【飯田線各駅訪問】71 高遠原駅
澄んだ清々しい朝
ここは高遠原という長閑な駅。その名の通り、駅は高原のような清々しい空気で包まれており、人家はわずか5軒ほどしか見えない。駅背後の丘の上の方には交通量の多い県道が通っているが、車の騒音など気にもかからないくらい美しい場所である。待合室は古いが補修されており、壁面にかつての業務窓口の跡が伺えるのが興味深い。
今回の駅訪問では、プランの関係で走ってこの駅へやってきた。時刻はまだ6時半、これから1日が始まると言うのに朝のうちから体力を消費したくなかったのだがしかたがない。
しかし、走っているうちになんだか清々しい気持ちになってきた。徐々に日が昇り、雄大な中央アルプスの姿が浮かび上がってくる。まだ車通りも少ない時間帯、車の騒音よりも付近の川のせせらぎのほうがよく聴こえる。次第に朝の高原の冷たい風を心地よく感じてきた。
主要道から小道へ折れて進むと、その向こうに小さな駅が見えた。ここが高遠原駅だ。朝陽が空を染める中、静かな駅は佇んでいる。
程なくして、373系の上り普通列車がやってきた。飯田線では特急伊那路として使用される車両だが、この朝早い時間帯ではまだその出番は来ず、普通列車として走っているのである。誰も降りず誰も乗らず去っていく。その373系と大沢信号場で列車交換した下り列車がやってきた。私はその列車に乗り、この長閑な駅を後にした。
この高遠原駅は、開業時は終着駅としてたいそうな賑わいを見せた。しかし路線の延伸によって終着駅でなくなると、市街地もそちらの方へと移って行ってしまい、この地は元の静けさに戻ったのであった。更には飯田線の国有化の際に一時廃止されてしまうが、戦後に復活したという。
そういった経歴からか利用者は数少なく、至って静かな美しい駅だ。きっと明日も清々しい朝が、この高遠原駅には訪れるのだろう…。