大事なことが法律に書かれているとは限らない-「合意は守られるべきである」
<2188> Pacta sunt servanda.(Burchard, Decr.1, 35, 1, Summarium)
— 良いアライグマ (@iiaraiguma) June 12, 2021
「合意は守られるべきである」#ローマ法格言 #ラテン語格言
約束は守らなければならない、と最初に言ったのは誰だろう。少なくとも、日本の法律にはそんなことは書いていない。もちろん、法律に書いていないルールは沢山あるし、法律に書いていないからと言って、何をしても構わないというわけではない。
でも、大事なことって、法律に書いてあるんじゃなかったっけ?
初めて見た時に感動したのは、例えば、民法1条2項には信義則の規定、民法412条以下には債務不履行責任の規定があるけど、日本の法律のどこにも「合意は守られるべきである」とは書かれていないというところ。多分、「人を殺してはならない」と法律に書いてないのと同じなんだろうな。
— 良いアライグマ (@iiaraiguma) June 12, 2021
人を殺した場合は死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する、ということは、法律にはっきりと書いてある(刑法199条)。しかし、「人を殺してはならない」とはどこにも書いていない。刑罰を受ける覚悟さえあれば、人を殺してもいいのだろうか。
もちろん、人を殺した場合に刑罰が課されるということは人を殺してはいけないということを書いてあるのと同じことだ、書かれた内容を禁止する命題として読むべきだ、刑罰を受ける覚悟があっても人を殺してはいけないことは当然だ、という考えもあるだろう。僕も、人を殺して良いと思っているわけではない。
「ぼくはこうおもう。ここで見ているのは、ただの〈から〉。いちばんだいじなものは、目に見えない……」(サン=テグジュペリ『星の王子さま』)
王子さまは言った。本当に大事なものは、目に見えない。ひょっとすると、本当に大事なことは、法律にも書いていないのだろうか。少なくとも、法律の格言にあるような、誰も争うことのできないような原理原則でさえ、法律に書いていないものは幾つもある。
むしろ、大事なものが、詩や小説は書いてある、ということもあるんじゃないか。他の誰も気付かなかったような、読む人にとっての規範たるべき何かが。