1 鉄道会社が駅員等にマスク着用を指示した旨の報道がありました
報道によると、新型肺炎の感染拡大を防ぐ目的により、首都圏の鉄道会社が駅員や運転士にマスクの着用を推奨又は指示しており、業界としては異例とも言える対応を取っているとのことです。
2020年2月3日付けNHK NEWS WEB
(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200203/k10012270971000.html)
個人的には、乗客→駅員→乗客又は駅員という感染経路が想定できる以上、当然の対応であるとの感想を持ちました。このような報道を受け、マスクの着用と業務指示についてのコラムを書いてみます。
2 相談の一例 マスク着用の指示を出せるか
3 回答 マスク着用を指示することができる
4 懲戒処分の判断は慎重にすべき
2020年5月20日追記
報道によると、専門学校が、4月7日の会議においてマスクを着用しなかった職員に対し、出勤停止の懲戒処分をしたとのことです。これに対し、懲戒を受けた職員と労働組合が懲戒処分の取り消しを求め、職員が反省文を提出することで懲戒処分を一時停止にしたとのことです。職員はマスクが売っていなかったと説明したようです。
確かに、当時の状況を鑑みると、マスクは品薄であり購入することは困難な状況でしたので、一応合理的な理由がある説明であると思います。雇用主としては、職員の説明を聞いた上で他に選びうる措置(法人や他の職員がマスクを提供する、ハンカチで口を隠すよう指示する、会議室からの退室を求める等)を採るべきであり、懲戒処分をするまでのことであったかどうか慎重に検討すべきであったと考えます。
このように懲戒処分の仕方を誤ると社会的な非難を浴びることにつながりますので、処分の手続・処分の選択に慎重な対応が求められます。
2020.5.11付け47ニュース
https://www.47news.jp/4800855.html
5 紛争を回避するために
一般的に、会社が労働者に対して業務命令違反等を理由として懲戒処分をする場合、弁護士等の専門家に事前に意見を聴取し、適正な手続を取り紛争が生じることを防止することが求められます。
6 参考になる裁判例の紹介
上記の【相談の一例】とは事案が異なりますが、下記の東京高判は、バス会社がバスの運転手に対してマスクの着用を禁止した措置は、マスクの着用が接客業として良い印象を与えない等の理由から、当該事案においては、不合理ではないとしています。
現状は新型コロナウィルスの感染防止が社会的に求められていますのであまり想定できませんが、マスクの着用を禁止する業務命令等を出すことは非常に危険であると考えています。業務命令権の濫用による損害賠償請求・社会的な非難のリスクがございますので、事前に弁護士に確認を求めることが肝要です。
【東京高判平成19年2月15日労働判例937号69頁】
(判示事項)
(東京高裁の認定判断)
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