銀行の金銭信託と遺言信託
2025年には、65歳以上の4~5人に1人は、認知症になると言われています。
認知症になって困ることと言えば、「判断能力がない」と判断されて、「銀行口座が凍結」したり、「各種手続きが自力でできない」状態になったりして、日常生活に多大な支障をきたすことなどがあります。
困るのは日常生活だけではありません。相続が発生した場合に、意思表示ができないので、専門家による代理人(後見人等)が対応することになります。
認知症になったら困りますね。だから、早めに対策を立てておく必要があります。
依頼主(親族)からの指定により、銀行に金銭信託について話を聞きに行きました。
認知症対策については、任意後見制度の利用や家族信託(民事信託)契約の締結などが一般的ですが、今回は銀行の金銭信託と遺言信託の話です。
1 金銭信託
上記の例で金銭信託を説明します。
以上が、基本スキームです。
さらに、父(委託者)が亡くなった後も契約を継続出来て、
最後に、母が亡くなった後は、残った財産を、誰に振り分けるかを契約の中で決めることができます。(帰属者の決定)
今回の金銭信託の設計の肝は、父の財産で、母の生活の安定のためにも使用できることです。カスタマイズ型の金銭信託がだから可能なスキームです。パッケージ型ならできないかもしません。
金銭信託のメリットは、財産を長女の名義にしなくてよいことです。父も安心して託せるのではないかと思いました。(家族信託(民事信託)は、信託財産を長女名義にしなくてはいけませんから、当事者は抵抗感を感じることもあるかと思います。)
金銭信託のデメリットは、手数料が高いことです。(高すぎます)
仮に、5千万円の信託財産を5%の手数料とすると、250万円です。
銀行としては、契約書も数種類のひな形をアレンジして作成するだけで、後は出来上がった箱にあてはめるだけです。
銀行はぼろ儲け。こちらとしてはぼったくり感満載です。
2 遺言信託
金銭信託以外の財産について遺言信託を行うことにます。
遺言書作成のメリットは、相続発生時に、相続人の中に「判断能力がない人」がいた場合でも、法定後見人をつける必要がなく、スムーズに相続手続きが行えること。被相続人(亡くなった人)の意思が相続に反映されること。
上記の例で遺言信託について説明します。(箇条書き)
・遺言の作成を依頼
銀行の担当者が本人から遺言の内容を聞き取り、遺言を作成します。
父と母2人の遺言を作成する。
・作成内容
父が先に亡くなった場合と母が先に亡くなった場合の父の遺言
父が先に亡くなった場合と母が先に亡くなった場合の母の遺言
・公正証書とする。
公証役場で遺言書を公正証書にする。
・銀行が遺言執行者を代行する。
・相続に必要な書類の徴収や作成、相続税の申告(※)
・遺言の執行
(※)相続税の申告は別途料金発生
遺言書の作成から遺言の執行まで全て銀行へ委託する。
複雑な相続手続きを全て代行してくれるので安心。
費用は、相続税申告まで入れて1人150万円弱と言ったところ。
二人分で300万円
費用面ではかなり高額。(デメリット)
3 まとめ
金銭信託と遺言信託は、安心かつお手軽に相続・認知症対策ができることがメリットですが、費用が高いことが最大のデメリット。
しかし、資産がある人は、遺産分割時に紛議になることもありますし、相続税納税をめぐり税務調査が入ることもあります。これはリスクです。今回はリスク回避のために高額は費用を払って対策を立ててみようと考えています。高額な相続税を持っていいかれることを考えると、割高でも相続税対策に支出をしてもよいのかなと思います。