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お知らせと付録(落ち穂拾い)
「岩崎弥太郎 長崎蕩遊録」掲載開始のお知らせ
岩崎弥太郎が丸山遊郭の罠にはまって行った過程を考察するために、日記から関連部分を抜き出して掲載を始めています(以下のリンク)。先月下旬「消された隅田川会談の逸話」の最後には「間もなく」始めると書いたのですが、まる一ヶ月、間ができてしまいました。そもそも弥太郎と遊郭についての考察自体、確かめるのもいやになるくらい前に予告していたのでした。
内容的には、本格的な考察のための準備なので、人名や妓楼の名は漏れの無いよう記録する一方、エピソードや解説などは省略する場合が多く、素っ気ない書きぶりになっていると思います。ただ、弥太郎、というより一人の「田舎」出の男が華やかな遊里に迷い込む有様は、素のままの日記より明瞭に見えると思います。また、意外に史料の少ない遊郭での客側からの記録という点でも大いに意義があると考えています。
落ち穂拾いをするわけ
原稿用紙を使わなくなって十数年経っていると思うのですが、今でも400字詰め原稿用紙換算が頭の中の基準になっていて、noteでは400字詰め4、5枚(1600字~2000字)を目安にしています。しかし、つい文章が長くなる悪癖も長く変わることがありません。実は、これでもアップ前に推敲して短くなるように努力しているのです。
なので、下書き段階のまま残されている原稿(部分)は結構あります。そういうものは自然に忘れてしまうのですが、隅田川会談の逸話とシュンペーター関連はなぜかうまく忘れられないでいます。気まぐれに、ではありますが、以下いくらか体裁を整えて「落ち穂拾い」をすることにしました(すでにアップした記事と重複があります)。あくまで「付録」です。
隅田川会談逸話の原典を求めて(付録1)
岩崎弥太郎をめぐる新書(2010年刊)を準備する過程で隅田川会談の逸話に出会い、この出典が不明だったので知りたくなりました。すぐに見つかるかと思ったら、意外にも捜索は難渋し……この辺り記憶があやふやなのですが、渋沢栄一『雨夜譚』岩波文庫版解説中の記述から、逸話の原典は『渋沢栄一伝記資料集成』中の「談話筆記」かもしれないと推測したのだったと思います。
当時勤めていた大学の蔵書検索で『伝記資料』が全て揃っていることが判明、所蔵されている図書館地下の一番深い階層に降りて行きました。最下層は来る人が少ないので、探したい場所に明かりを点けるところから始めます。廃棄予定らしい古い本や雑誌が床のあちこちに積み上げられた中、「談話筆記」を見つけ出し、その後、該当箇所にたどり着くのにも結構な時間を要しました。今なら、国会図書館デジタルコレクションであっさり見つけられるわけですが。
先日、片づけ事をしていたら、新書の準備中に「渋沢栄一記念財団 実業史研究センター」あてに、二人の会談が明治11年、13年のどちらなのか、史料に関して問い合わせた手紙の原稿が出て来ました。実際に出したと思うのですが、返事は見つかりません。私の新書の記述からすると、確定的な情報は返信からは得られなかったようです。
渋沢秀雄の果たした役割(付録2)
渋沢栄一の四男渋沢秀雄は、岩崎弥太郎にとっては現代に続く「風評被害」を作り出した張本人だと私は目しています。秀男は第二次世界大戦後GHQ(連合国軍総司令部)による公職追放を受けて実業界を退いた後、文筆家として盛んに活動していました。秀男が、父親と弥太郎の関係について、隅田川の川船で二人が会談したことを重要なトピックとして取り上げた結果、逸話は二人の対比がなされる度に取り上げられるようになりました。
この逸話が、元は栄一の息子が持ち出したものであることは、逸話が定着するのと反比例するように忘れられて行きました。そうでなければ、片方の子息の証言という一点だけでも、公平性の観点から真偽に疑問を持つ人もいたはずなのですが。渋沢栄一の思い出話以外の史料が一切ないことを秀雄は黙っていたのですから、少々罪深いのではないでしょうか?
言わない方が良い話? (付録3)
11月下旬以降、細かな用事やら心配事やらに気を取られ、落ち着かない日々を過ごしていたところ、図書館で借りたシュンペーター関連の本の返却日(12月初め)が記憶から飛んでいました。まあ、はっきり言って老化現象もあります(前はこんな失敗はしなかった、はず)
ところが、川崎、横浜の両市立図書館は寛大で、どちらも返却期限後なのに返却期限の延長手続きをすることができました。両市のネット経由の高配に感謝。おかげで先延ばししていたシュンペーターと岩崎弥太郎に関する一文を無事書き上げることができました。でも、この裏技(?)、公言してはいけないような気もします。両図書館には色々とすまないことです。