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そのままの姿がうつくしい。京都の老舗がさりげなく装いに格式を添える、絲 tabane(たばね)の金糸アクセサリー
ー作り手
華やかなゴールドが幾重にも束ねられ上品で洗練された雰囲気のネックレス。実はこちら金属製のチェーンではなく、「金糸」という京都の伝統工芸品で作られています。
金糸とは和紙に金箔(銀箔を貼ったものは銀糸となります)を貼り、細く裁断したものを絹や綿の芯糸に撚りつけて作られるもので、能や歌舞伎の衣装装束や西陣織等の雅な着物、お祭りの御神輿や山車の刺繍幕、大相撲の化粧まわし等々、特別なシーンで使われています。
『動く美術館』と称される京都、祇園祭の山鉾。金銀糸で刺繍が施された懸装品がかけられています。
西陣織のお膝元、京都紫野にて伝統的な製法で金銀糸作りをしている株式会社寺島保太良商店から誕生したアクセサリーブランド「絲 tabane(たばね)」は、「純金の糸を用いたジュエリーアクセサリーのあたらしいかたち」をコンセプトに、普段あまり馴染みがない金銀糸の魅力を、身近に使えるものにして提案しています。
ブレスレットはS、Mサイズと自分にフィットするサイズを選べます。また束ねた金糸を支える金属部分は純金純銀に加えて、漆塗を施したものも。実は漆は金銀糸の光沢を決める一番重要な存在。強度や美しさを増すだけでなく、金銀糸アクセサリーとしての意味性も深めています。
(左から)ほんのりベージュの白漆、ターコイズブルーにも近い舛花漆、黒漆、銀、暗めの赤を帯びた茶色の弁柄漆、金。6色展開で色選びも楽しみの一つですね。こちらはピアス。
耳元で優雅に揺れるイヤリング。上品な光を放つ金糸は顔まわりを華やかに見せてくれます。洋装、和装、選ばず使えるデザインです。
ジョイント部分にマグネットを使用しているので着脱もスマートに。このロングタイプのネックレスは金糸部分をひねることができるので、束が生み出す陰影で様々な表情が楽しめます。長年愛用することで漆が剥がれたり、金糸が切れたりしても、塗り直しやパーツ交換などの修理もお任せできるので安心です。
ーものがたり
京都に老舗が多くある理由のひとつに、
「過去100年続いてきたものを、100年先の未来に残す為に今がある」という考えのもと、日々商いをされているからと聞いたことがあります。
明治30年に創業し、令和の今も職人による伝統工法で、金銀糸を作り続けている寺島保太良商店さんもそんな京都の老舗のひとつ。
漆を引き終えた和紙に金箔を箔押ししている様子。
こちらの動画でも作業の様子を見ることができますが、1万分の3㎜という薄さの純金箔を狂いなく貼りこんでいく技術は熟練の職人さんならではです。
この工程で使用する純金箔は5800枚とのこと。5800枚分の繊細な作業を集中力を切らさず続けて行う職人さんの作業を想像するだけで、頭が下がる思いです。
4代目の寺島大悟さんです。手捻りした金糸を巻き取っていく「金糸かけ」という作業をしていらっしゃいます。
他の伝統工芸品と同様、金銀糸も需要が減ってきているのは悲しいけれど事実とのこと。このままだと技術を持った職人までも少なくなり、求められた時にお渡しできない、そんな危機感があったそうです。そこで寺島保太良商店さんは、金銀糸を絶やさないために新たなチャレンジをする必要があるとお考えになられていました。
これまで純金箔で制作する金糸は使用されるシーンが非常に限られていました。西陣織の帯地であったり、能や歌舞伎の衣装装束、大相撲の化粧まわし、祭りの刺繍幕であったりです。それゆえ金銀糸という素材を世間一般に知っていただける機会が今までございませんでした。
そこで「京都にはこんなにきれいな糸があるんだよ」ということを広く皆様に知っていただける活動が必要であると考え、純金の糸をジュエリーに見立てたアクセサリーブランドに取り組むようになりました。
様々な可能性を探る中、アクセサリーブランドに取り組むきっかけとなったのが、金銀糸を見たジュエリーデザイナーの一言だったそうです。
「そのままの姿がうつくしい。」
いち素材だと思っていた金銀糸そのものが商品になるなんて、と眼から鱗が落ちたそうです。金銀糸を用いたアクセサリー「絲 tabane」が生まれた瞬間でした。
金銀糸、漆塗り、飾り金具の職人が持つ古くからの技術と、デザインクリエイターの新しい感性が出会い、それぞれの知恵と想いがたばなって生まれた商品であること、金銀糸の束の表情をシンプルに表現できることから名付けらた「絲 tabane」。とても素敵な物語がブランド名の背景にありました。
ー想い
古代、アクセサリーは敵から身を守るものだったそうです。その後、身に付けるものが御守りから宝物になり、それが転じて人を美しく彩るものになりました。
金の輝きの持つ意味合いは「永久不変」「名誉」「繁栄」「高貴」をあらわし、銀の輝きの持つ意味合いは「誠実」「純潔」「破邪」「魔除け」を表します。そういった金銀光沢を放つ糸は古来より高貴な身分の方々の衣装装束や、日本各地の寺社祭礼幕に用いられてきました。
金銀糸には歴史的な意味合いも含めた重層的な魅力があるのではないかと思っております。
金銀には、その特別な輝きを糸にうつし新たに形作ることで、人々の良縁を結びつける力があるとも言われているそうです。
そう考えると、祈りにも近い想いを込めながら古より作られてきた金銀糸で、現代の人々を美しく飾るアクセサリーに仕立てたのは、”偶然の必然”のような不思議なご縁を感じてしまいます。
身に付けることが伝統を守ることにもつながる「絲 tabane」のアクセサリー。心なしかいつもより背筋がしゃんと伸びるようです。