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【飯田線各駅訪問】87 北殿駅

私の乗ってきた下り列車が上り列車と行き違いする。思わずポイントレールが正常か確かめてしまう…。
南箕輪村の中心駅となっている。

南箕輪村の中心駅

 私の乗っている列車が徐々に減速する。「まもなく、北殿、北殿です」先の方に2面2線の構内と、対向の普通列車が見えてきた。
 かつてこのあたりが「殿村」という地域であり、その北部に当駅があることが駅名の由来となっている北殿駅。現在では駅の所在する南箕輪村の中心駅という役割を果たしている。

 さて、いきなりだがこの駅では、かつて悲惨な事故が発生している。JR化後の1989年だというのだから、鉄道史でみればかなり最近。当駅に停車中の下り普通列車に、上り普通列車が正面衝突したのだ。
 原因は運転士の信号確認ミスだというが、その事故当時 列車に遅れが発生していたなどいろいろイレギュラーであったので、個人を責めることはできないだろう。死者が出なかったためそれほど有名な事故とはなっていないが、実は日本の鉄道史を語る上で重要な事故が、この駅では起きているのだ。

 そんな北殿駅に、私の乗ってきた列車が入線して行く。思わず分岐のポイントレールが正常であるか確認してしまった…しかしレールは上の写真にもある通り正常で、事故は起こることはなかった(当たり前)。
 駅は元は木造駅舎だったが、のちに新しい駅舎に建て替えられた。そんな駅に私は列車で“来たとの”ことである(寒)。
 ちなみにこの駅は、ある意味難読なのかもしれない。「きたどの」とも読めるのだ。濁点がつくかつかないかなんて大した問題ではないと思われるかもしれない。しかし濁点をつけてしまうと、そのダジャレが言えなくなってしまうので、正しくは「きたとの」だと覚えておいてほしい。

※再訪の予定がありますので、達成次第 追記致します。


長野県上伊那郡南箕輪村・北殿駅。
2番線のあの形状の待合所は、この近辺の駅で多く見かける。
南箕輪村の中心駅として、「まっくんバス」が運行されている。
カーブした2本の線路。美しさに思わず息を呑む。

再訪日記

 さてここ北殿駅は、以前 飯田市から長野市まで鉄路で行く途中に視察しただけであった。そのため今回の「上伊那北部駅訪問旅」の10駅目として、下島駅から電車に乗って訪問することにしたのである。
 この駅訪問旅では北の辰野町内の各駅から一度南方の駒ヶ根市まで南下し、そこから徐々に北上していくというのが大まかな流れとなっていた。そのためこの日の午前中に1度、当駅を上り列車で通り過ぎたのだ。…が、ここで事件(?)が起こる。列車が遅延していたのだ。「北殿駅」で「上り列車」で「遅延」というと見事に、上記した「北殿駅列車正面衝突事故」の条件と重なるのである。
 しかし駅に着いたが、そもそも対向の下り列車がなかった。この駅でまず、列車交換自体が行なわれなかったのである。だめじゃこりゃ、当たり前のことだが正面衝突事故なんて起こそうにも起こせない。

 さて、つまらない冗談からは戻ろう。その日の午後に再びこの駅へ電車でやってきて、今度は下車した。さぁついに、この北殿駅へ来たとのことだ!(2度目)。観察を始めよう。
 駅舎はそこそこ新しく、その上 暗い雰囲気ではないので居心地は駅はかなり良さそうだ…と思ってみたのだが、なぜか屋根がない。え?これじゃぁ雨の日とか意味ないじゃん…後で調べてみたところ、この屋根のない場所にはもともと南箕輪村の象徴・アカマツの木が植えてあったらしい。今では伐採されて跡形もすらも無くなってしまったが、そう言う事なのかと納得した。ちなみに駅舎内の待合ルームにはちゃんと屋根があるし、締切も可能である。
 駅周辺を歩き回っていると、ふと見えた構内に息を呑んだ。別に格段に綺麗な景色なわけではない。しかし、カーブした2本の線路とその先に見える駅が、私にはなんとも美しく思えたのだ。確かに、落ち着いて考えればただの「鉄」であるかもしれないし、美しく感じた理由なんてない。ただ、何だかそんな直感的で純粋に美しいと思えることって、良いことだな…
 隣の木ノ下駅から乗車する次の列車に乗るために、そろそろここを出発しないと間に合わない。訪れる前は列車事故のイメージしかなかったが、そんな捉え方をしてはいけなかったな…なんて思いながら、名残惜しいながらもこの駅を後にした。

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