こうしてnoteから本が生まれることもある
10月に編集担当した本が出ます。
『社長の言葉はなぜ届かないのか?』
著者は竹村俊助さん。
日本実業出版社、ダイヤモンド社などでヒット作を多数世に生み出した編集者です。
『佐藤可士和の打ち合わせ』『「週刊文春」編集長の仕事術』『福岡市を経営する』などの担当書籍に加えて、ライティング作には『メモの魔力』『リーダーの仮面』などがあり、数多くのベストセラーに関わっている方です。
独立後は株式会社WORDSという会社を立ち上げ、経営者の隣で発信をサポートする「顧問編集者」として活動されています。
これまでに識学、オークネット、ドリームインキュベータなどの上場企業からNOT A HOTELなどのスタートアップ企業まで、30社近くの経営者の発信をサポートされています。
この本には竹村さんが顧問編集者として活動してきた5年間の知見が全て詰め込まれています。
実は、この本が生まれた背景にはnoteが深く関わっています。
今回の本作りを振り返りながら、こういう形でnoteをきっかけに本が生まれることもある、ということを一人の編集者目線として書いていきたいと思います。
noteは最初の出会いの場になる
少し、個人的な昔話をさせてください。
僕はもともと水道検針の仕事をしていましたが、今から6年ほど前に出版業界へ移りました。
最初は編集プロダクションという編集実務のみを行う会社に入りました。ただ、全くの未経験なわけです。もう右も左も分からない。
日々本作りをするわけですが、正直「編集者って何?」という状態です。
赤字? 素読み? 校正? えーっと、ちょっと待ってくださいね…などとバタバタしている間に一日が終わってしまう。そんな日々の連続でした。
自分は何も分かっていない。
このままじゃまずい。
この状況をなんとかしたいと思い、いろんなことを調べました。例えば、こんな感じに。
呆れるかもしれませんが、本当にこんな感じで調べていました。「どこかに指針となるような考え方が載っているかもしれない」と期待していたのです。
そうして調べていくといろいろなサイトが出てくるわけですが、どれも今ひとつピンと来なかったんですよね。
有益そうなことは書いてあるんですけど、「この情報を書いている人は何者なのか」という点が示されていなかったので、「これだ!」とはならなかった。Google検索でトップに出てくるような記事では腹落ちするまでには至らなかったのです。
いまだ編集者の在り方に答えを出せないでいたとき、一つのnoteにたどり着きました。
それが、この記事です。
この記事には、以下のように書かれています。
この記事を読んで、「出会えた!」と思いました。ずっと探し続けていた「編集者としての在り方」に、ようやく一区切りつけられると思った瞬間でした。
小手先のテクニックではなく、生き方そのものが編集になるという考え方に初めて触れて、ずいぶん視界がクリアになったことを今でも覚えています。
実は、このnoteで初めて竹村さんのことを知りました。先ほどの記事だけではなく、ほかにも編集者として身につけておきたい考え方が数多く示されていました。それからというもの、暇さえあれば竹村さんのnoteを読みました。
当時出版業界のことを全く知らなかった自分にとって、竹村さんのnoteは仕事をする上での指針となりました。同時に、「世の中にはこんなに優れた編集者がいるのか!」と衝撃を受けました。
このnoteに出会っていなければ、僕は今ごろ編集を続けられていたかどうかも分かりません。それくらい、大切な出会いでした。
そして時が経ち、執筆依頼へ
2年ほど前に編集プロダクションから今の出版社へと移り、自分で企画を立てられるようになりました。どうせなら自分が好きな人と一緒に仕事がしたい。そう思い、「竹村さんに本を書いてもらえないかな」と淡い期待を抱きながら企画を立てました。
企画は営業部の承認を得て社内会議を通過し、アプローチをする段階に移りました。
どうやって伝えようかなと悩みつつ、FacebookのMessengerで「自分はこういう者です」と自己紹介を織り交ぜながら「メッセージを送った経緯」や「一緒に仕事がしたいです」という旨を伝えました。
今振り返ってみると、初手から長文メッセージを送りつけてしまっているので敬遠されてもおかしくなかった。それでも、竹村さんは丁寧に返信をしてくれました。
そして、まずは六本木のスターバックスで会うことになったのです。
正直、めちゃくちゃドキドキしていました。
まず「六本木のスターバックスで打ち合わせ」は今まで自分の中には存在しなかった世界です。打ち合わせと言えば会議室。そんな古臭い固定観念が残っていたので、急に知らない世界に飛び込んでしまったような場違い感があったのです。
そんなドギマギした状態ながらも、最初の打ち合わせでは「企画趣旨」や「なぜ竹村さんに本を書いてほしいのか」といったことをお伝えしました。
ただ、その場で提案した企画は『社長の言葉〜』とは全く異なるものでした。
最初は「話の聞き方」というテーマで打診をしていたのです。
顧問編集者として経営者の隣で数々の話を聞いてきた竹村さんなら、きっと多くの人に届く「話の聞き方」があるはず。そう思って企画を立てました。
しかし、竹村さんにはせっかく本を作るなら出したいテーマがありました。それが今回の本につながる「経営者の発信」です。
このテーマであれば、note用に書き溜めていた記事もあるのでそれを生かしながら進められるかもしれないと。
思いがけぬ提案に驚きました。でも、同時に「面白そう」とも思いました。これまで「類書の売れ行き」を重視して立てていた企画から解放されそうな自由さがありました。
それに、竹村さんだからこそ書ける一冊になるかもしれないとも思いました。
全く想像していなかった景色が見えそうな気がする。そのような想いもあり、この方向性で企画が動き出しました。
本作りがスタートしてからは驚きの連続です。竹村さんの知識量、豊富すぎます。「なんでそんなこと知ってるんですか?」というトピックがポンポン出てくる。最近のXの動向にもかなり詳しい。富士そばのXアカウントがアツいことは竹村さんへの取材の中で知りました。
ときにはWORDSさんのオフィスで取材させていただくこともありました。何百冊あるんだろうという本棚の中から関連性のある本を的確に取り出してきて、「この本にはこういうことが書かれていまして〜」と教えてくれたり、思いもよらぬ角度から本書のテーマとの関連性を示唆してくれたりと、もうスゴかったです。
そうして取材を重ねていき『社長の言葉はなぜ届かないのか?』は少しずつ形になっていきました。
『書くのがしんどい』の続編的な内容もある
竹村さんといえば一冊目の著書『書くのがしんどい』をイメージする人も多いと思います。僕もこの本に何度も救われてきた一人です。
今回の『社長の言葉〜』はご自身も仰っているように『書くのがしんどい』の続編的な内容も込められています。
『社長の言葉〜』では「書く」や「コンテンツの作り方」にもフォーカスしていますが、「取材を通した人間理解」というのもこの本の持ち味の一つだと思っています。
全体で336ページあるのですが、特に「取材」に関しては一章分まるっと使って書いていただきました。
ちなみに、この本の中で僕が好きな見出しタイトルが2つあります。それが、「ものわかりは悪くていい」「編集者の思考の枠に矮小化してはいけない」というもの。原稿を読んでいてドキッとしました。
完成、そしてもうすぐ発売!
長いようで短かった本作りが9月の中旬に終わりました。
振り返ってみればあっという間でした。きっとこんな経験はもう二度とないかもしれません。
編集者としての在り方が分からなかった自分に、数々のnoteを通して「編集者とはこういう生き物だよ」ということを教えてくれた。
そこから得た学びをもとに編集を続けていった結果、そのご本人の新刊を担当することができた。編集者冥利に尽きるとは、僕にとってこのことかもしれません。
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今まさに選考真っ最中の「創作大賞2024」。エントリーした方々は全員「書いている」。それがもうスゴイなと思うわけです。だって、書くのってめちゃめちゃ大変じゃないですか。楽しいし、書くことでしか得られないものはたくさんあるけど、大変なことに変わりはない。
でもそうやって書いたnoteは知らない間に誰かの生きる指針になっているかもしれないし、もしかしたら数年後には本として出版されているかもしれない。
「発信はゴールではなくスタート」
これは、『社長の言葉〜』に書かれている中でも特に印象に残っているフレーズです。
タイトルから経営者向けの専門書という印象を持つかもしれませんが、僕は「書く人」であればきっとたくさんのものを持ち帰ってもらえる一冊になったと思います。
もしよければ、読んでもらえると嬉しいです。
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