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【飯田線各駅訪問】59 切石駅

締め切り可能な待合室がある切石駅。飯田線で最もカーブのきつい駅として知られる。
急カーブのホームに、列車は車体を傾けながらゆっくりと止まる。
急カーブ駅の構造上列車とホームの間が広く開くため、駅の至る所に注意書きがある。

珍妙な立地も魅力の一つ

 この切石駅は、急カーブの駅として知られる駅だ。飯田線には当駅以外にもカーブ上に設置されている駅はあるが、中でもこの駅は半径160mと、飯田線で最も急カーブ上にある駅となっている。
 駅は長野県南部の中心地・飯田市の鼎地区にある。伊那八幡まで天竜川沿いを北上してきた線路は、飯田の市街地を経由するために切石松川の手前で進路を西に変更する。鼎の市街地を進み、そこから飯田市街地へ向けて北上するために、進路を北へ変更しようと右に急カーブした、ちょうどそのカーブ上に当駅がある。

 当然ながら列車とホームの隙間が広く開くため、ホームから乗り降りするときには危険が伴う。その事故を予測してのことだろうか、ホーム入り口の階段横、待合室の外壁、ホーム上の地面など、至る所に注意書きがある。列車の定刻運行と利用者の安全確保のためだろうが、あまりの注意書きの多さにはかえって「脅しか??」と問い返したくなってしまう(笑)。
 この駅の”ネタ”はそれだけではない。豊橋駅〜飯田駅の間にある当駅は、1日に4回 特急伊那路が通過する。ただ、そのときのアナウンスに問題がある。「まもなく列車が参ります。危険ですから、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください。列車とホームの間に、広く空いている箇所がございます。足元に、ご注意ください。」よくある急カーブ駅のアナウンスだが、特急が通過するのに「列車とホームの間に広く空いている箇所が」あるのは、それはそれで安全なのではと思わず疑問に思ってしまう。
 こんな“興味深さ”の詰まった駅だが、魅力はそれだけではない。駅の飯田駅側にある、「飯田松川橋梁」を走る列車の勇姿は何度見ても見飽きない。それに、地図を見れば分かるのだが単に利便性を考えるのならば、飯田線はこんな線形には敷設されなかったはずである。飯田の市街地を経由するために段丘上に上り、川を跨ぐために上流側へ線路を曲げる。鉄道にはこうした魅力も重要であるし、こうした魅力があるからこそ、鉄道ファンをやめられないのである。

2023.12

空が徐々に明るくなってきた。駅の目覚めである。
コトコトと列車が走る長閑な風景。線路が屈曲し不便だと言えど、その沿線の私たちを潤してくれる存在である。

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