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三井不動産:存在意義を問われていたサービス、よみがえらせた方法とは

三井不動産株式会社が直面した課題は、周囲から理解されにくいサービスの価値や成果をどう顕在化するかでした。イグニション・ポイントが、事業コンセプトの策定から実行まで一貫した支援を行い、顧客ロイヤルティや会員数の増加など定量的な効果が出ています。当サービスを甦らせた経緯について、座談会で深掘りします。

話し手
三井不動産株式会社 ビルディング本部 法人営業統括一部 法人営業推進グループ 主事 木村庄佐氏

三井不動産株式会社 ビルディング本部 法人営業統括一部 法人営業推進グループ 業務副主任 山田友美氏

聞き手
イグニション・ポイント株式会社 コンサルティング事業本部 デジタルユニット シニアマネージャー 浦木

イグニション・ポイント株式会社 コンサルティング事業本部 デジタルユニット マネージャー梅村


課題──「存在意義の問われていたサービスを再定義したかった」

▲ 三井不動産 ビルディング本部 法人営業統括一部 法人営業推進グループ 主事 木村 庄佐氏

約30万人が集う「三井のオフィス」 に入居中の企業と、企業に勤める人々のビジネスとライフを支援する会員限定ポータルサイト「&BIZ」。

当プロジェクトを推進した三井不動産ビルディング本部法人営業統括一部法人営業推進グループ主事の木村 庄佐氏が、主担当として当サービスを引き継いだのは2019年のことでした。

&BIZはその時点ですでに、2012年のローンチから7年が経過。ビルの運営事業との関わりの中で「立ち位置や存在意義があやふやなまま、引き継いだことを推進しているだけの状態が続いていた」と振り返ります。

木村氏「会員数やアクティブユーザー数などをKPI(重要業績評価指標)に据えて、イベントやキャンペーンをサイト内で展開していたものの『果たしてそれだけでいいのか』と。最終的なゴールや適正な費用対効果の算出方法など、どうすべきかもやもやと悩んでいました。実際、&BIZのサービスが、ビルの賃貸の契約期間の長さや単価に与える影響度合いを調査しきるのは、すごく難しいのです。

しかし、&BIZの価値や必要性は感じていましたから、周囲から評価してもらい、事業への貢献度や存在意義を社内や上長に説明できるようにするためにも指標を作りたかった。相乗効果を発揮するチャンスだと考えて、現プロジェクトを発足させていったというのがイグニション・ポイントさんに依頼することとなった経緯です。

社外に依頼した理由は、社内メンバーは業務で手一杯でしたし、やはりプロのコンサルタントに頼んだ方が社内への説得力も増します。社内に知見があまりない中では、専門家の人に頼る環境をつくる方がいいと考えました」

社内のリソースや知見不足だったこともあり、専門家の手を借りたい。こうして、コンサルタントの力を借りる方針を木村氏は採用したのです。

決め手── 他部門メンバーからの推薦

▲ 三井不動産 ビルディング本部 法人営業統括一部 法人営業推進グループ 業務副主任 山田 友美氏

コンサルティング事業を展開する企業が数多く存在する中、イグニション・ポイントを選んだ理由はDX本部、つまり社内の他部門のメンバーからの推薦でした。

木村氏他の案件で関わっていたDX本部のメンバーが『イグニション・ポイントさん、良いよ』と推してくれたんです。しかも、推薦してくれたメンバー自身がコンセプトの設計から中長期のロードマップを引くようなプロジェクトをイグニション・ポイントさんと一緒に実施していました。

私たちが、まさにこれからやろうとしていたプロジェクトの内容と合致していましたし、その評価の高さからイグニション・ポイントさんにお願いすることにしました」

プロジェクトの第1期とも呼べる期間は約2カ月半。本来であれば半年はかかるプロジェクトをこの短期間で進めたのは、次の予算策定のタイミングに間に合わせる必要があったからでした。

21年に、前任の担当者から&BIZの運用やお問い合わせ対応、ページ改修などを引き継ぎ、担当していた三井不動産ビルディング本部法人営業統括一部法人営業推進グループ業務副主任の山田 友美氏は、これまでのイグニション・ポイントの印象を次のように振り返ります。

山田氏最初の3週間で全員の向く方向性をそろえましょう。そこがかなり重要です」と浦木さんが強く言っていたのが印象に残っています。ただのウェブサイトなのか。ポータルサイトなのか。どういう目的で、何がしたいサービスなのか。

当社のメンバーの誰もはっきりと定義できない中で、上長も巻き込んで適宜修正を加えながら、みんなの認識を合わせて一つのコンセプトに一致させていく。3度ほど大きく進化するタイミングがありましたが、どれも納得できるものでした

取り組み── 初動でスクラムを組む重要性。チームの一員と化し、のべ200人と接点

▲ デジタルユニット シニアマネージャー 浦木

取りまとめを行う際に意識していたポイントを、コンサルティング事業本部デジタルユニットの浦木は次のように説明します。

浦木初動における目線合わせをすることで、後に控えている工程の推進力が格段に変わってきます。その意味でも、初期段階に時間をかけました。

また、三井不動産は社内異動が多く、裏を返すと責任者次第でサービスが消えてしまう、大切にしていた価値観が引き継がれなくなってしまう事態も一般的には起こり得ます。そのため、誰が担当者になろうと同じコンセプトのもとにみんなが動けるようにすることも、解決すべき課題の一つでした。

こうしたことを鑑みつつ、ビルの賃貸事業というコアビジネスに提供できる価値をいかに具体的に社内外に向けて示せるか。そこが最重要ポイントでした。たとえば、NPS®(Net Promoter Score:ネットプロモータースコア)という顧客のロイヤルティを測る指標スコアのほか、営業担当者がこのサービスをどう受け止めてどう評価してくれるのか、実際に使っている方々の感覚をいかに反映していくのかなどさまざまな項目を指標として設定しました」

木村氏は、浦木のその言葉に同意しつつ、次のように評価してくれました。

木村氏「この手のプロジェクトは、実際にロジックを積み上げていくと後で整合性が取れないこともよくあると思いますが、そうではなく一つひとつがやるべきことに紐づいていてすごく良かったです」

加えて、プロジェクトが開始してからいちばん驚いたことは、「イグニション・ポイントメンバーの熱量が高かったこと」と強調します。

木村氏「とにかく、皆さんの熱量がすごい。『短時間でそんなことまでできるの?』と社内メンバーの心に火が付きました。こちらから課題というボールを投げれば、吸収してすぐに投げ返してくれるので、こちらもどれだけボールを瞬時に渡せるかを張り合っていました。

社内資料を一緒に作ってもらい、上長の性格や考え方まで共有して汲み取ってもらうなど、チームの一員として自分ごと化していく熱量が圧倒的でした

山田氏「私よりも&BIZのことを理解してしまったことに本当にびっくりして。『そんな機能ありましたっけ?』なんてことも。課題をピタリと指摘してくれて驚きました」

本プロジェクトのイノベーションの着火点になったと評価されました。22年4月からはDXロードマップ策定後のフェーズへと移行し、現場への実装部隊としてデジタルユニットの梅村が参加。当初は、ほぼ毎日三井不動産のオフィスへ出社し、チームの一員として加わりました。

木村氏「梅村さんは、グループの忘年会や懇親会、ゴルフコンペだけでなく、三井不動産の評価面談にも参加してもらって。『私たちのチームの総合職になってほしい』と常々お伝えしていました。私が育休に入るときも私の代わりを務めてくれましたし、つくったものをやり遂げてもらうという意味でも引き続きコンサルティング支援をお願いしている状況です」

常駐を開始してから1年以上が経過。梅村は現在の心境を次のように話します。

梅村「これまでの私のIT・PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)の経験がお役に立ち、嬉しいです。常駐開始当初は、木村さんや山田さんが次のアクションを起こしやすい情報をお渡しするように意識し、安心感を与えられる人間であり続けることと、ベンダーさんなど外部の方との橋渡しをできる人間でいようと心がけていました

そうした、のべ200名ほどの外部や社内メンバーを橋渡しできる「翻訳者」としての梅村の立場に、山田氏は価値を感じています。

山田氏「木村や私たちは事業部の立場から見ているため、ITやDXのことは疎かったりします。その中で、ITも事業部の立場も理解してくれる梅村さんが間に入ってくれて、とても頼りになりましたし、実際に頼っていました」

成果── 顧客ロイヤルティ30ポイント増、会員数2万人増のポータルサービスへ進化

▲ デジタルユニット マネージャー 梅村

これまでの取り組みの中で、木村氏は定性・定量の両面でイグニション・ポイントが伴走支援したことによる成果を感じ、現在もプロジェクトを継続していると言います。

木村氏&BIZの社内での認知・理解・共感が広まり、日々存在感が高まっています。当社の主要な商業サービス やホテルの予約サイトなどとの連携が実現していくのを通じて、安心感のあるサービスとして『同等』に見てもらえるようになってきていることを実感しています。

また、複数サービスを統一した上で&BIZの冠を掲げられるようになったことで、イニシアチブを取れる体制が整いました。

さらにサービスを拡大。NPSが2023年までの1年で30ポイントほど伸び、マイナスからプラスに転じるようになりました。会員数は2年間で2万人以上増えています。

認知が広がったことで社外への説明コストが下がっていますし、自力でサービスを良くできる体制になってきていると思います」

山田氏「&BIZ会員にとってより使い勝手の良いサービスになり、普段からユーザーとして使っている同僚から『すごくわかりやすくなった』と感想をもらいました。社外からも『&BIZと一緒にキャンペーンをやりたい』『掲載してほしい』といったオファーが集まるようになりました。この変化は、一定の評価を得られている証明になっています」

さらに、「社内での立ち位置や決裁の流れが大きく変わった」と木村氏は胸を張ります。

木村氏これまでの『サービスを継続するのか・しないのか』の議論や説明が必要なくなり、フェーズが大きく変化しました。現在は、サービスで『何を実現していこうか』という前向きな議論ができ、スピード感はすごく上がっていると思います。

イグニション・ポイントのメンバーも、この感想に喜びを覚えると同時に、さらに次のステップへと視線を向けています」

浦木「社内外のいろいろな人を巻き込んでいく上で、当サービスの存在感が向上したのは今後の展望にとってとても重要なことです。ワンチーム感を強化しながら、サービスとしてより高みをめざして向かってきました。その結果、定量的な効果が出ているのはすごく嬉しいです」

梅村「&BIZは、ようやくみんなが共有して見るべきゴールが見えてきて、基盤を整えてデータを取得できるようになりました。その意味では、まさにこれからが本番です。一つずつ着実に積み上げていきたいです」

基盤が整った&BIZ。伴走支援を標榜するイグニション・ポイントの真価を発揮するシーンは、現場への実装を実現していくこれからも続きます。

(記載内容は2023年11月時点のものです)

取材・文:山岸 裕一


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