お別れしたうさぎさんのお話〜うーたんのイタズラ電話
最近、ペットのうさぎさんがお月さまに帰りました。うさぎさんのいない生活が淋しくて、お話を書くようになりました。読んでいただけたら、とても嬉しいです
【うーたんのイタズラ電話】
私はうーたんです。とても可愛いうさぎさんです。今は地球での役目を終えて、お月さまで暮らしています。
お月さまでの暮らしは快適ですが、地球に残してきた飼い主さんのことが気になります。
飼い主さんはインスタでうさぎの画像を見たり、YouTubeでうさぎの動画を観たりして、いつもため息をついています。
どのうさぎさんも可愛いけれど、やっぱりうーたんとは違うのです。
うーたんは唯一無二のうさぎさんだったのです。
そこで私は飼い主さんに電話をかけることにしました。月の文明はとても進んでいるので、地球に電話をかけることができるのです。
プルプルプルプル
早速うーたんは飼い主さんのケータイに電話をかけました。
「はい。もしもし」
飼い主さんはすぐに電話に出てくれました。懐かしい声を聞いて、うーたんは目をキラキラさせて喜びました。
私は飼い主さんとお話ししようと、お鼻をヒクヒクさせました。しかし、いくらヒクヒクさせても音が出ないので、飼い主さんには何も聞こえません。
次に私は受話器に向かってお鼻をフスフスさせました。しかし、フスフスでは擦れたような音しかしないので、飼い主さんは私からの電話だと気づかないようです。
「イタズラなら切りますよ」
そう言って飼い主さんは電話を切ってしまいました。うーたんはしょんぼりしてしまいました。
そこで私は今度は本当にイタズラ電話をすることにしました。
プルプルプルプル
この電話は不思議な電話です。私が電話をすると、飼い主さんのケータイがどこかに消えてしまうのです。
「あれ、ケータイがない」
そう言って飼い主さんはケータイを探します。この時、飼い主さんはよく似た思い出があることに気づきます。
「あれ、うーたんがいない」
昔、私が地球で暮らしていた頃、飼い主さんはそう言って、いつも私のことを探してくれました。
「あ!ソファーの下にいた!」
飼い主さんは、すぐに私のことを見つけてくれました。そして、必ず私の頭をなでなでしてくれたのです。
私は不思議なイタズラ電話でケータイをソファーの下に移動させて、飼い主さんに私のことを思い出させてあげたのです。
私はこんな感じで時々電話をかけてあげました。
「あれ、ケータイがない…。あ!テーブルの下にあった!そういえば、うーたんはここが好きだったな...」
「あれ、ケータイがない。あ!家具と家具の隙間に落ちてた!うーたんはここも好きだったな...」
こんな具合に飼い主さんは、電話をする度に私が生きていた時のことを思い出します。そして、少しだけにっこりするのです。
飼い主さんが笑うと、私はとても嬉しくなります。
でも、うーたんは知っています。本当はイタズラ電話なんか必要ないのです。
なぜなら、飼い主さんは電話なんかなくても、私のことをずっと覚えていてくれるからです。
うーたんと飼い主さんは離れていても、いつまでも一緒なのです。
以上
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