とある溜池工事からの救出プロジェクト
魚が…orz
大雨で崩壊していた高知県某所の古い溜め池が、「災害復旧」されることを察知したのは、2019年の終わり頃です。
魚なんて居なさそうに見えるものの、念のために調査してみると…
居るよorz
経験値から「これは救出しなければ殺られる!」ということは解るものの、工事でヤラレる範囲は未知数です。
救出プロジェクト始動
ここから凡そ二年間もの、人生を注いだ単独の救出プロジェクトが不可避となったのでしたorz
追い込み網
工事エリアは、常識的に考えて…
・堤の上流側は作業領域10m程度?
・堤の下流側は作業領域20mと作業道幅8m程度?
…と想定し、取り急ぎ追い込み網を作り、まず堤体直上に出来ていた本流の淵(見るからに魚多い)から下流側に魚を追い込むことにしました。
ウェーダーは持っていないので、サンダル履きで臨みました。
しかし、網の隙間があるためか、下流部まで着いた頃には殆どの魚が居なくなっていたし、堤の排水口部分にある大きなアンダー部分に逃げ込むため、何度やっても少数しか確保できません。
「これではダメだorz」ということで、川底の隙間を減らすべく錘を多くしたアプデ版の網でトライすると、まぁまぁ保護できるようになりました。
しかし、決定打には成りません。
しかも、チビドンが居る=ここで繁殖しているorz
確保できた魚などは、後に「保護エリア」と命名した上池の越流排水溝と、工事エリア外であろう下流域&下池と、上池上流部の三か所に分散して放流していきました。
ウォーターバッグ
次なる作戦としては、下流部を掘り下げて全体の水位を下げた上で、多くの魚が逃げ込む排水口アンダー箇所を、医療用カテーテルのようなウォーターバッグを膨らませて塞いでから追い込むべく、ビニールホースを付けた袋を池の排水口下流側から仕込んで、水を流し入れました。
しかし、魚が隠れる排水口内は塞ぎきれる形状ではなく、水流による浸食でアンダー空間が広がっていたため、効果は限定的でした。
つんつくつん棒
止むを得ず、排水口内部と周辺は釣りでアプローチし、それ以外はタモ網で確保することにしました。
しかし低水温により魚の活性が低く、なかなか釣れない上に、タモ網による直接確保は殆どアンダー部分に逃げ込まれるため、遠い目になりました。
その特性を利用して、隠れ場所である排水口部分にタモ網を構えておけば、つんつくつん棒でピュ~ンと泳ぎだして勝手にタモ網に入ってくれる確率が上がったものの、強めの渦流でタモ網が逆張る難しさもありました。
一方、堤より下流域の流路にも遠い目になるほど居るものの、立ち枯れした樹木の根に大量の流木が絡みついた淵などは保護困難なので、作業道が敷設されるであろう範囲の救出を優先し、淵の部分は作業道の予想範囲の流木を撤去することで、工事への巻き込まれを予防することにしました。
野生メダカ
堤の崩壊時に生じたであろう、本流(地形的には左岸寄り)とは繋がらない細い分流(右岸寄り)にも遠い目になるほど多く居て、さらに困ったことに野生のメダカを数尾確保しました。
ただしメダカは、上池上流や保護エリアや下池エリアに放しても生存は絶望的であり、家には一時保護できる環境が無いので、同じ分流の中でも作業道からは外れるであろう場所に一旦は放流しました。
しかし、自治体凸して工事計画を確認すると、作業道を含んだ工事エリアはアホほど広く、メダカを仮放流した場所も埋められることが判り、再救出を試みるも居ませんでした。放流場所にもドンコちゃんが多数いたので以下略かもしれませんorz
釣りのほうは、着いて直ぐに試みれば、うまく釣れることもありましたが、かえしを潰した釣り針はバレ率が高く、簡単でもありません。
無限に居る?!
分流のほうは、来る日も来る日もガサる度に多くを確保できるので遠い目になりましたが、いよいよ作業道敷設が始まり、救出に通う負担も増していきました。
「一尾たりとも殺らせない!」という思いで精魂と時間を注ぎました。
イリュージョン
本流の排水口付近では、釣りとタモ網での保護成功率が格段に上がってきましたが、後日また同じ顔のが居る(@_@;)という不思議が繰り返されます。
まさにイリュージョンです。
癒やしの保護エリア
遊びに行く余裕も無いので、休憩時だけでもデイキャンプ等の気分を味わいました。
上流側では、堤に近い工事エリアから救出したら、どう考えても影響ないであろう上流部まで運びましたが、堆積土砂の撤去工事リスクや、夏場の水質悪化リスクを考えて、数は少なめです。
茂みに隠れた分流も、ガサってもガサっても居て遠い目になりました。
漫画的ドンちゃん
こちらは本流で保護できたドンちゃんですが、漫画みたいになる位いい環境なのでしょう。やられた場合の被害も超巨大です。
カワモズク
上池越流の直下(排水溝上端)の溜まりには、初見のカワモズクも…!
これはメダカ保護の失敗を鑑みて一部を持ち帰り、また一部を保護エリアの上流部に移植したましたが、いずれも工事終了までに消滅しましたorz
元の場所のは、工事による断流で干されたり、泥水ポンプ排水が流されたりしたことで消滅し、ここ以外の場所は環境的に自生は絶望的なので、メダカ同様この流域のカワモズクも絶滅したことになると思いますorz
池の水ぜんぶ抜く
堤の左岸直下(保護エリアとは反対側)には本流から断絶した支流のような草だらけの溜まりがあり、念の為に調査すると、やはりドンコちゃんたちが居たものの、ずっと濁りが引かないので、草などを除去する下準備を施した後日「池の水ぜんぶ抜く」作戦を決行しました。
普通にガサっても、ほぼ網には入りません。通常工法では無理なのです。
茂みにはマムシも潜んでいたし、イモリ(テトロドトキシン)に触れた手で口の周りを触ってしまい、後日発疹して瘡蓋になり、瘡蓋の跡は痘痕になりましたが、下流部を掘って残りの水を掻き出す力技で、ほぼ全救出したのは誇りに思います(この場所は後に堤上流側へのアクセス道になりました)。
流木撤去
GW明けから本格的に流路掘り下げが進むということで、GW中に淵周りの流木を可能な限り撤去してユンボに殺られる被害を減らしつつ、夜間は淵に入っての救出を試みますが、広くて深いので十分な成果は出ません。
容易に見えるかもしれませんが、遠い目になるほどの重労働です。
癒やしの淵
工事が迫るので、全力で対応しました。
癒やしの空間を愛でる余裕もありませんorz
癒やしのドンちゃん
下流側の深い淵ガサりは、ズボンを脱いで入るも、深くて広いので十分には保護できませんでした。
保護の勝ち取り
下流域は、作業道には掛からない範囲も掘り下げが進み、やむなく自治体凸して交渉したら、保護エリアだけは放置してもらい、それ以外の範囲は随時救出させてもらえることになりました。
保護エリアの砂泥は、洪水時に流れてしまうから差し支えないという判断はあったに違いありませんが、そう簡単には流させないwのでした(後述)。
木株だけ撤去したら、その日は放置してくれるという配慮(?)があったので、夜を待って救出するということが出来ました。
残存ドンちゃん
下池側から順に掘り下げが進む本流では、淵だった箇所(ここにも多数放流していた)の残存ドンちゃんも、見つかり次第救出しました。こうなっても潜んでいた木の根陰に高確率で残存するので、救出しなければ殺られます。
下流側に難を逃れたボスドンちゃんも運よく保護できています。
意外な知性?!
ドンコちゃんは、結構な範囲の地形を記憶し、離れた場所に帰巣することも出来るばかりか、体当たりや噛みつきで大きな外敵に応戦したり、障害物に触ったら一旦後退して回避したりもします。
そんなにも可愛い子たちを、重機まで使って埋めたり潰したり干したり…
「可哀そうなことすんなや!💢」という感情が燃え上がります。
ドンコちゃんは、干されても高確率で助かるので全救出しています。
排水口の所から苦労して救出し、保護エリアに放流したのに、後日また同じ顔のが居るというイリュージョンが繰り返された件は、保護エリアから遡上して帰巣していたことに気づいたのは、まぁまぁ後のことですorz
移動防止柵
遡上対策は、下池や保護エリアから工事エリアに遡上するのを防止すべく、切り出した竹などを流路に並べるように打ち込んだ『遡上防止柵』を要所に設置したら、一応は効果が出たものの、流路の掘り下げで壊されては遡上を許し、また作って…というのを繰り返しましたorz
ドンコどっと混む
一方「ここから上(保護エリア)は手を付けない」と確約してくれたラインから下流(工事エリア)に流下しないようにする『流下防止柵』も急遽設置していますが、ここには工事エリアから遡上したドンちゃんたちが溜まってしまうのは計算外でしたorz
連日のようにドンちゃんたちが工事エリアを通って遡上してくるので、流下防止しつつ遡上は許すよう、柵をアプデしましたが…
こんな感じで停まっていたり…予想外が繰り返されますorz
柵の作り直しなどでは、怪我(重大な感染症リスクあり)も絶えませんが…
魔のユンボ迫る
そしてついに、魔の流路掘り下げが保護エリア直下まで到達すると、流木の下に潜んでいたドンちゃんたちは、深く掘り下げられた流路に流れ込む保護エリアの水と一緒に工事エリアに巻き込まれていきます。
土石と一緒に掘り埋め潰されたドンちゃんも居るはず…
せめて流木を減らしておけば被害を軽減できたかもしれませんが、確約したラインより保護エリア側に深く侵入された上に、想定外の落差だから、保護エリアから工事エリア側に流れ込む滝のような流れにタモ網を差し込むのが精一杯でした。
防衛戦は新たなステージへ
この流路掘り下げにより保護エリアの水流出が続き、保護エリアを形成する堆積砂泥も侵食流出し始めたため、侵食防止ダムや護岸を築き続ける数ヶ月間もの孤独な防衛戦が、ここから始まるのでした。
かなり省いたけど長くなったので次ページに…