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家庭という密室で起きたこと

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外からは綺麗にみえる家庭像の内側で起きていたグロテスクな現実について書いています。
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#心理療法

目次:家庭という密室で起きたこと

◇はじめに ◇ パズルのピース #1 蘇った記憶  ・性虐待の記憶  ・記憶の細部 ◇ パズルのピース #2 知らない誰かが勝手に生き始める  ・底が抜ける  ・虎視眈々と ◇ パズルのピース #3 宙に浮いている時間  ・これは現実ではないという祈り  ・現実と交錯する ◇ パズルのピース #4 母から虐待されていたと認識できるまで  ・階段から落ちた真相  ・幼稚園で初めて知ったこと  ・幼稚園にほとんど行っていない ◇ パズルのピース #5 家庭という

物語の終焉 #8

物語の全体像 記憶の断片を集めながら、パズルのピースを仮説でつなぐ。 新しい記憶の断片が出てくると、それまでの仮説がくつがえり、新たな可能性が見えてくる。 その過程を繰り返しながら、私の中の空白はだいたい物語がつながるようになった。 こうして振り返りながら、私の身に起きたことの全体像が見えてきて改めて思うのは、幼少期からずっと、子どもの理解できる範囲をはるかに超えた大人の複雑な事情や、大人でも受け止められない複雑な感情を容赦なく浴びせられ続けてきたということだ。 大人が

パズルのピース #7 最後のパズルのピース

なぜ殺意と憎しみをぶつけられていたのか? 3歳で既に殺意を向けられていた、ということは、その原因が私にあるとはどうしても思えなかった。 育児ノイローゼだったから? 精神を病んでいたから? 代理ミュンヒハウゼン症候群だったから? 何かの病だったなら、母の精神構造を分析して、その原因を見つけ出すことができれば、私は存在を認められて愛されるのだろうか? 私は自分で自覚がないところで、そんな期待を持っていたのかもしれない。 だから記憶の断片を集めながら、自分にされたことの残酷

パズルのピース #6 母が何を考えているのかわからない

嘘で塗り固めた現実を突き破る 最初に性虐待の記憶が蘇ってきた後、私は父を尊敬しているという設定の現実を生きることができなくなってしまった。 そこで、家族面談という形で先生に立ち会ってもらって、両親の前で自分の気持ちを吐露する場を設けてもらった。 父親を尊敬しているという親子関係の設定とは かけ離れた現実を 嘘で塗り固めて生きている両親に突き付けることになる。 それは、嘘を突き破ることだった。 そのためには物凄いエネルギーが必要だった。 私はほとんど悲鳴に近い声で「私に何を

パズルのピース #5 家庭という密室の中で

性虐待の原体験 それは初めて父とお風呂に入ったときのことだった。 3歳くらいだったと思う。 お父さんという人は仕事であまり家にいなくて、あまり話をしたことがない無口な人だった。 いつもはお母さんに頭を洗ってもらうけれど、その日はお父さんが洗ってくれることになった。 お父さんの膝の上で仰向けになった。 シャンプーが目に入るのが怖くて目を堅く閉じていた。 頭を洗ってもらっていたはずが、なぜか脚と脚の間を覗きこまれているようだった。 お父さんは「まだできないか」と意味不明な

パズルのピース #4 母から虐待されていたと認識できるまで

なぜ私は父からずっと逃げられなかったのだろう? それは父が、母から逃げてきた避難先だったからだった。 階段から落ちた真相 3歳の頃、私は階段から落ちて額に大きなタンコブを作ったことがあった。 病院でレントゲンを撮っても異常がなく無事だった。 子どもの頃によくある怪我の一つと思っていた。 でも実際はそうではなかった。 そういうことにされて処理された、というだけだった。   蘇ってきた記憶の中で、私は背中に衝撃を受けて次の瞬間には、頭蓋骨がコンクリートに打ち付けられる衝撃を感

パズルのピース #3 宙に浮いている時間

これは現実ではないという祈り 私の生きる時間軸には宙に浮いているような空間があった。 それは別次元のどこかで起きていること。 だから現実ではない。 そう自分に言い聞かせるように強く念じるように祈っている時間が宙に浮いていた。 それは、おぞましい、体中に虫唾が走るような、嫌悪感でいっぱいの中で、その時間が終わるのをひたすら身を固くして耐えている時間だった。 吐き気を催しながら、どんなに激しく拒絶しても、止めてと強く主張しても、お願いだからやめてくださいと懇願しても、止まらな

はじめに:家庭という密室で起きたこと

はじめに トラウマ治療を経て、蘇った記憶の断片をパズルのピースのように集めながら、私の記憶の空白期間で何が起きていたかを書きました。 私は今まで、これらの体験によって自分が醜く汚れてしまったように感じていました。 それを人に知られてはいけない恥だと、自分の中に封じ込めてきました。 でも、これらの感覚は、私に帰属されるものではなく、やった側のものだと気づきました。 もともと彼らのものだから、私が大切に抱えている必要はない、と。   そんな思いを持ちながら、今まで封印してい