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【飯田線各駅紹介】69 上片桐駅

下伊那の最北端に、特徴的な形の駅舎があった。
2面2線の交換駅。近隣の高校生が通学で多く利用する駅だ。
早朝の2番線に快速みすずが入線してきた。待合所は、路線内の秘境駅にありがちな簡易な上家。

鉄道の「ありがたさ」とは

 ここは下伊那では最北となる、上片桐という駅だ。長野県の下伊那郡松川町に所在する2駅のうち こちらは無人駅であるが、近隣に高校があるために利用者は多い。また伊那大島駅までは路線内有数の長距離駅間であるため、“利用者競争”もおこらないようである。

 2面2線の相対式交換駅で、駅の伊那田島方には以前のセメント工場跡が更地となって残っている。かつてはそこにも線路が通っていたというのだから、鉄道遺産的に見て魅力のある駅だといえよう。
 駅舎の方はと言うと、新しくて斬新なデザインでなかなか面白い。しかし駅舎内の待合室は外へ向けて完全にガラス張りである上に締切はできないため、居心地は今ひとつといったところだろうか。

 今回私は隣の伊那田島駅から、極寒の中を歩いて訪れた。12月の早朝、前もよく見えないほどの闇の中にある秘境駅・伊那田島から 街の中にある上片桐まで歩いてくると、不思議と安心感を覚えた。やはり人は、人の気配のあるところにいるべきなんだ…そんなことを感じて駅の撮影をしていると、迎えの快速列車がやってきた。暖房の効いた列車内に足を踏み入れると体が芯から温まるような気がした。
 鉄道は、自分の生活のために利用するものだと言うのが当たり前のことである。しかし、そんな普段「当たり前」だと思っていることのありがたさを感じること、そしてその「当たり前」に興味、関心をもつことも重要だ。自らの利益を追求することが“美学”とされる資本主義社会において、この考え方は人々に欠乏しているように思えなくもない。そんなことを考えながら、小さい駅を続け様に通過していく快速列車に揺られていた。

訪問日:
2023年12月28日

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