怪談会で話した怪談(後編)
今住んでいる市内に、かつて遺体を風葬にしていたことが名前の由来になっている山があります。
(‥この手の話の常で諸説ありますがそれはさておき)
その話を初めて聞いた時、死装束を着て立っている幽霊の姿を想像をしていました。
麓から見える無数の死装束。そこにはとても厳粛な美しさが感じられます。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という言葉があります。
(調べてみると俳句だそうですね)
幽霊だと思って見ていたものが実は枯れたススキだったということかと思いますが、しかしそれはほんとうは幽霊だったのではないでしょうか。
‥枯れたススキだと思った瞬間に、ただの枯れたススキになってしまったとか。
そう考えると反対に、いつもはススキだと思い込んでいるものが実は幽霊だった、ということがあるのではないかと思います。
さて、二つ目はユニ○ロのチノパンのお話です。
あれはわたしが高校生だった頃。S県にある小さな島を訪れました。時期を外していたのでエメラルドグリーンの海は見られませんでしたが、丘の上の展望デッキにのぼったりしてそれなりに楽しんでいました。
フィルムカメラを持って行って、写真はけっこうたくさん撮りました。‥とはいってもあまり観光地化されていないところなので、大したものは写していません。どちらかというと慣れない古いカメラで写真を撮ること自体が楽しみだった気がします。
被写体といえば山の風景や展望デッキにいたカラスなどですね。
帰って来てさっそくフィルムを現像に出しました。
内容はともあれ写真ができあがるというのはとても楽しみなんですよね。
できあがるのにどれくらいかかるのかもう忘れてしまいましたが、何日かして写真を受け取りに行きました。
写真を眺めていて、最初はなんとも思わなかったんですがほんの小さな違和感がだんだん頭をもたげてきたんですよ。
それから気づいたんですが、カラスの写真がどこにもないんです。
特に意味があったわけではありませんが、カラスの写真は二枚撮っていました。たぶんアングルが気に入らなかったんじゃないでしょうか。それが二枚ともない。
撮った写真を全部並べ探しました。
すると妙な写真があったんです。
展望デッキの柵の上に躍るユニ○ロっぽいチノパン。
よく広告なんかにある、膝を折り曲げて、飛び跳ねてるようなポーズです。
それが何もない空中に……?
そんな写真がちょうど二枚ありました。
それがカラスと結びつくまでには時間はかかりませんでしたね。
まるでコラージュかパッチワークのように、宙を舞うチノパンはカラスがいたであろう場所に配置されていたんです。
もうかなり前のことなので写真も手元には残っていませんが、縮尺も変だったのでほんとうにちょうどコラージュみたいでしたね。
どういう現象なのかは分かりませんが、写真に写らないような存在だったので不自然にならないように身の回りにあるものに置き換わったのかな、なんて思っています。
だからわたしは思うのですよね。
たとえ何かがススキの穂だったとしても、それはほんとうに見たままの存在なのかな?と。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?