なぜシリコンバレーが特別であり続けるのか? 現地に行って理由を悟った話。
「世界で、あなたが一番特別だと思う場所は?」と聞かれたら、私は迷わずシリコンバレーと答える。
しかしシリコンバレーは、それほど広い地域ではない。
観光をするとしても、2〜3日で十分回れると言われている。
タイトな日程の中、私がシリコンバレーで行きたかったのは、世界トップクラスのIT企業であるGoogleとAppleである。
これまでの記事
Google社員とコンタクトを取る
渡航前、私はシリコンバレーでも一番行きたい場所があった。
Google本社である。
世界中の卓越した人材が集まる、言わずとしれたやべえ場所だ。
だから、日本を発つ前にGoogle社員とコンタクトを取ろうと思った。
なにも、特別なコネがあったわけでもない。
無知だったから、なんの根拠もなく熱意を伝えれば行けると思っていたのである。
私は、泥臭い方法でGoogle本社にいる社員の方とやっとコンタクトを取ることができた
※ なおコンタクトを取った方法は、ご本人に迷惑をかけるため公開できない。同様の理由で紹介もできない。
そして「Googleを退職予定なので残念ながら、社内の紹介は難しい」という旨の返信を頂いた。
当時はそのメッセージを頂いた時に落ち込んだが、今振り返るとそれでよかった。
万事がうまくいくほど、つまらない人生はないからだ。
夢のGoogle本社へ
落ち込んだ私だが、同時に「Google本社のキャンパスはオープンだから、敷地に入れる」ということも教えていただいた。
私は、その言葉に希望を抱き、Google本社に足を運んだ。
Google本社(Googleplex)の雰囲気は、よく言われるように、大学のキャンパスである。
Googleは、この世の楽園のような場所だった。
広大な敷地で解放感があり、快適な空間。ここが本当に「仕事場」なのかと心底驚いた。
ちなみに本社のあるサンフランシスコは、湿度も低く気候も最高である。
Google本社の「ここだけは許せない」
しばらくして、やけに鼻が出るなと思っていたら、敷地内に巨大な杉が植えてあった。
杉からは、はっきり視認できるほど、花粉が飛んでいた。
……無花粉杉、せめて無花粉杉を植えてくれ……!!!
重度の花粉症持ちとして、私が唯一惜しいと思ったポイントだ。
好奇心を刺激するティラノサウルスのオブジェ
Google本社の敷地内には、ティラノサウルスのオブジェがあった。
一説によると、次の理由で置かれたという。
スタン(Stan):グーグルプレックスにあるティラノサウルスの骨格標本。恐竜のように、巨大で時代遅れの会社にならないようにという意味を込めて設置されたという説もあるが、真相は不明。
個人的には、職場にバカでかいティラノサウルスがあることでテンションが上がる方が重要なんじゃないかと思う。
Googleが社内を快適にする狙い
Googleは紛れもない営利企業だ。
当たり前だが、慈善事業でこのような夢な空間を作っているわけではない。
そして「あの」Googleでも、恐れていることはある。
シリコンバレーでは、優秀な人ほど起業してしまう。
つまり、Googleは、せっかく手に入れた優秀な社員を手放したくないのだ。
だから、こういった快適な空間を作って外に出なくてもいいようにする。
この快適な空間は、大きな鳥かごのようなものである。
Apple本社に行く
Google本社を見た後、Appleの新本社に行った。
Appleが秘密主義なのは承知していたが、観光客向けには大きいApple Storeがあるだけで、正直Appleファンな私でも、そんなに面白い場所ではないと思った。
商品ラインナップも日本のものと、そんなに変わらない。
限定商品は「あったかも……」くらいのものだ。
個人的に、Apple本社はイベントで行く位が一番楽しいのかもしれない。
Apple創業のガレージ
時間が余ったので、私はAppleが創業したガレージを見に行った。
なんというか……地味だった。
日本の家よりは広いけど、アメリカには、よくあるタイプの民家だ。
中国人のAppleファンの方が熱心に写真を撮っていたので、聞いてみたらやっと分かったレベルの地味さである。
まあ写真くらいは撮っておくかと思って、撮った。
後で気づいたが、私が見た中で、ここが一番重要な場所だった。
シリコンバレーには、なにがあるのか?
私がシリコンバレーに行きたかった理由は、そこに、なにか特別なものがあるんじゃないかと思ったからだ。
実際シリコンバレーは、なにか「すごいもの」があるわけではない。
それでも、起業家コミュニティや投資家の存在があるじゃないかと思う人もいるかもしれない。
しかし、それは本質ではない。
そんなに単純なものなら、シリコンバレーは簡単に他国から模倣されていただろう。
この記事の結論を述べよう。
シリコンバレーにあるのは、何者でもなかった人間が、世界を変えたという希望だ。
そんな希望は、戦後焼け野原になった日本にもあった。
そして、その希望こそ、今の日本が現状維持の代償に失ったものである。
当たり前だが、最初から成功できるとわかって、成功した人なんて殆どいない。
誰から見ても、人生なんて不安の連続なのだ。
だから、自分の夢を後押ししてほしい世界中の人が、シリコンバレーという土地に来る。
そこで見るのは、Appleのような世界を変えた企業でさえ、小さなガレージから始まったという事実だ。
最初の一歩は、誰だって小さい。
まともに大学に通っていなかったスティーブ・ジョブズという人間は、この土地で夢を見た。
それは、IBMのような巨大企業が独占していたコンピューターでなく、個人が所有できるコンピューターを作り、世界を変えるという無謀な夢だった。
世界を変えるようとするのは、いつだって無謀だ。
しかし、シリコンバレーには、その文化がある。
この文化は、1930年代にヒューレット・パッカード兄弟が小さなガレージで、HP社を創業したことから、始まった。
そして、その熱狂は絶えることなく、今もこの土地に受け継がれている。