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「マイク・ハマーへ伝言」最々々くらいの読了とその感想
割りと時間があるときは小説も読むのですが、「昭和の名車完全版Vol.2(モーターマガジン社、6月16日発売」を校了した後で矢作俊彦さんの「マイク・ハマーへ伝言」を読み返しました。
クルマの出てくる小説を多く書いていらっしゃる矢作さんの処女長編で、単行本として刊行されたのは1973(昭和48)年と大分昔の作品となります。舞台は往年の横浜で、ちょうど刊行時とリングしている感じ。
友人の乗ったポルシェ911タルガが、警視庁のパトカー「ダットサンSR320(架空のクルマ)」に横羽線で追いかけられ、現・神奈川区守屋町付近でクラッシュしたことへの復讐劇です。
主役級のクルマは上記2台に加えて、ダッジ・チャージャー、キャデラック・コンバーチブル。ほかにもオールズモビル・ワゴン、プリンス・スカイライン2000GTB、ウーズレー(作中ではウズレー)、フォード・コルチナGT、三菱ジープJ型などが脇役で登場して、作者のこだわりが見える部分でもあります。
ただ、ポルシェのエンジンを水平対向ではなく星型エンジンとしているところや、ダットサンSR320のV8DOHCを表現するにあたって「ずらりの八つ並んだシリンダーヘッド」などと記しているのはご愛嬌かもしれません。
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実はこのストーリーは文庫本にして290ページ程度を費やして、その復讐が行われる1日のことが書いてあります。もちろん、過去の描写が多く出てきますが、私の読んだもののなかでは、そういう時間の経過が遅い小説はないかも。
もう一つ、この小説の特徴は、登場人物の中で私が感情移入できる人が誰もいないこと。横浜の恵まれた家庭に生まれた不良のお坊ちゃんたちのお遊び(というにはヘビーな内容ですが)を眺めているような感じさえします。自分にはない世界だから惹かれるというのは大いにありそうです。
ちなみに私の生まれ育ちの練馬を「田舎者」「お百姓さん」と馬鹿にしたり、クライマックスで主要登場人物が、ダットサンSR320が練馬ナンバーであることに逆上するシーンなどもあったりします。まあ、そこまで…と思わなくもないのですが(笑)ディスられてます。
私も、どうしてこの本を何度も読むのか良くわからないのですが、ひとつはクルマが多く登場することでしょう。もうひとつは古き良き(悪しき?)昭和の横浜の風景が克明に描かれていること、あとは矢作さんの文章自体に惹かれるところがあるからだと思います。