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【飯田線各駅訪問】61 桜町駅

飯田市街地に、飯田駅とともにもう一つ存在する駅。
駅舎と直結したホーム屋根。
桜をかたどった看板、タイル、装飾、カーテン…そして何より、この駅のホーム上に桜の大木がある。

桜への執念

 ここ桜町駅は、飯田駅の他に 飯田市街地にもう一つ存在する駅だ。飯田市の桜町という街にある当駅は、駅付近に「桜並木」があるのも特徴だ。この「桜並木」は、かつて飯田市街地で大火事が起きたとき、その教訓としてつくられた幅の広い道。飯田線の線路もここを横切っており、春には車内からも桜が見られる。

 この駅の特徴はそれだけでは尽きない。まず、駅にやってきてみれば気がつくだろう。入り口の駅名標は桜をかたどったユニークなものとなっている。ふと足元を見れば、床のタイルは桜を模したもので、この駅の”桜への執念”を感じざるを得ない。
 駅舎は締切不可のものだが、中には桜の装飾がある。駅はかつては有人駅だったが、現在は無人化されてかつての業務室はカーテンで閉ざされている…が、そのカーテンまで桜模様だ。どれほど桜が好きなのだろう…と、ホームでふと見上げれば…そう、そこには本物の「桜の大木」があるのだ。

 駅舎とホーム上の屋根は一体化しており、私鉄当時からの駅舎か…と思いきや、先ほども話にだした「飯田大火」で、当駅の駅舎は燃えてしまったようだ。現駅舎はその後に建て直されたものということになる。
 駅付近は寂れてしまったような街並みだが、この駅はまだ、現役だ。古き美しさが輝き続けている。

夕焼けに染まる列車が、まもなく発車する。

 私がいつも通り(?)、学校帰りにこの駅に寄っていると、やがて列車がやってきた。駅に私以外には誰も居なさそうなので、列車は次の伊那上郷へ向けて発車しようとしている。
 ところが、そこに、この列車に足止めされて踏切に引っかかっていた高校生たちが慌てて走ってやってきた。私は車掌さんにそれを告げ、車掌さんはしばし発車を“待った”した。つまり、乗り遅れている人がいないか、という確認業務を、私がやってしまったのである。飯田線の役に立てたのが嬉し過ぎた、ただそれだけである。そして、その時に撮った一枚が上の写真だ。

駅の花壇は、春にはミニ水仙に彩られる。

 桜町駅を彩るミニ水仙。普通の水仙と比べると背丈が低いことが特徴だ。小さな花々だが、その明るい黄色は見るひとに元気を与える…。
 そこへ数人の男子高校生がやってきた。「おぉ〜、これ水仙じゃん」「にしてはちっちゃくね??」と話している。彼らは意外と花の知識があるようだ。
 花々に彩られたこの駅の日常である。

駅舎はあちこち傷み出しているが、まだまだ健在。

 駅舎のホーム上の柱に、戦後僅か2年後からの生い立ちを見る。この年の4月にあった“飯田大火”から、12月に復活したものだと思われる。
 飯田大火とは、1947年4月に長野県飯田市で発生した超大規模な火災である。戦後すぐのことだが、いま現在の市民の中でも知っているひとは多い。
 この“飯田大火”は、飯田市の建物が密着して建てられたことによって燃え広がってしまったため、市街地を隅まで焼き尽くすこととなってしまった。そのため「幅の広い道路を」という考えから、駅付近の「桜並木」ができたのである。

整然と羅列しているホーム上の柱が、まっすぐな線形によく似合う。駅の先には野底川橋梁が構え、人家の合間に遥か先の南アルプスを臨む。(画質が悪くてそこまで写らなかった…。)
駅は春先には桜色に染まる。
夜の桜並木を、列車が通過していく。

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