![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/134082859/rectangle_large_type_2_010d04b3fd2ea21094abbd38c887a35d.jpeg?width=1200)
金融政策の転換が予想される今だからこそ読みたい本。
2024年3月16日の日経新聞のトップ記事。
マイナス金利解除へ 日銀、17年ぶり利上げ
日銀は18〜19日に開く金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除する見通しになった。 (中略)日銀が政策金利を引き上げるのは07年2月以来、17年ぶり。金融政策は大規模緩和から正常化に向かい「金利ある世界」に踏み出す。
日銀はマイナス金利政策の解除とあわせて大規模緩和の柱となってきた長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)も撤廃する方針だ。
上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の新規買い入れも終える見通しだ。
この記事にも
「マイナス金利政策」
「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)」
「上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)」
なにやら難しい専門用語がならぶ。
このタイミングだからこそ読んでおきたいのが、西野智彦さんの著作
「ドキュメント 異次元緩和 ---10年間の全記録」(岩波新書)。
本書は、日本の経済社会に多大な影響を及ぼし、かつ今後も与え続けるであろう「異次元緩和」の一〇年間の記録である。
政策の是非をめぐる論評は多々あるが、それを論じるための前提として、「誰が、いつ、どこで、何をしたのか」というファクトを押さえることが何より重要だという思いから、検証取材に取り組んだ。
(中略)
過去一〇年をゼロベースで再取材し、①異次元緩和の誕生と変貌、②「リフレ派」と呼ばれる論者たちの勃興と退潮、③路線転換をめぐる水面下の攻防、の三つを主テーマに、時系列で記録することにした。
素人にはなかなかなじみにくい言葉の解説や人事をめぐる秘話も含め、この10年間の金融政策をめぐる動きを丹念な取材をベースに丁寧に解説してくれている力作。
神保町ブックセンターで手にした日、難しいところは飛ばしながらも、ドラマのように面白く、帰路、一気に読んでしまった。
日銀や中央省庁からの人材流失も止まらないらしい。政治家の責任はかくも大きく、自信家であればあるほど罪も深いと考えさせられた一冊。
(2024.3.18追記)
本編は、日本の未来を託された植田総裁へのエールとも感じられる言葉で締めくくられている。
今から四半世紀ほど前、初めて量的緩和の導入が決まった二〇〇一年三月の政策決定会合で、当時審議委員の植田がこんな「未来図」を語っている。
「しばらく経ってみると大して景気も良くならないし、場合によっては物価も下がり続けている。そして日銀に対してさらなる緩和要求が来て(中略)[当座預金残高を]六兆円にしよう、七兆円にしようとなる訳である。普通の短期金融資産では恐らく無理だろうから、長期国債買いオペの増額と思う。それで期待インフレ率が上がって金利が上がっていったり、景気がよくなっていくとなれば良いが、ならないと地獄になる」 (傍点筆者)
この予言通り、当初五兆円でスタートした量的緩和は、六兆~七兆円どころか、一〇〇倍の五〇〇兆円超に膨らんだ。「入口」に賛成票を投じた植田が、「地獄からの出口」を託されるのは、歴史の必然と言えるかもしれない。
「ドキュメント異次元緩和」(西野智彦)岩波新書
私も、天が植田総裁を味方することを心から願ってやみません。
西野さん、ありがとうございました。