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マーケティングは偉くない

プロフィールにもちらっと書いていますが、とある小売業で品揃えを担当しています。いわゆるバイヤー業務です。
販売動向から商品選定に活かすみたいなことはずっとやっているのですが、果たしてこれは“マーケティング”と呼んで良いのでしょうか。
なんだか巷で言われる“マーケティング”は電○とか博○堂とか佐藤可○和とか…広告・宣伝、WEB関係のどちらかといえば「どうやって売るか」の手法の部分にフォーカスされている内容が多くて、古くからあるPOSデータ分析からのPDCAは“マーケティング”って言っていいのかな…と思ってました。
と言うことでまずは言葉の意味を調べてみました。

マーケティング(英: marketing)とは、企業などの組織が行うあらゆる活動のうち、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにする」ための概念である。また顧客のニーズを解明し、顧客価値を生み出すための経営哲学、戦略、仕組み、プロセスを指す。
                            -Wikipedia

こうみると”マーケティング”というのは非常に広い意味の言葉で、我々のような小売業の人間は、バックオフィスでもなければほぼほぼ”マーケター”なんじゃないかとすら思えます。
ともかくぼくの仕事も立派な“マーケティング”なようです。また、バイヤー業務の前に担当していたオリジナル商品の企画開発業務も、これまた”マーケティング”。
そうなると、かれこれもう5年は“マーケティング”に携わっている経験豊富な”マーケター”と名乗っても良さそうなので、とりあえず登録をしている転職エージェントのプロフィールは堂々と”マーケター”に書き換えておこうと思います。
そんなこんなで無事“マーケター”認定をいただきましたので、今回はそんなぼくのいま感じている“マーケティング”理論を記しておきたいと思います。

マーケティングは手段のひとつ

はい、よくある手段と目的の話です。
上述したようにマーケティングは非常に広義です。しかし、その目的は割とシンプルで『売上の最大化』なのではないかと思います。
ぼく自身が行うPOS分析や昨今のマーケティングの代表格であるSNSマーケティング、PB商品ブランド開発…といろいろありますが、全ては『売上を最大化』するために行うことです。
ただ、この『売上の最大化』という目的には時間軸もあり、今月の『売上の最大化』が目的の場合もあれば、今年度の『売上の最大化』の場合や10年後を見据えた『売上の最大化』の場合もあり、それが”現在、同時に行われている”ため、やっているうちに目的を見失ってしまいがち。その結果、やたら凝った品揃えやとにかくキラキラとしたSNS発信、不要な機能のついた商品…などは結構世の中に溢れているようにも感じます。
さらに言えば、ぼくはマーケティング活動というのは相手に納得感を持ってもらうための道具と捉えており、顧客に購入してもらうときも、社内で決裁をもらうときも、協力会社に商品を作ってもらうときも、相手に納得感を与えるためうまく使うべきものだと思っています。
過去の販売動向や世の中のトレンド、顧客ターゲットなどを売りたい商品やサービスの側面にあわせて理屈づけていくことで、自分の考えがチームの考えになり、会社の考えになって、顧客に届くという流れ。
マーケティングというと大げさですが、こうやって改めて考えてみると仕事のやり方、考え方というさらに大きな定義に近いようにも思えてきました。

妄想力が9割

よくある「〇〇が9割」に乗っかってみました。
正直9割なのかはよくわからないですが、マーケティングを行うにあたっては妄想というか想像することが非常に大事なように感じます。
ぼくは子供の頃から頭の中で妄想することが結構好きというか日常的に妄想していて、布団に入って眠るまでの時間なんかにはサッカー選手になりきって、「背番号は12番の右サイドハーフでベッカム並みの精度のセンタリングをあげて…」と結構具体的な妄想をしていたりしました。そんな子供の頃からの自己研鑽(?)の蓄積があったからか、この妄想力はという能力は自分自身でも結構高いのではないかと思っています。
小売業でいうと、顧客が商品を購入する際の心理や行動、それに至った背景などをなるべく具体的に妄想・想像することで、数字の羅列でしかないPOSデータを読み解いていくからこそ、自分なりの気づきや現状の課題、そこから見える解決策に繋がるものと思っています。
そして、その妄想・想像から生まれた自分なりの見解をチーム内や社内、時には協力会社にも話すことで形にしていきます。
できることならいろんな人に同じ妄想・想像を含めた見解を話していくことで、自分自身の考えがより深まっていくと共に、その妄想・想像がきっかけで他の人の妄想・想像が加わり、どんどん顧客の購買行動の解像度が上がっていくように見えてくるはずです。
答えのない、マーケティングというものだからこそたたき台となる妄想・想像をいろんな視点からたたいて強くしていくというイメージでしょうか。

現場を見ずにマーケティングを語るな

“生殺与奪の権を他人に握らさせるな!”という鬼滅の刃、名フレーズを彷彿とさせる口調となってしまいました…。
マーケターにありがちな話かもしれませんが、机上の空論になりがちで分析を行って打った策が現場に大きな負担がかかったり、実際にやろうとすると実施ができなかったりということもあります。
また、この妄想・想像と現場の感覚にズレがあるときは大体的はずれな分析になっていることが多いようにも感じます。
マーケティング分析を行っていると、ついついデータにばかり目が言ってしまい頭でっかちになりがちですが、現場の感覚というのは意外に重要で、長年業務に取り組んでいる経験やカンというのを軽視することなく、むしろその根拠としてのマーケティング分析となることで、顧客の行動が見えてくるものと思います。
逆に、現場の感覚とズレてなかったり、現場も気づいていなかったけれども「言われてみれば、そうかも…」となれば、かなり見込みアリ!なのではないかと思います。
”失敗の本質”という書籍でも、第二次世界大戦下の上層部と現場の大きな感覚の乖離が、敗戦の大きな要因のひとつになったと記されているようです。(書評動画で学んだ知識なので、内容薄めです。)

過去の問題解決がイノベーションへの一歩

これをマーケティングというと大げさですが、過去の実績や世の中にある様々な先人の経験などで表面化した課題、問題点を解決することがマーケティングであり、イノベーションへの第一歩になると考えます。
ぼく自身、少し前まではイノベーティブなもの、過去にない新しい商品やサービスは過去の販売データなどよりも、もっと他の市場全体のデータから導き出すもの…と考えていました。勿論、市場のデータなどは必要ではありますが、ただ漠然と目的もなく市場データを分析し始めてもなかなかうまくいきません。
それよりも、現場や担当者の経験上の課題など感覚的なものの深掘りが重要で、どんな革新的なものも、はじめの一歩は些細な課題解決がきっかけだったりするものなのではないかと思います。
近年のイノベーションの代表格であるiPhoneも当初から携帯電話を作るつもりではなく、使い勝手のいいPCを作るという目的から最終的にiPhoneという形ができあがったのだとか。
その開発の背景にはたくさんの市場分析やアイデアがあったのだとは思いますが、あの子供でも使うことのできる直感的な使用感は分析だけでは生まれないものと思いますし、そこに携わる人たちの経験や感覚、ときには偶然などでも出来上がったものなのだと思います。

“マーケティング”とか“マーケター”とかいうとずいぶん大層な仕事をしているように感じてしまいますが、実際のところはデータをうまく使って現場や担当者の感覚的なものを補足して説得力をあげるためのもので、それって仕事の中では昔からあたりまえにされていることなんじゃないかな、と思います。
マーケティング=データ市場主義では全くなくて、意外と地道なところだったり経験を大切にしているということは、今回頭を整理する中で感じたことです。

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