【飯田線各駅訪問】75 田切駅
築堤上へ移転した駅
ここは長野県上伊那郡飯島町の北部に位置する、田切駅。1面1線の構内に待合室を持つ小さな駅だ。どうでもよいことなのだが、私のアイコン画像となっている駅である。(2024年10月にアイコンを変更いたしました。)
さてこの田切駅、鉄橋の上でこそないものの、築堤上に存在している。当然ながらホームも幅がかなり狭く、「黄色い点字ブロックの内側までお下がりください」と言われてもそのスペースは30cmほどしか無いほどだ。
なぜこのような危険な場所に駅を作ったのか…疑問に思うが、実は元は、今より更に危険な場所に駅があった。なんと、半径140mほどの急カーブに存在していたのだ。これは路線内でも随一の急カーブ駅として知られる、飯田市の切石駅よりも急である。
そこで、その急カーブから場所を移転させた結果が、現在の築堤上なのだ。元の田切駅があった場所は、駅舎はおろかホームも跡形もなく消えたが、「田切駅舎跡記念碑」が建てられた。私有地となっているので、許可を得て見に行ってみよう。(ちなみに私が訪れたときは、ちょうど家の方が農作業中だったので運が良かった。)
魅力はそれだけでは尽きない。この田切駅から北に行くと、飯田線でも撮影の銘所として知られる「田切カーブ」が存在するのだ。このカーブを弧を描きながら走る列車と、バックの中央アルプスを撮ろうと、鉄道ファンが集まり続ける場所である。列車撮影でなくとも、この区間は、乗車していると車窓の両側に絶景が広がる素晴らしい場所だ。
また、この田切駅には“もう一つの”ファンが集う。鉄道ファンでなくても、この田切駅を知っている方がおられるだろう。
そう、この田切駅は数々のアニメに登場するとして、“聖地”となっているのだ。私はアニメはあまり分からないので多くは語れないが、ここが他では見られないような特徴的な駅であったからこその結果だと言えよう。アニメファンの彼らにはぜひ、列車で訪れてもらいたいところである。
こういったように魅力に溢れる駅だが、その実態といえば、周囲の駅より圧倒的に利用者の少ない地道な駅となってしまっている。しかも近年、飯島町〜駒ヶ根市にかけて、国道153号のバイパスが完成した。長さ1500mにもなる“中央アルプス大橋”を筆頭に、次々と新しい道が作られる。便利になる一方だが、その裏には、鉄道離れが進んでいってしまう事実があるのだった…。
なお、路線内には他にも「たぎり」とつく駅がある。駒ヶ根市にある「大田切駅」だが、
この2駅に直接な関係性はない。ただ共通点として、上り列車で大きな川を渡った先にあるということが挙げられる。並走する中央自動車道でも、北から順に「太田切川」「中田切川」「与田切川」とある。田圃の広がる長閑な地を突っ切っていたことから「田切」の名称がついたのかな、と勝手に予想したのだった。
(この予想は大外れで、正しい意味は「傾斜地やがけなどで、水が早く走り流れ落ちるさま」ということだそうです。wikiぺディアより)