とある溜池工事からの救出プロジェクト
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防衛戦は新たなフェーズに
保護エリア下流側が深く掘り下げられたことで、保護エリアからの水流出に伴う砂泥(保護エリア堤体)流出が始まったので、取り急ぎ近辺から集めた竹の枝葉などを植え込んで作った簡易的なダムと護岸によって保護エリアの砂泥(堤体)を守るという新たな”防衛戦”が始まりました。
保護エリアの堤体を成す砂泥が流出すれば、せっかく保護を勝ち取った保護エリアが元の排水溝に戻り、”保護容量”が無くなってしまいます。
しかし、せっかく竹の枝葉を植え込んで簡易的なダムを作っても、越流箇所など水流が速い所から砂泥流出が始まるので、ひたすら追加改修を繰り返すイタチごっこが続きます。
時間との戦い
工事エリアで広範囲が一気に干されれば、タイミングを見計らってササッと手あたり次第に救出する他ありません。
大きなドンコちゃんやカワムツ等が多数いて難儀した、池の排水口アンダー部分にも重機が迫るので、タイミングを見計らって救出し続けました。
とにかく多数が残存する排水口アンダー部分は、夜にも訪れて水を掻き出しながらの救出も試み、残存ドンコちゃんが周辺からアンダー部分に入り込むのを防ぎつつ外に出ることは可能にする制限柵も設置しました。
もちろん、保護エリアから工事エリアに遡上するのを防ぐ柵も出来るかぎり設置していますが、繰り返される流路掘り下げに伴って壊されるたびに作り直すことにもなりました。
悪魔のポンプ
工事エリア上流側の水を保護エリア(排水溝)側に迂回排水する強力な大型ポンプの吸い込み箇所は、ポンプに吸い付けられてダメージを負った大きな遡上ドンちゃんを幾度となく保護していますが…
あまり大きくない魚やイモリなどは、ポンプの排水ホースから破片となって排出されていました。
遡上防止柵の直下では複数のドンちゃんを保護できているので、柵は有効に機能していたようですが、完璧ではないし、工事エリアには保護しきれない個体も残存しているから、ポンプによる被害も続くのでしょう。
保護ダム設置
遡上防止柵と並行して、保護エリア保護ダムの設置も突貫工事で進め、保護エリアの水位を直接的に支える最前線のダムを第一ダムとし、その下流には暫定で第二、第三というようにダムを増設していくことにしました。
落差が大きく流速も速い狭窄部のダムは、ただ竹を植え込むだけの構造では不十分なので、落ち葉と砂泥等で止水層を形成して漏水を減らし、補強材で全体を支える工夫をしています。
護岸築
もちろん、ダムだけの治水には限界があるので、竹の葉と砂利の層で流出を抑えて竹杭で支える工法の護岸も、突貫工事で設置していきました。
護岸は、砂泥で形成される左岸を中心に伸ばしていきました。
ジャンとしたダムに刷新
改修しても流速の速さゆえに砂泥流出を抑えきれない狭窄部のダムは、この先の台風シーズン入りに伴う大幅な増水にも対応できるよう思いきって作り替えることにしました。
右岸(画像左側)の岩斜面凸凹に丸棒が引っかかるように設置することで、流路のカーブに伴う水圧を受け止める堅牢性を確保しています。
このダムの本格改修によって向上した治水レベルに対応して、ダム上流側の護岸も整えつつ、生物ビオトープ的な機能も持たせていきました。
ところが、また問題が見つかります。
ダムの落差が大きいと、落水に伴う下流側河床の洗掘が進んでいくのです。
下流側が掘り下がるとダムの底が抜けるので、水位差を縮小して水深を増すために、下流側にダムを追加設置していきました。
こうした一連の工事は、長期間に及ぶ重労働であり、重篤な感染症リスクも伴いますが、小さい頃の遊びに通じるものがあって楽しくもあります。
流下防止柵
降雨によって下池の水位が度々上昇するようになり、ドンコちゃんがダムを超えて工事エリア側に流下し易くなることに対応し、中サイズ以上のドンコちゃんが素通り出来ない程度の間隔で竹杭を打ち並べた流下防止柵の設置も進めました。
もし、保護エリアの下流部分に、下池水位より高くする落差を確保して洗堀対策も施した、堅牢な大型ダム(材料は竹と土砂だけでも作れる)が公式で設置されていれば、こんな苦労も無かったのですが…。
石積み護岸築
保護エリア側の流出対策は充実してきた一方で、工事エリア側は増水による崩壊が進んでいるので、崩壊が保護エリア左岸まで達するのを防ぐために、工事エリアとの境界(↓画像中央)にも護岸を築くことにしました。
しかし、下池の水位が高いまま高低差が大きい急斜面に護岸を築くのは容易ではなく、まずは竹棒で上部の土を支えながら、水中に石を積み上げていきました。
水位が高い間は突貫工事で石を積んでいきますが、大きさや形がバラバラな天然石を、本流の激しい流れに耐えられるように組み合わせながら積むのは至難の業です。
石積みの護岸築は、保護エリア(池の越流排水溝)とは別に、池の排水口(水位調整排水口)側の流路にもサービス的に施してあげました。
増水時は、堤体が復旧するまでの間は排水口側の流路に流域の水が集中的に流れるため、洪水時の土砂流出が激しくなります。
蔑みを込めた和名「ドンコ」
付近の地形を記憶しているからこそ、逃げ隠れる順路が決まっていて、何度でも長距離の帰巣を果たせるのだろうし、細やかに障害物を回避したり利用したりするし、大きな外敵には体を張って応戦するし、、。
そんなにも賢くて健気で、なによりも可愛くて癒やされる魚なのに、蔑みを込めた和名になっているのはモヤります。
匠の石積み沼
その辺に転がっている石を絶妙に組み合わせ、裏側には丁寧に砂利を詰めて砂泥の流出を抑える匠の技で築いた石積みは、築くのに結構な時間を要していますが、大雨に伴う洪水の荒波で洗われても耐え続けました。
一方、土嚢では洪水の度に崩れることに業を煮やした業者が、重機で積んだ石積み(下画像手前)は、使用する石が圧倒的に大きく重いにも関わらず、後の洪水で幾度も崩れていました。
業者の石積みが弱い理由は、隙間が大きくて土砂流出が起こりやすく、かつ斜度が緩すぎて地滑りと内側への崩落が起こりやすい積み方でしょう。
そういう技術的な差を実感するにつれ、石積みという沼に沈んでゆく自分が居たのは、ここだけの話とします。
ボスドンちゃん
横断部(作業道が河道の配管上を横断する箇所)の下流にある、広くて深い箇所は、水の揺れや濁りでドンコちゃんを発見しにくく、小さなタモ網ではアプローチしにくく逃げられやすいという悪条件が揃って救出困難ですが…
経験値で「いる筈!」と排水管の下部に差し込んだタモに、約18cmあるボスドンちゃんが運良く入って保護できたこともありました。
背後マムシはビビる
石積みの沼で肝を冷やしたのが、背後に音も無く泳ぎ寄るマムシです。
水辺のカエル狙いで巡回しているようで、そんなに危険ではない筈ですが、作業どころじゃなくなるので、タモで掬って離れた場所に運びました。
しかし翌晩、また同じように出たので、今度は更に遠く(下池の岸辺)まで運んだら、さすがに出なくなりました。
渇水にもダム
8月に入ると、渇水が進んで水質が悪化し、臭うようになってきましたが、ダムのお陰で保護エリアの容量が無くなることは防げています。
もしダムが無かったら、保護魚を収容する容量も無かった筈です。
ここは、上池(今回の復旧工事対象)と下池が併設されている珍しい場所であるため、下池を保護エリアとして使うのが本来ですが、下池の水位が下げられているため保護エリアとしては不十分であり、これは必然でした。
つまり河川などの工事は、事前救出と保護策を公式で行って然るべしというのが答えであり、それ位のことは出来るのが日本人だと信じたいです。
長くなったので次ページに続きます。
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