もうひとつのルビコン川 紀元前47年 小アジア経由エジプト行き
ここからが勝負か。
思いは同じだった。ユリウス・カエサルの軍勢はみな同じビジョンを見えていた。
ポンペイウスの金庫ともいえる小アジアの富を手に入れ、ローマの穀物庫ともいえるエジプトを奪い取る。戦いの形勢は一気に逆転する。
その一方でエジプトで粘られたら長期戦にもなる。
今はおとなしい小アジア、中東の国の動向にも気が抜けない。
内乱の勝利も重要ではあるが、ローマ帝国本体に危機が及んでは本末転倒である。
政治的にも軍事的にも微妙な匙加減が必要な時期に達していた。
行軍は比較的ゆっくりしていた。
ここでは功を焦らず、じっくり確実に相手を追い詰めていく手法をとった。
前線ではアントニウスの活躍が目覚ましかった。こと軍事においては、カエサルの後継者の最右翼であろう。しかし、時代は軍事的才能よりも政治的才能を欲していた。
では政治的な才能となるとカエサル陣営では誰が頭角を現すだろうか。現陣営での顔ぶれではデキウス・ブルータスが筆頭候補であろう。30代半ばの人間的に脂ののった時期である。知力、体力、経験も申し分ない。
「この二人の争いかな」
ラビエヌスは心の中で呟いた。
しかし、時代の波はこの二人さえも飲み込んでいくのだった…
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