始まり|小澤南穂子【ヒコウキグモ】

芸劇eyes番外編 vol.3「もしもし、こちら弱いい派─かそけき声を聴くために─」参加作品『薬をもらいにいく薬(序章)』無事、本番を全て終えることができました。おめでとうございます。ありがとうございます。ありがとうございました。

とても楽しかったです。

こんなに純粋な「楽しかった」を感じたのは何年ぶりだろうというくらいに楽しかったです。そのせいで私は、まだまだ”現実”に戻れそうにありません。
昨日のいいへんじの皆の振りの返りの会でも、興味深いことに、みんな楽しかったということを口にしました。素敵な客演メンバーや、スタッフさん、そして参加団体の方々に囲まれて、ありがたいことでした。もっと積極的にコミュニケーションを取りに行けばよかったという口惜しさはありますが、また同じような機会があるときは、その心を活かして頑張りたいと思います。脱シャイ。

たくさん刺激的なことがあり過ぎたので、今日が特別かいつものようにか、ちょっと長めに書きます。

①論争を巻き起こす大劇場広すぎ!

参加団体それぞれの考える弱さがあったこと。
毎日のように、大量の感想がツイッターに載せられていたこと。
本番が終わっても感想をもらい続けられること。
そして、お客さんの中でもそれぞれの考える弱さ、あるいは弱いい派があること。何より、私が、弱いい派がいまいちよくわかってないこと。(それは大問題かもしれないような気がしなくもない)

今回は「弱いい派」という、派の、名乗りが、暖簾を飾っていたことは、とても大きなことだったし、それが論争を引き起こす一つの要因だったと思う。作劇者はみんなその言葉に対して、それぞれの形でもって反応したし、観劇者もみんなそれに対して、あるいはそれを通して、その言葉に反応していた。私はそれが面白過ぎて毎日Twitterを観察していた。「だよね〜」とか「なるほど、そうか。」とか「ドユコト?」とか思いながら。楽しかったなあ。Twitterってやっぱ便利。

それがとても面白くて楽しくて貴重な体験だと感じたのは、言葉のインフレのようなことが起こっていやしないかという危機感というか不安というか恐怖みたいなものがあるから。世に出るソーシャルな言葉の母数が増えて言葉の価値が下がっているというか。いやと言うよりも、言葉が増えたから、人間の言葉を受け止める力が弱く浅く鈍くなってしまっているんじゃないか、ということを感じているから。実際私はそうで。今はリハビリするように本を読んだり詩を愛しんだりしてはいるものの、やっぱり、パッと見の理解、みたいなものを毎日のようにしてしまう。次の電車の行き先を示す電光掲示板を読むように新聞を読むのは、正しくない気がする。同じ情報ではあっても、それは全く別の事だから。そうやって言葉と言葉、事柄と事柄、情報と情報、境界線が見えなくなっていくうちに、言葉が持っている明らかな曖昧さは、最近無視されがちな気がする。「弱いい派」なんて、一発で理解できるほど明白なものではないんだな、と改めて思い、この言葉や、派のこと、を理解するために必要な年月を、私はまだ過ごせていないのだなと腑に落ちた。

たった一つの"タイトル”を取り巻いて、こんなにもたくさんの意見や感想、立場が生まれるなんて、まだまだ捨てたもんじゃありませんよね?まじウケんだけど!


②やる気元気頑張るき!

『薬をもらいにいく薬(序章)』が始まる前のいいへんじの定例会で、縦と横の話をした。縦は、芝居を上手くなるとか、劇作を上手くなるとかそういう線で、横は、幅を広げるとか、フィールドを広げるとか、場所を増やすとか、そういうことだったと思う、私の理解したところ。

その時私は、縦の線には全く興味がなかった。「上を目指す」ということに義務さえ感じさせられるような世の中に逃げ場のなさを感じていた。どんな場所にいても、どんなことをしていても、「上」とか「下」とか、そういう価値観の話が現れてくる。一人で劣等感なんかを感じて苦しくなるから、演劇もやめるしかないのかと、いつもの中途半端癖を発揮しようとしていた。

しかし、今回の公演を通して、小澤さんは初めて貪欲になったらしい。いつも、怒られない程度に、恥ずかしくない程度に、すり抜けてきた階段を、登ってみちゃおっかな、と、少し気が大きくなっているみたいだ。大変だ。

もっと自分に技術的なベースがあれば、もっと全体を理解したり把握したりするのが早くなれるかもしれない、そしたらもっと面白いことを稽古でできるかもしれない、完成させる稽古じゃなくて、もっと面白くする稽古が、もっとできるかもしれない、もっと上手くならないともう演劇は面白くならないかもしれない。

でもこんなに楽しいのにそんなのは嫌だ!!

ということで、次の二本立て公演に向けて、”筋トレ”を決意しました。
「上」とか「下」とかには、正直いまだに興味がないのだけれど、楽しくあるために面白くあるために必要なことなのだという”現実”にぶち当たってしまったので、頑張ってみようと思います!!いえい!!


以上です!来年初夏に会いましょう!

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