ひとり法務を支えてくれた、10クールの「輪読会(勉強会)」とそこから学んだこと
このnoteは法務系Advent Calendar 2024の17日目のエントリです。野田先生からバトンをいただき、法務のいいだがお送りします🦈
2020年に法務になり、そろそろ法務として5年目が終わろうとしていることに気づき、戦慄している最近です。節目ということで、ここ5年を棚卸してみていたのですが、やっぱりひとり法務として5年も走り続けられたのは「社外の仲間」の影響が大きかったなと思っています。(感謝!)
ひとり法務としては「井の中の蛙」にならないように情報を交換してもらえることはもちろん、社内で得られない他のメンバーの法務業務への向き合い方を学べることが貴重でありがたいです。
もちろんイベントや交流会も大事なのですが、個人的には「輪読会(勉強会)」で得たものが本当に大きかったと思います。数ヶ月かけて一冊の本を順番に発表しつつ通読する中で、自然と今やっている業務の話や実務の工夫の話もするし、その中から他の人の「業務への視点」が透けて見えることで、自分の背筋を伸ばすような経験をたくさんさせていただきました。
ということで、今年のアドベントカレンダーは法務2年目から間を置きつつもずっと続いている、勉強会の軌跡とそこで学んだことを言語化してみようと思います。なお、勉強会に使用した本を紹介しているリンクはnoteの標準機能のやつなので、踏んでも私には1円も入らないのでご安心ください。
いつもの簡単な自己紹介
最初に簡単に自己紹介させてください!LAPRASで法務部門の責任者をしています、いいだです。LAPRASでは法務全般にプラスして、働く環境づくり、新入社員オンボーディング、最近はBマーケや新規事業のお手伝い等 興味のある仕事を欲張ってやらせてもらっています。
サメが好きでお調子者な、ひとり法務担当です。毎月noteを書いていて、それが3月に本になりました!(わーい)
今、ビジネス書大賞の投票期間で、拙著「ひとり法務」がノミネートされているので、もしよければぜひポチッとお願いします🗳️
過去に行った輪読会(勉強会)とその振り返り
時期・読んだ本・構成メンバー・学び といった感じで振り返っていこうと思います!構成メンバーはイメージがつきやすいように、本当にざっくり年代で「先輩」「同期」「後輩」に分けているだけで、他意はないです〜。(なお、ひとり法務なので参加者は全員社外で知り合った法務の方です!)
2021.2~2021.4 ITビジネスの契約実務
構成メンバー:先輩、先輩、先輩、私
それこそアドベントカレンダーを書いたことがきっかけで、先輩に法務互助会でお声がけ頂いて参加しました。当時は正直、全然法律の知識はなかったのですが、IT業界で営業をしていた頃の事業ドメインでなんとかついていきました。
確か私は発表を免除してもらい、聴講のような形で参加させてもらったと記憶しています。これまで、大学生以降「他の人と一緒に法律を学ぶ」経験がなかったので、大人の勉強会に一歩踏み出したなと思いました。
ここから全てが始まったので、本当に当時お声がけいただいた皆さんには心から感謝しています。
2021.5~2021.9 令和2年改正 個人情報保護法の実務対応-Q&Aと事例-
構成メンバー:先輩、同期、同期、私、後輩
輪読会という勉強スタイルを知ったことで、今度は自分で選んだ本を勉強したいなという気持ちが湧いてきて、大学時代の法学部の知り合いに片っ端から声をかけて開催しました。
結果的に、私以外全員弁護士さんという会になったのですが、実務上ちょうど個人情報保護法に毎日向き合っていた時期だったので、全く何もわからない状態になることはなく済みました。
一方で、レジュメの作り方や、分からない情報の調べ方・深掘り方に私と他のメンバーで差があるなと実感。「書籍を数冊自宅に抱えて、一冊で分からなかったらより辞書的な本を引いて、しっかりと腹落ちするまで深めていく」という当然の方法も、当時の私は知らなかったので勉強になりました。
何より、同年代のメンバーと勉強会すると、「後輩だから…」という言い訳が効かないことで、自分が頑張ることがわかったので、この後も先輩に誘われる勉強会を待たずに自分で企画しようと決意を固めた勉強会になりました。
2021.12~2022.4 著作権の制限規定勉強会
構成メンバー:先輩、先輩、先輩、私
前回のITビジネスの契約実務の先輩方から引き続きお声がけいただき参加したのですが、大学でも知財周りは全く勉強しておらず、完全に聴講参加させてもらったので、記憶が…。
レベル差がありすぎると貢献できない+自分が主体的に調べたりしないと、身につかないんだなというのを今でも反省として抱えています…。
2022.6~2023.2 個人情報保護法のガイドラインとQAを通読する会
構成メンバー:先輩、先輩、先輩、私
前回の制限規定勉強会のメンバーから引き続きお声がけいただいてやりましたが、ちょうど前回の個人情報保護法の勉強会から時間が経っていたので、良い時期に復習+細かい論点も押さえることができてすごくよかったです。
1人ではきっと地味に大変なものを、周りの力で引っ張られてのが読み切るのが、輪読会の良いところですよね。「行政が出しているQAを精読する」という発想がなく、ある程度整理された書籍ばかり読んでいたので、原典に当たる大切さも身にしみた会になりました。
2022.8~2023.1 契約書作成のプロセスを学ぶ(第2版)
構成メンバー:先輩、私、後輩、後輩
ちょうどこの時期、社外で「後輩」メンバーとの関わりが増えて、そのメンバーに声をかけて、でも自分だけだと不安なので先輩にも声をかけて設定した勉強会です。
契約書審査は書籍等を読んで自分なりに進めていた部分はありましたが、改めてちゃんと条文を引きながら勉強することで、普段の業務の解像度が上がる経験をしました。この頃は「知らないこと」というよりは「業務で手を動かしていて、知った気になっていること」をちゃんと後追いで理解する形で輪読会を活用していました。
2023.2~ 2023.12 会社法リーガルクエスト
構成メンバー:先輩、先輩、私、同期、後輩、後輩
当時社内のコーポレートメンバーの入れ替えもあり、もう少し機関法務に手を伸ばしたいという気持ちがあり、自分で企画しました。わかほうで知り合ったメンバーと、ベンチャーの会社法周りに詳しい弁護士の先生2名に声をかけて、総勢6名の大所帯でほぼ1年かけて、かなり丁寧にリークエを通読しました。自分が企画したのに、結構大変でした。
私自身は会社法を大学時代に専攻していて、司法書士事務所で商業登記の部署にいたので、ある程度通用すると思っていたのですが、それがいかに甘かったかが分かりました。精緻な条文や判例の理解というミクロな点でも、ベンチャーの経営における機関法務の役割というマクロな視点でも、全然知識も経験も足りていないことを猛烈に自覚する勉強会になりました。
条文、判例、その裏にある設計、そして最近のベンチャーでの流れや実務上の注意点。一つの法律をとってもキャッチアップすることは無限にあり、完全に理解したと思った時点で成長が止まるんだなという厳しい現実を直視できた勉強会でした。
ここだけの話、何回か勉強会が終わった後に、実力不足が悔しくて悔しくて、眠りにつけない夜がありました。それくらい、企業法務として、経営に向き合うべきビジネスパーソンとしての視座を間違いなく一段階上げてもらった勉強会だと思います。
2023.4~2023.12 数字でわかる会社法
構成メンバー:先輩、先輩、同期、私
過去に何度もお誘いいただいていた先輩方を、自分から誘ってみた勉強会です。ちょうどリークエを丁寧にやっていたので、2023年は会社法の年にしようと思って、同時並行でもう一冊頑張ってみることにしました。
正直、結構学術的というか、実務ですぐには使わない視点も多い本で、通読していても「?」となることが多く、難しく感じました。ただ、今思えばこの本を通ったことで、財務諸表分析の勉強会に踏み出すことを決意した側面もあると思います。数字が分からないと、結局会社法は理解しきれないなと。
あと、同時期に同じ分野の勉強会を2つ掛け持ちすると、一回の予習で二回美味しいし、知識が倍々で入ってくるので(大変だけど)いいぞ…という味も占めました。
2024.3〜2024.7 はじめてでも読みこなせる英文契約書
構成メンバー:同期、私、後輩、後輩
確か、わかほう第3回の後にオフ会をやって、そこのメンバーで意気投合して始めたと思います。私自身、今の会社で英文契約書に触れる機会は限られているのですが、だからこそ社外でやりたいな〜という気持ちがあって、毎週泣きそうになりながら未知の領域を予習しつつ頑張りました。
最近は個人情報や会社法等、少しは土壌のある分野を勉強していたので、「自分に全く経験・知識がなくても、ちゃんと丁寧に本を読むことである程度は身に付く」ということは勉強会を終えて自信になりました。むしろ、そういう分野こそ、一人で勉強しづらいからこそ、輪読会が生きるんだなという学びを得ました。
あと、個人的には自分が作ったコミュニティで出会った人たちと勉強会をするのは、一つの夢だったので、叶ってすごく嬉しかったです。
2024.5~2024.12 財務諸表分析
構成メンバー:同期、同期、同期、私
英文契約書をやったことで、「知らない分野こそ輪読会かも」ということを思いつき、同じ年代の知り合いに声をかけて、財務に詳しいメンバーにも入ってもらって開催しました。ちょうど先日終わって、昨日打ち上げで焼肉に行ったところです。
苦手な数字の話だし、知らないことを学ぶのめっちゃきつかったので、これは一人だったら絶対挫折していたと思います。輪読会にして本当に良かった。正直一冊読んだくらいじゃ全く理解できていませんが、やり終わったら「財務諸表の本、もう何冊か読んでみようかな」「決算書、ちょっと見てみようかな」という気持ちになれたので、これは偉大なる一歩だと思います。
2024.7~2025.1 Q&A個人情報取扱実務全書〔第2版〕─基礎知識から利活用・トラブル対応まで─
構成メンバー:同期、同期、私、後輩、後輩、後輩
わかほうの運営OBメンバーとカフェに行った時に「勉強会やってみたい」と言ってくれたので、めっちゃ嬉しくて、運営OB内で企画しました。書籍としては個別事例が多くて勉強が難しい部分もあったけど、自分が教える側で勉強会をする側になると、本に載っていないことも予習したくなるもので、良いプレッシャーになりました。
まだ継続中で、年始1月でラストの予定ですが、わかほう運営OB内でも今後もこうやってゼミみたいな取り組みが続けばいいなぁと思っています!
改めて、輪読会の軌跡を振り返って
改めて記載してみると、自分の努力の軌跡が見えて、少し自信になりました。輪読会をしたから偉い訳ではないけど、業務に必要な努力を業務外に趣味?として続けられていること、そこに誘ったら参加してくれる仲間がいることは、少なくとも誇って良いのかなと。
先輩・同期との勉強会は、やっぱりプレッシャーがあって、予習に追われながらも身が引き締まる思いがします。後輩を誘った勉強会は、「質問に答えないと!」「先輩たちにしてもらったみたいに、私もちゃんとGiveしないと」と別の意味で身が引き締まります。
結果的に、旬のブリみたいに、輪読会があるとずーっと身が引き締まっていられるなと🐟。私にとっては勉強のペースメーカーでもあり、法務の仲間と話せる大事な息抜きの場もあり、自分を叱咤激励しつつも自信をつけてくれる場でもある。賢くなりながら息抜きもできるなんて幸せですね。
輪読会から次の輪読会が半年以上空いていない(どころか並行している時期すらある)ことが、自分にとって輪読会がいかに大切な場所かを物語っていると思います。改めて、今まで誘っていただいた方、参加いただいた方には、心からの感謝を。ありがとうございました。
来年からはそろそろ、輪読会に依存しない「独学」の精度も上げたいなと思いつつ、輪読会からしか得られない栄養素があるので、うまく助けられながらもこれからも法務人生を頑張っていけたらと思っています。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。「自分とも勉強会やったじゃん!抜けてるよ!!」と思った方いたら、ぜひ優しくDMで教えてください…(すみません…
さて、法務系Advent Calendar 2024は明日以降もまだまだ続きます!やっと、安心して読むだけの立場に回れる…!嬉しい!!
明日以降の記事も楽しみにしています🙌