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「あっ」というフィールドワークをやってみた

あっ

何かを発見したり、
思い出した時に、
無意識のうちに発する言葉。

この「あっ」という言葉に注目し、フィールドワークをやってみました。

「 あっ」は「発見・思い出し」に位置付けられ、自分で発見した情報を新規に登録する際の標識である。

田窪・金水(1997)「応答詞・感動詞の談話的機能」くろしお出版

「あっ」というフィールドワークのコンセプトは、強制的に「あっ」と発することで、新たな発見をつくり出すというものです。

本来は、なにか発見があった時に「あっ」と言うわけですが、先に「あっ」と発することで、無意識の発見を意識化し、言語化に取り組む。それが、『「あっ」というフィールドワーク』です。

「あっ」というフィールドワークの実践

やり方
1. 目に止まったものに対して「あっ」と言う
2.対象物の発見を言葉にする(メモする)

この記事を読んでくれている方も、今すぐ身の回りのものでやってみてください。
無意識的に目についたものに対して「あっ」と言い、対象物を観察してみると、これまで気づかなかった形状や色、作り手の意図などが見えてこないでしょうか。

さて、街に出て、やってみよう。ということで、駅からオフィスへの通勤路でフィールドワークを行いました。

あっ、路上喫煙禁止。
道路にもあったのか。「ノー」って読める。
裸足の足跡?足跡で歩きタバコを表現しているのか。
あっ、チェーンだけ残ってる。
タイヤの方切られたのかな?チェーンについてる赤は柱のペンキの赤?
誰かが柱は塗り直したのにこれは放置した?
あっ、駅の横にこんなに何重にも階段があったのか。
避難や点検に使うのかな。消火栓の看板の背が高いのは消防車が気付きやすいよう?
あっ、車だけでなく自転車・歩行者もみんな「止まれ」なんだ。
歩行者の止まれが一番前なの面白いな。

簡単に思えたが、実際にやってみると想像以上に難しい。
「あっ」と言える対象物を探してしまう。
特に、フィールドワークに慣れてくると、「あっ」を探そうと意識してしまいます。

「あっ」が出る前から「あっ」を探しちゃダメだ。そこで、このフィールドワークがもつ偶然性を取り戻すため、グループワークにやり方を変えてみました。

グループワークでやってみた

やり方
1. 任意の位置に集まる
2. 誰かひとりが目に止まったものに対して「あっ」と言い、指をさす
3. 対象物の発見をグループで話し合う

あっ、木にツタが絡まってる。
日当たりに関係しているのかな?一本だけ、半分しか絡まってない
これは何の木だろう?ツタとツルの違いってなんだ?
ここって、こんなに植物生えてたのか
ツタは木にとって悪いことでは?地面も根っこで盛り上がっている

グループワークでは、偶然的に目を向ける機会をつくり、複数人で視点を共有することで、新たな気づきを得られました。

「あっ」というフィールドワークの3つの効果

「あっ」というフィールドワークをやってみて、普段いかに周りを見ないで過ごしているのかに気づきました。

このフィールドワークには大きく3つの効果があると考えます。

  1. 「あっ」という装置によって、周りを見るきっかけをつくり、強制的に風景にノイズ(気づき)をつくり出すことができる

  2. 他者の存在によって自分の気づきの外に連れて行ってもらうことができる

  3. 色々なノイズに触れ、自分の好みのノイズの方向性をメタ認知できる

取り組みの背景

どうして、こんなことをやっているのか。
実は、これは「余裕する力」を取り戻すための実験でした。

周りを見る余裕がない。
余裕がないからこそ、周りを見てみる。
「あっ」というフィールドワークの狙いです。

ということで、「加速する社会で「余裕」をどのようにつくるか」に続く。

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