白鷺木工が大切にする、ものづくりのバランス感覚
ー 作り手
石川県にある山中温泉。その温泉街よりずっと山の奥の方に工房を構える白鷺木工さんは、三世代に渡り伝統工芸品の山中漆器を中心に、”丸物木地”と呼ばれるお椀やお盆といった円型の木の器をつくり続けています。
そんな老舗の木地挽物メーカーである白鷺木工さんが新たにオリジナルブランドとして立ち上げたのが「SHIRASAGI」。
「SHIRASAGI」は気軽に楽しんでもらえるうつわでありながら、長年の知恵と技術で木の持つ素朴な風合いを活かし、人の手に馴染んで永く使い続けていただけるように、職人さんが一つひとつ心を込めて製作されています。
また、国産木だけを使い、正真正銘の真面目な日本製を追求しているのも白鷺木工さんのこだわりのひとつです。
ー ものがたり
丸物木地とは円形の木の器で、椀、盆、丸膳など丸い形の日用食具のことをいいます。
それらを原始的な「手びきろくろ」と「ろくろかんな」といった手法を匠に使い分けて仕上げる、いわゆる挽物(ひきもの)と呼ばれているジャンルにあたります。
白鷺木工さんでは、国産天然木の、欅(ケヤキ)、桜、楢(ナラ)、栗、楓(カエデ)などを月に3回買い付けして、納得できる木のみを選別。国産の天然木だけを使い、そこから先全ての工程を地元山中温泉で完結することにこだわりを持っています。
木材の使い方にはとくにこだわりがあり、縦木取りという強度がある木取り方法によって材料を切り出し、それを木工ろくろでていねいにくり抜いて製作します。
オリジナルブランド「SHIRASAGI」を開始する前は、卸のメーカーとして日々ものづくりと向き合ってきた白鷺木工さん。
漆器に向き合い続けるうちに、もっと若い世代の方が手に取ってくれるようなものを作りたい。そんな想いから誕生したのが「SHIRASAGI」です。
「漆器だから」ではなく、漆器とは知らずにそのデザイン性に思わず手に取ってしまうような商品を目指して開発をされているそう。
ブランド名、そして工房名にも取り入れている「SHIRASAGI」の由来は、山中温泉の歴史から。
山中温泉は、古くから病と疲れを癒す湯として地域で知られていました。そんな中、その近くの山陰の小さな流れで白鷺が傷めた足を癒している姿を見つけ、その場所を掘ると美しい温泉が湧き出し、その温泉付近に12件の旅館を開いたと言われています。
地域とのつながりを大切にされている白鷺木工さんは、山中温泉が全国に知られるきっかけともなった ”白鷺” を自身の屋号として名付けたそうです。
ー 想い
挽物は、木工製品ではもっとも量産が可能な技法なため、木取り・粗挽き・仕上げ挽きを分業することが昔から業界の常識となっていますが、白鷺木工さんは原木の木取りから仕上げ挽きまでトータルで手がけています。
しかし、量産が可能な技法であるからといっても、オートメーション化した工業製品とは性質が全く違います。
また一方で、個人で製作する作品のように、時間をかけて生み出す一点ものでもありません。
手工業によって一つひとつに気持ちを込めてつくることを大切にしながらも、同時に斉一性量産化にも重点をおく。そのバランス感覚こそが、上質な器を使いたい人に届けるための最適な答えだと、白鷺木工さんは考えます。
とりわけ日本人になじみ深い椀や盆などの丸物木器に携わっているからこそ、引き継がれてきた伝統工芸の良さを絶やさぬよう守り、その上で最適な量産化のための技術を極めることで「丸物木地の挽物」を世界に誇れるものづくりとして継承していくこと。
それが山中漆器を背負う白鷺木工さんの想いなのです。
ー 作り手情報
白鷺木工(シラサギモッコウ)
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