遺留分侵害額請求のご相談に対応しています
【父が残した遺言書で不平等な取扱いを受けたので遺留分侵害額請求をしたい】
【遺留分侵害額請求の通知書が弁護士から届いたが、どう対応すればよいかがわかならない】
など、遺留分についてのご相談が多く寄せられていますので、遺留分侵害額請求について記事を公開いたします。是非、参考にしてください。
【父が残した遺言書で不平等な取扱いを受けたので遺留分侵害額請求をしたい】
【事例】
経営者であった被相続人(父)が、遺言書を作成し、死亡しました。配偶者(母)は、既に死亡しています。父には長男と長女がいます。被相続人(父)は、事業を引き継いだ長男に多くの財産を残したいと言っていました。
父の遺言書は、
〇 事業を引き継いだ長男に会社の土地・建物(評価額1億1123万円)を相続させる、
〇 長女に預金1234万5678円を相続させる、との内容でした。
遺言書の内容に不平等があることから、長女は、長男に対し,遺留分減殺請求を行いたいと考えています。長女は、どの程度の請求ができますか。(法務省作成の資料を改変した事例です。)
【結論】
長女は、遺留分侵害額として1854万8242円を請求することができます。
計算式は次のとおりです。
遺産総額(1億1123万円+1234万5678円)
×遺留分割合1/2
×法定相続分1/2
-1234万5678円=1854万8242円
1 - 遺留分侵害額請求とは
(1)遺留分制度とは
遺留分制度(民法1042条以下)とは相続人の保護という趣旨から、亡くなった方(被相続人)の財産のうち最低限割合の承継を、一定の相続人に保障する制度です。
例えば、被相続人の全財産である5000万円全てを、特定の子供だけに相続させるという遺言を行った場合であっても、一定の相続人は、遺留分(民法1042条)があるとして、その受遺者又は受贈者に対して、侵害された遺留分相当額を請求することができます(民法1046条)。
このような遺留分制度が認められている趣旨は、被相続人の財産処分の自由を尊重した上で、遺族の生活保障等として相続人の保護の要請との調和を図ろうとするものです。
そのため、上記のように一人の子供に全てを相続させるような遺言も有効ではありますが、その者に遺留分侵害額請求をするかどうかは、各遺留分権利者に委ねられています。
遺留分権利者が、遺留分侵害額を請求したい場合は、何もせずに金銭が得られるわけではなく、相手方に対して「請求」をする必要があります。
遺留分権利者が、受遺者又は受贈者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭支払いを請求することで、遺留分侵害額請求(※)を行使します(民法1046条)。
※平成30年改正前民法では、遺留分減殺請求権という名称でしたが、法律改正によって、「遺留分侵害額請求」との名称に変更され、受遺者又は受贈者に対する「金銭請求」(お金の支払を求める)に改められました。
(2)具体的な遺留分の計算
ア 遺留分権利者
遺留分は、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に認められます(民法1042条1項)。
つまり、被相続人の配偶者、子、直系尊属(父母等)等が、遺留分権利者になります。
イ 遺留分の割合
遺留分侵害額請求として、自分の確保できる取り分は、遺留分の割合と法定相続分の割合を掛けた額です。
遺留分の割合は、
① 直系尊属のみが相続人の場合は遺産の1/3、
➁ それ以外の場合は、相続財産の1/2となります。
(民法1042条1項1号及び2号)
例えば、相続人が妻と子供の2人のみであり、被相続人が子供に対して全財産1億円を相続させるという内容の遺言を残した場合には、妻(配偶者)の取り分は、遺留分割合たる相続財産の1/2に、法定相続分である1/2をかけた、1/4となります(民法1042条1項及び2項、民法900条1号)。
つまり、妻(配偶者)は全財産1億円の1/4である2,500万円を、子供に対して請求することができます。
2 - 遺留分侵害額請求する場合
以上でみてきたとおり、一定の相続人は遺留分侵害額請求を行うことで、自己の取り分を金銭で請求することができます。
遺留分侵害額請求は、相続が開始してはじめて認められます。
もっとも、注意が必要なのは、期間制限があることです。遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しない場合には、時効消滅してしまいます(民法1048条)。
また、侵害の事実等を知らない場合であっても、相続開始から10年を経過した場合にも請求ができなくなります(民法1048条)。
そのため、遺言書の内容が不平等であるとして、遺留分侵害額請求をしたい場合には、早急に弁護士に依頼することをお勧めします。
3 - 遺留分侵害額請求をされた場合
他方で、遺留分侵害額請求をされた場合、「自分が譲り受けた財産なのに、一部を渡さないといけないのか」等と疑問をもたれる場合もあるかもしれません。
しかし、上述したように、遺留分は民法上の制度として認められており、配偶者や子供等の遺留分権利者から請求をされた場合には、その額を支払う必要があります。
もっとも、遺留分権利者の請求が誤っている場合、請求額が過大である場合や、相続財産の土地建物等の評価が困難である場合や、株式が含まれる場合には、相手方が請求の基礎にしている財産の評価額が適正かどうかを具体的に判断する必要があります。
例えば、請求者が不動産の評価額を過大に見積もっていることが判明すれば、支払額が大幅に減少することになります。
不動産の評価額等が実態に合ったものであるかなどの調査をした上で、適切な主張をすることで、相手方の請求額よりも少ない額で対応すれば問題がないケースもみられます。
特に、地価の高い東京都の物件に多いのですが、不動産の評価額が間違っていると、数百万円~数千万円の相違が出てくることもありますので、注意が必要になります。
遺留分侵害額請求がされた場合、早期に弁護士にご相談いただければ、請求内容や事実関係を確認した上で、適切な対応をすることができます。
弁護士とともに、事実関係の確認や評価額の確認を進め、法律に沿った対応をするのが肝要です。
4 - 弁護士に依頼するメリット
(1)専門家による心強いサポート
遺留分侵害額請求は、遺留分割合や、遺産の評価、時効の期間経過の有無等を具体的に考慮する必要があります。また、実際に遺留分侵害額請求をする場合も、遺留分侵害額請求に経験のある弁護士に依頼することで、適切に請求をすることができます。また、遺留分侵害額請求を受けた場合も、実際の請求額が間違っていないのかどうか分析的な判断をすることができます。訴訟になった場合において適切な対応ができるのは弁護士だけです。
(2)複雑な交渉を弁護士に頼める
遺留分侵害額請求について交渉を行う場合に、相手方とどのよう交渉を開始すべきか、どのような主張をすべきか等は、個別事案に応じて異なります。また、遺産に関する評価等の調査は煩雑であり、難しいことから、精神的負担も大きいと考えられます。そういった交渉を弁護士に任せることで、ご依頼者様の負担が減り、ストレスが解消されることになります。
5 - よくあるご質問
【最高裁判所の判例】(遺留分制度の趣旨)
最一小判平成13年11月22日民集55巻6号1033頁
「遺留分制度は、被相続人の財産処分の自由と身分関係を背景とした相続人の諸利益との調整を図るものである。民法は、被相続人の財産処分の自由を尊重して、遺留分を侵害する遺言について、いったんその意思どおりの効果を生じさせるものとした上、これを覆して侵害された遺留分を回復するかどうかを、専ら遺留分権利者の自律的決定にゆだねたものということができる。」
このように遺留分侵害のある遺言書は有効ですが、遺留分侵害額を請求するかどうかは遺留分権利者の判断にゆだねられています。正確な判断をするためにも弁護士に相談することがよいと考えています。
遺留分侵害額請求に関する交渉の弁護士費用
法律相談料について
・初回法律相談は、遺留分侵害に関する通知書を受け取った方など、1時間無料の適用が受けられます。
1時間を超えますと30分当たり5500円(消費税込み)がかかります。
・2回目以降の法律相談は、30分当たり1万1000円(消費税込み)がかかります。
示談交渉の弁護士費用について
・着手金 30万円(消費税別)~になります。
・報酬金 遺留分侵害額請求の回収した金額を経済的利益として算定します。
請求された額から減額した金額を経済的利益として算定します。
・算定方法は次のとおりです。
経済的利益の額 報酬金
300万円以下の部分 16%
300万円を超え金3000万円以下の部分 10%
3000万円を超え金3億円以下の部分 6%
3億円を超える部分 4%
※例えば300万円の請求をし同額を獲得した場合の報酬金は、原則として以下の算定になります。
報酬金52万8000円(300万円×16%×1.1。消費税込みの算定になります。)
※事案によって異なりますので、お問い合わせください。ご相談者様の経済的な状況、事案の内容によっては、着手金の減額、分割支払に対応しているケースもあります。
※ご相談者様の経済的な状況、事案の内容によっては、事件終了時に報酬金を算定する割合を下げることや報酬を減額することなど柔軟な対応をしております。
※交渉から調停手続又は訴訟手続に移行する場合には別途着手金が必要になります。
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飯田橋法律事務所 弁護士 中 野 雅 也
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