の中席(中旬)に行ってきた時の記録です。
落語にわかファン。絶賛勉強中です!
▼正月の寄席
末廣亭は、落語・色物定席です(常設の寄席小屋。色物:落語と講談以外の手品とか漫才とか)。
昨年の初めての緊急事態宣言時、末広亭は休業となった。
年末以外は年中無休で毎日開いているのが当たり前だったのに。
今回の緊急事態宣言中は、終演を1時間早めて20時とし、感染対策もバッチリ。
検温・アルコール消毒はもちろん、常時窓を開けて換気しています(だから寒いです!)。
演者以外はマスク必須。
掛け声(歌舞伎じゃないのでさすがに「〇〇屋ァ!」みたいな声を掛ける人はあんまりいないけど)もお控えくださいとのこと。飲食も×。
仲入り(休憩)中には、スタッフさんが必死にいろんなところをアルコールで拭いてくれる。
私は東京に来てからこっち、毎年お正月に落語を聞くのが習慣だった。
毎年、正月(寄席では1月中は正月・笑)は、いつもかき入れ時で熱気ムンムンである。
末廣亭は1階・2階とあって、たぶん満席だったら300人くらいは入ると思う。
しかし、この日、2階は閉じており、1階は席を1席ずつ間引き、そのがらーんとした広い小屋に、お客さんが、ぱら・・・ぱらと・・・20人くらい。
泣きそうになった。
せっかく出てくれる師匠方に申し訳ないような気持ちになった(お一人ずつの独演会だったらチケット取れないような人も、ここに来れば会えるので)。
師匠方も客席を見てちょっとショックそうなかんじだったのかもしれない。
末廣亭のお客さんは普段90%がシニア男性(主観ですが・笑)。リスクが一番高い層だから、来たくても来れないんだろう。
そのかわりなのか、この日は意外と若い人が多かった。
▼感想
※寄席では、直前まで自分のやる話(演目)は決まっていない。前の人とかぶらないように、お客さんの空気を見て持ちネタから話を選ぶそうだ。だからトリ(最後)の人は大変・・・。
(ホールでやる時は、あらかじめ演目が決まっていてそれでチケット売ってる時もあるみたいです)
私は途中から入ったのですが、この日は、
・勘定板
…雲助師匠の田舎言葉、好きだなあ。
・黄金(きん)の大黒
…権太楼師匠、超かわいい(失礼)
・長短
…さん喬師匠のこの話聞くの2回目だと思うんだが、
ほんっとに面白いのよ・・・。じりじりする(笑)
私、こうやって何気なくタイトル書いていますが、別にタイトルが横に字幕で出るわけもなく、聞いた話の内容を後でネット検索しまくって「これはそういう名前なのか」と1つずつ確認しております。
・紙切り
…お客さんからお題をもらって、一枚の紙をその場で即興で切ってくれる。
こればっかりはナマで見てほしい! これが「芸」だ!
私が行く時は(なぜか)二楽さんが切ってくれることが多いのだが、今日はお父さま(正楽師匠)でした。
切ってる時の語りが、二楽さんはややポップなのだが、正楽師匠はさすがの円熟(笑) ちなみにもう一人の息子さんは落語家(桂小南)。
二楽さんと小南さんは兄弟だけど全然似てない。芸の雰囲気も全ッ然似てない。面白いご家族です。(大きなお世話だよ!)
・寿獅子(太神楽)
…笛と太鼓とほんまもんの獅子舞。正月ならでは。
この日はご家族だったのかな…顔立ちがなんとなく似てました。違ってたらすいません。。。
太神楽(だいかぐら)は、日本伝統の大道芸というのか、普通の日には和風のジャグリング(うまく言えない…)とかもやってくれます。
今は養成所に入って習う若者も多いそうです(年始のタモリ倶楽部でやってた)。
などなどなど、他に漫才や手品もありました! いろいろ見れてお得ですねー(笑)
この日は16:30~20:00までで、3500円でした(入場はいつからでも自由)。
▼大トリ(主任)は柳亭市馬師匠!
「三十石」という、舟歌を歌うシーンの入った落語をやってくださいました。
師匠は美声で有名。普段の声も、のびやかで明るくていいお声なのだが、(昔の)歌もめっちゃうまい・・・(しみじみ)。
いや歌自体は、船頭さんの歌う大衆的な歌で、
なんということのない歌詞なのだが、
その歌が、もう信じられないくらいの美声で、
聞いてるだけで江戸時代(?)にタイムスリップしたような気分になり、「ありがたや~」と思ったのだった。
この話は、江戸言葉と上方言葉、商人言葉に船頭さんの言葉などの使い分けがあるのだが(昔は地域と階級によって言葉遣いが全く違っていたので)それも趣深いぜ。いとをかし。
「神様仏様~~~」拝みたかった(笑)
市馬師匠って、なんでこんな上手なのですか!!!
(※注:落語協会会長)
市馬師匠は今年、年男とのこと。
じゃ、あと20年くらいは全然できるじゃん・・・
(※注:落語家に定年はない)
まだうまくなるのですか・・・すごすぎる~~~~!!!
▼現代とのギャップ
ただ、最近どうーーーーーーーしても気になるのが、
落語の古典は、昔に作られた話なので、今聞くとポリコレ的・ジェンダー的にアウトな話も多い・・・。
これは「お笑い」の永遠のテーマなんだと思うんだけど。
夫が女房をぶったりする。今だとDV。
亭主関白当たり前(だからこそ、落語では女房の方が頭が良かったりしっかり者だったりして、そこが面白い)。ジェンダー問題。
子どもも、躾と称してぶたれたりする。体罰は法律で禁止された。
「おしの鯉」という話もあって、私も楽しく聞いたのだが、後でネット見てたら「おし(口のきけない人)」という言葉は、日本語としてはあるのだが、今は公共の電波では流せない言葉で、だからラジオとかでは流せないということが書かれていた。
口のきけない人のフリをして、お役人にお目こぼししてもらおうとするシーンがこの話のメインだしな・・・。
「生兵法(なまびょうほう)」という話もあって、これが・・・最後が(なぜか)ネズミを(意味なく)殺してしまうことになるという、凄絶な動物虐待・・・。
いや、昔はそれが面白かったんだと思うんだけど!
もちろん落語なので実際にネズミを殺したりはしません。
そういうフィクションの話をしているだけである。
でも私は全然笑えなかった・・・。心なしか客席もさーーっと引いていくような気がした。
もちろん個々の話に罪はなく(昔に作られた話なので)、それを話した師匠方は、プロ中のプロである。
ただ・・・本当にお笑いの難しいところで、昔は笑いになったことが今は笑えないこともある。
▼落語では、本編に入る前に「枕」といって、前説みたいなことを自分でやる。
(ラジオでいうとタイトルコール前のオープニングトークみたいな感じ。これが本編のテーマにうまくかかっていって、本編が始まる。だから落語通は、枕を聞くだけで何の話をするか分かるらしい)
前に行った時、その枕で、今でいうとLGBTQみたいなことをネタにしている時があった。(今は男だか女だかよくわかんない人もいるでしょ、みたいなノリ)
・・・いやあ・・・笑いづらかった。
▼もうちょっと続けます
私は、言葉狩りをしろとか、昔の小説であっても障害者を不適切に描いている部分は削除しろとか、そういうことは言っていません。
昔、太宰の『走れ、メロス』という小説の中で、ある言葉が、今は使ってはいけない言葉だからということで教科書に載る時に削られる、なんていうことが起きたこともあったらしいけど・・・。
(私が学生だった頃、「自主規制」という問題で出版業界がものすごく揺れた時期があった)
そういうことには基本的に反対だ。
もちろん当事者の方々の「イヤだ」という思いにも配慮はしないといけない。
でも、時代性、「そういう言葉があったんだ」という記録という意味も含めて、作品の改変には相当に慎重にならないといけないと思う。
ただ・・・笑うのが難しくなってますよ、というところを、落語界はどう認識してらっしゃるのかなとは、ちょっと気になる。
重鎮の師匠方は当然中高年の方が多く(芸歴が長いのだから当たり前ですが)、客も(日によるけど)だいたい9割が中高年(そしてその7~8割が男性)である。
「男性だから差別に対する意識が低い」と断じるつもりはないものの(それも差別だから)、差別を認識しにくい立ち位置にはいると思う。
私も、ジェンダーや「正義」をふりかざすつもりはないのだが、ただ、笑いづらいと思ってしまうのも事実である。
難しい・・・。全部安全な言葉にしたらいいのかというと、そういうことでもないしな。
▼コロナと笑い
師匠たちもさすがにこのコロナ禍にお疲れなのか、「去年はコロナでひどい年でしたなあ」と話題にしていた方もいらしたのだが、すいません、コロナの話、もういいんですm(__)m これも難しいですね。
時局を取り入れて笑いに変える方もあるし、触れないで世界観を守る方もいるし。
まあでも寄席は次から次へといろんな人が聞けるので、その中で、推しメンをどんどん見つけるのが楽しい。
▼私の推しメン師匠
私の永遠の推しメン、柳家喬太郎師匠、登場。
古典も新作もめちゃくちゃ面白い。
お声が素敵。
「トッポ・ジージョ」みたいなキュートなお顔に、福々しいおなかがトレードマーク。
喬太郎師匠は、時局をバリバリに取り入れて、演技派(落語に演技派っておかしいけど、師匠は特に演劇的)の持ち味を存分に活かした、小噺を披露してくださった。
でもね!!!!
私は、喬太郎師匠の落語が聞きたかったです!!!!!!
小噺もむっちゃ面白いけど!!!!! 時短の影響ですよね???!!!
緊急事態宣言で上演時間が30分短くなってしまったので、持ち時間をみなさんでちょっとずつ詰めてくれている・・・。
ちきしょー、コロナめ!!!!!!
喬太郎師匠を聞くために、また通うことを決意した夜でした。
早く安心して寄席に行き、屈託なく大声で笑える日が来ますように。
末廣亭
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