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2023.10.17

 妻がママ友との用事で出かけるのは前日から知っていたものの、娘まで友達と児童館に遊びに行くという。予告なしで突然ひとりになった休日の午後は何をしようか迷ったりする。録画してたドラマを観ようとか、買ったまま読んでない小説を読もうとか。あ、そういえば!と。来週末、友人の結婚式に着ていく着物を陰干ししなければならないことを思い出す。

 寝室のタンスを開け、着物一式が包まれた風呂敷を引っ張り出す。風呂敷を開け、ナフタリンの香りのする着物をハンガーにかける。
 ふぅ〜、ものの5分でミッション終了。…さて、この後何をしようかなぁ。とりあえず、出かける予定もないし、酒だよね。

 ということで、キッチンの棚を開け、誕生日に友人からもらった焼酎の封を切ることにする。これでちょっとスペシャルな休日の午後が過ごせるよ。などと芋焼酎をロックでちびちび呑みながら、テレビをつけ、録画リストから録った覚えのない映画をあまり期待せず選択する。映画が終盤を迎えた頃、〈ママ友との用事がおしちゃって…16時に娘を児童館まで迎えに行ってくれないかな〉という内容のメールが入る。えぇ〜、もう飲んじゃってるからバイクも乗れないし。めんどくせぇなぁ。などと思いつつ〈OKヒマだし〉と返す。

 そんなわけで薄手のカーディガンを羽織り、とぼとぼ歩いて児童館に向かう。残暑でヒートアップしていた街もようやく冷静さを取り戻し、ほろ酔いで歩くにはちょうど良い季節。30分程歩き、児童館で娘をピックアップする。娘の友達とその母親に挨拶し、帰路に着く。

 手を繋ぎ、あれこれ話しながら歩く。
「今日はね、Aちゃんと工作でハロウィン仕様の猫を作ったんだよ」だとか「あそこのお米屋さんが売ってるおにぎりね、友達のRちゃんは親戚だからただでもらえるんだって。うらやましいよねぇ」だとか。娘が話す、ひとつひとつの話題に相槌を打ちながら自然と頬が緩む。

「あっ!あそこの葉っぱ、踏んでみるね!」と、道に落ちた落ち葉を指して娘が言う。「良いねぇ」とわたしは応える。落ち葉のそばまで向かい「聞いててね…」と娘が・ゆっくりと・慎重に・落ち葉を踏みつける。
「パリ、パリパリパリっ…」と音を立てて粉々になる落ち葉。2人で「おおー!良い音だねぇ‼︎」と、その後も落ちている葉を見つけてはどんな音かするか確かめながら歩く。色んな落ち葉を踏み、良い音が鳴ると「ポテチを食べてる時の音みたいだねぇ」などと笑いながら。

 何十枚と踏み続けた結果、茶色でシワシワに乾燥した落ち葉の音が1番良いね。と言う結論に達する。

「何で、木から葉っぱが落ちるんだろう?」と娘が聞く。「おじいちゃんおばあちゃんも、枯れたら社会という名の木から舞い落ちるのだよ」と適当に応える。「でもさ、寒くなるとヒトは暖かい服を着るでしょ?葉っぱが落ちて、裸になった木は寒くないのかなぁ…」

 素敵な初秋。なにひとつ無駄のない夕暮れの帰り道。そんなやりとりをしながら、今8歳の君が大人になるまで、あと何回こんな日を一緒に過ごせるのだろう。なんて感傷に浸っていると、遠い昔、同じく手を繋ぎながら落ち葉を踏んで歩いた母との夕暮れの田舎道が重なる。
 あぁ、あれはつまりこういうことだったのか。と、あの時の母の笑顔の中の涙が腑に落ちる。

「芋焼酎とはあまり合わないねぇ」などと言いながら、最寄りのコンビニで買ってきたポテチをつまむ。すでに帰宅し、夕飯の準備をする妻が「何でポテチ食べながら涙ぐんでるのよ?これからご飯なんだから、食べすぎないでね」と笑う。「いやいや、焼酎より、ポテチにはコーラでしょ?」と娘がポテチを頬張る。

 色々とほんわかしつつエモい。そんな休日の午後。

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