【ショートストーリー】男たちが語らう港のショット・バー。
カウンターに片ひじをついて、
ウィスキーのロックスを飲んでいる男がいた。
ほどよくキズのついた皮のジャンパーを着て、
髪の毛は短く整えられている。
このバーには、そんな男がよく似合っていた。
天井からのやわらかい光が店全体にあたり、
その中に男は静かに立っていた。
男は、僕を待っていた僕の友人だった。
彼に会うのは5年ぶりだろうか。
彼は5年前、ブラジルに渡って大農場をやる、
と言って日本を出て行った。
彼と最後に会ったのも、このバーだった。
大きな夢を抱いて、この港から出て行った。
そしていま、この港へ帰って来た。
僕が彼の肩を叩くと、懐かしい笑顔でこたえてくれた。
僕はこんなに素晴しい笑顔を見ることができるとは、
正直思ってもいなかった。
彼はまた、ブラジルに戻ると言っていた。
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